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たくさん猿がいる問題の最終解決

 さて、この状況をどうやって解決するか。

 問題を整理しよう。

 今、わたしの目の前には広間といっていいくらいの大きめの部屋あって、そこには穴が開いている。

 むしろ部屋の中のほとんどは穴で、深さは三メートルくらい。

 中央には小さな離れ小島みたいな場所がひとつある。

 こちら側のドアにはわたしとイナリがいて、離れ小島にアカツキ、部屋の奥には扉があって、その向こう側は見えない。

 どちらも入り口付近だけに、少し床の部分がある。

 穴の底には無数の魔物の猿たちがいて、踏まれたことに怒ったのか、一部の猿たちがアカツキに飛びかかろうとしている。

 それ以外の猿たちは我関せずという感じで、仲間の毛繕いをしたり床に落ちている何かをつまんで口元に運んだりしている。

 あれ、なにを食べてるんだろうな。

 それはともかく。

 目標は奥側の扉からわたしたちが外に出ること。

 元来た道に戻るにしても、アカツキはこちら側に渡ってこなくちゃいけない。


「おい! どうすんだよ!?」


 アカツキが飛び上がってきた猿を叩き落としながら叫んだ。

 落下した猿は悲鳴を上げて仲間達の隙間に頭から潜り込んでいった。

 そういえばさっきからアカツキは猿を斬ってないな。


「アカツキさんは猿を倒す気ないんですか!?」


 気になったので聞いてみると、斬るのを我慢してたのがストレスだったのか、機嫌悪そうにこちらを見てきた。


「本気で怒らすと、まとめて来るかもしれないだろ!」

「あー、たしかに」


 穴の底にはとにかく沢山の猿がいる。

 一斉に向かってきたら、仲間を足場にしてあっというまにアカツキの所まで殺到してくるだろう。

 現状では怒って向かってきてる猿の数が少ないから、なんとかなってるんだ。


「でも妙だよね」

「クルッ」


 わたしのつぶやきにイナリが何? って感じで鳴いた。


「普通、魔物だったら問答無用で人間に襲いかかってくると思うんだけど……」


 今まで出会った魔物は大抵そうだったはずだ。

 ほとんどが人を見つけると攻撃してくるものだった。

 例外があるとすれば、なんだろう。


「アカツキさん!」

「なんだ! 対策思いついたのか!?」

「試したいことがあるんで、この場をわたしに任せてください!」

「はあ?」


 わたしは少し前に出て穴ギリギリの所に立った。

 短剣を鞘にしまい、床にしゃがみ込む。


「相談したいことがあります!」


 わたしは穴の底の猿たちに向かって叫んだ。


「おまえ、何やってるんだ!?」


 アカツキが何か言っているけどスルーだ。


「わたしたちと取引をしませんか!」


 さらに叫ぶと、穴の底の猿たちがわずかにざわめいた。

 不安そうにお互い顔を見合わせている。


「あの……!」


 わたしがもう一度話しかけたところで、猿の群れの中から声が聞こえてきた。


「われわれは」

「むだなことは」

「しない」


 みっしり並んだ猿の魔物たちの中で、三体の猿が立ち上がってこちらを見ていた。


「こいつら、言葉を喋ってる!?」


 アカツキが驚いた顔で穴の中を見ていた。

 そんなに意外だろうか。

 強い力を持ち、頭のいい魔物は人語を解する。

 黒犬の魔物バウルとか、人の姿を取っているカザリなんかがいい例だ。

 そう言う魔物は存外冷静で、己の攻撃衝動を抑えられているようだ。

 逆にいうと、冷静な魔物は知性が高い可能性がある。

 わたしはそう思ったのだった。

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