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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 1:The Golden Fateful Encounter
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#-3 プロローグ②

「ほんとアイリちゃん、ひどいよなぁ。抜き打ちテストだけじゃなく、居残りまでさせるなんて。あんなカワイイのに全く容赦ないんだぜぃ」


「いや。そもそもの発端はお前のせいだろ、春色?」


放課後。他の生徒たちがすでに帰り着いた後、約一時間ほど居残り補習の対象となった、金髪細目で高身長の悪友・長閑 春色の愚痴に、寝ぐせのようなボサボサの黒髪をクシャクシャと搔きながら、當真 夜は迷わず怒りの正論パンチをぶつけた。


「でも、居残りくらったのは抜き打ちテストの成績が悪かったからだし、そこは自業自得なんだぜぃ?“ナイトちゃん”?(笑)」


飄々と正論カウンターパンチを繰り出す春色に対し、ぐうの音も出ない當真。


「・・・・・うるせ。というか、その呼び方やめろ。高校生にもなって、なんか、恥ずかしいだろうが!」


「えー?今さらなに言ってんだぜぃ?こーんなに小さい頃からの仲じゃないか俺っちたちは?愛しの我が大親友、“ナイト”ちゃん?(笑)」


「ええい!うっとしい!!そんな小せえ人間がいてたまるかよ。というか、そもそも堂々と嘘をつくな!俺たちが知り合ったのは中学の頃だろうが!!」


「はっはー!しんらつぅー!!」


右手の親指と人差し指をアルファベットの“C”のような距離感を保ち、ケラケラと笑いながら肩を組んでくる長閑を、思春期どうこうを通り越して、ただただ単純に“うっとうしい”ので、力強くその手を振り払う當真。


「でも、まぁ・・・抜き打ちテストは散々だったけどさ、二之宮先生は今までの先生とは違うって思えたよな、」


「確かににゃー。あんなに小さくて可愛い大人なんて、見たことー」


「いや、そうじゃねえよ。ほら、学校の先生とかって、どっちかというと今の世の中、“魔法”が使える事に重きを置いてるっていうかさ、それありきでいろいろ言ってくる人の方が多いじゃん?特に毎年“この日”はさ?」


「そうかにゃー?俺っちは、あんまそういうの気にしたことないんだぜぃ?」


「・・・まぁ、お前はそういう奴だよ。知ってる」


呆れた視線と小さな溜息を、隣を意気揚々とスキップする春色に向ける當真。


「でもさ、ああやって“魔法”がどうとかじゃなく、人としての在り方を言葉にしてくれる人ってなかなかいなかったし。“俺ら”みたいな『ゼロ』からすると、余計に響くというか・・・」


『レベル』。“魔法”がこの世界に生まれてからほどなく、その“魔法”にも希少性や優位性から“階位”というものがラベリングされるようになったのは、これまでの人類の歴史や、その歩みを見ていけば避けられない事であっただろう。


『ファースト』と呼ばれる『レベル・1』。


そもそも“魔法”が日常に存在するといっても、その種類は大なり小なり千差万別で。日常生活や自己周辺の生存環境にしか影響を与えないものが大半である。いま世界中で“魔法”を発現した人の大多数、いや9割近くががここに部類されており、分かりやすく言えば、とにかくどんな種類であれ『“魔法”が使える事』がこのレベルである。


『セカンド』と呼ばれる『レベル・2』。


その影響力が自己だけでなく他者、ひいては国家や世界に与えるほどの大きな力をもつ“魔法”。分かりやすく言えば、魔法がこの世界に生まれる“以前”に、人類が想像していた空想の事象を創造しうる魔法がこれにあたる。例えば炎を自在に操る、海面を凍らせる、空を飛べる、などといった、『超常を日常とする“魔法”が使える事』が、このレベルである。“魔法”を発現した人の中でも1割いるかどうか、まさに『“魔法”に選ばれし者』のレベルが、これに値する。


そして、言わずもがな、『ゼロ』とはすなわち『レベル・0』、“魔法”を使えない人、『持たざる者』を示す言葉だ。


ただし、正式にこの名称自体は公表されたわけではない。それはすなわち、差別社会を生み出すに起因する恐れがあるからだ。


しかし、『ファースト』と『セカンド』が公表された時点で、世界中の人々の中であっという間にその“呼び名”は伝播し、定着した。公的機関で決してこの呼び名が使われる事はないが、今やこの世界の人々の中での“グレーゾーン”に値するほどの、共通理解言語のひとつになっていることは間違いない。



「別にさ、“魔法”が使えなくても生活に困ったりとかないし、頭で納得したり口では気にしないって言っててもさ、『ゼロ』であることを完全に前向きに受け入れてる人っていないと思うんだよな。だからこそ、そういう意味でも、今日の二之宮先生の言葉には、なんか、こう、胸にグッときたよな、」


少し空を見上げ、握った右拳を胸に当てる當真。


「俺も、自分の在り方は自分で決めたい」


想いを言葉にする當真。を、鳩が豆鉄砲を喰らったような表情で見つめる春色。


「・・・・・・昔から思ってたけど、ナイトちゃんてさ、授業マジメに受けるような秀才でもないしスポーツめちゃくちゃ万能でもないし、もちろんスーパーイケメンでモッテモテとかでもないのにさ、ここぞという時に、ふいに漫画の主人公みたいなアツーいことを平気で口にするよな。なんか、聞いててさ、こっちが恥ずかしくなるんだが?」


「うおおおいいい!?めちゃくちゃ辛辣な言いぐさだな!!?」


いつもは飄々としてる悪友が、饒舌に悪態をついてくるため思わず叫ばずにはいられない當真。


その声に帰り道の商店街を行きかう人々も思わずその視線を二人に向け、いたたまれなくなった當真は少しだけ歩くスピードを早める。


「まぁまぁ。でもそういうところがね、昔からナイトちゃんのいいところでもあるわけだし?俺は好きだぜぃ?」


「・・・そりゃどうも」


「というかさ。そもそもだけども、ナイトちゃん、『ゼロ』ってー」



PULULULULULULULULU。PULULULULULULULU。



ふいに鳴り響く着信音。


もちろん自分自身のではないのはすぐに分かったので、當真は視線を隣を歩く春色に向ける。


春色当人も、なぜか無駄にスタイリッシュな手振りを見せながら、制服のポケットから鳴り響くスマートフォンを取り出し、着信画面に視線を向ける。


「はっはー!お“デート”の時間だぜぃ!!くー!!そんなわけでナイトちゃん、俺は一足先におさらばベイビーするぜぃ!」


「・・・はいはい」


(ほんといつも不思議なんだが、なんでコイツって“こんな”モテるんだろう)


「俺は“口先から生まれた男”だからねぃ!俺の甘ーいトーク術に、レディーたちはメロメロなんだぜぃ!」


「勝手に心読まないで頂けますかね?」


「はっはー!」


當真の言葉など気にも留めず、勢いよく駆け出す春色。その背中を見届けながら、當真は溜息ひとつ、そして少しの笑顔で見送った。


「さて。俺も晩ご飯の買い物して帰りますかね」



と、次の瞬間。


後方から何か迫る感覚、周囲の騒めきを感じた當真。


振り返る、間もなく、何かが自身にぶつかって来た。


「!?」


勢いそのままに前かがみで倒れそうになるが、何とか踏ん張った當真が視線を前方に向けると、3人ほど白い制服姿の女子中学生と思わしき少女たちが駆け出していくのが見えた。


「あの制服って・・・確か・・・」


と。間髪入れずに、また後方から何かが迫る感覚。足音と、そして分かりやすいほどの“謳い文句”。


「待てこらあああああああああ」「逃げるなあああああああ」「おらああああああああ」


ドンドンドンッ。衝撃の三連弾に、今度は思わずその場に倒れ込む當真。


倒れた直後に、視線を前方に向けると、見るからに“やんちゃ”そうな男たちの後ろ姿が、少し前方を走る少女たちを追走していた。


瞬間。當真の心に言語化できない“感覚”が、ある種の電撃のように駆け巡る。そして、脳内にある景色がぼんやりと思い浮かんだ。


ゆっくりと立ち上がった當真は、眉間に少しだけシワを作り、一言だけこう呟いた。


「んー・・・このままじゃ“あいつら“、ヤバいよな・・・」


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