怒らないで!洞窟の主さん!
「う〜ん!順調順調!いい感じにレベルとステータス上がってるじゃん!」
洞窟の中を漂いながら、ミシャが表示した私のステータスを確認する。
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名 広田未来
種族 ゴースト
レベル17
HP 90/90
MP ∞
筋力 0
防御 34(物理無効)
魔力 224
防魔 81
素早さ 66
スキル
『魔力無限』『自由自在』『浮遊Lv1』『霊体攻撃Lv1』『炎魔法Lv2』『生命力吸収Lv1』『情報精霊Lv1』
スキルポイント14
称号
『転生者』『同族殺し』『アンデッドハンター』
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大量のゾンビを倒したことで、私のレベルは一気に10近く上がった。
おかげで私にとっての重要なステータスである魔力が倍以上の224。
それとスキル『炎魔法』のレベル2が合わされば……ゾンビ如きならワンパンできるだろう。
いや〜、強くなったよね。
まだゴーストになって一日も経ってないだろうに。
「…そう言えば、洞窟に入ってどのくらい経つんだろう?真っ暗で時間感覚とか全くわかんないし……ミシャ?わかる?」
《はい。洞窟に入ってから3時間53分経過しています。外は14時頃と思われます》
「まだお昼か……もうしばらくしないと、外には出られないね」
まだ外は昼間らしい。
今外に出ても、日光に焼かれて死ぬだけだから、もう少し洞窟の中でじっとしてなきゃいけない。
夜になったら外に出て、地上のモンスターと戦ってみよう。
……でも、適当に飛んできちゃったから、今自分が何処にいるのかわからないんだよね。
果たしてこの洞窟から出られるのか…?
「もう死んでるから、飢え死にとかはしないだろうけど……ずーっと暗くて狭い洞窟の中は頭がおかしくなりそうだよね。ミシャ、来た道覚えてる?」
《いいえ。権限不足のため、マッピング機能がなく、来た道をお伝えすることはできません》
「無理かぁ……でも、逆に言うとマッピング機能なんてものがあるんだね?その辺りの諸々の利便性を考えると、スキルポイントを振ってミシャを強化したほうがいいのかも…?」
ミシャも私が来た道は覚えていないらしい。
けど、それ以上の収穫があった。
ミシャが強くなれば、いずれはマッピングなんてものもできるらしい。
道に迷わなくなるのはすごくありがたいし、スキルポイントが貯まり次第ミシャの強化をするのはありかも。
……まあ、それはこの洞窟から出られればの話だけどね?
「……まだこの洞窟にはゾンビとかゴーストが居て、私の経験値になると信じて奥に進みますか。そうすれば、もしかしたらマッピングが解放されるかもしれないし」
あんまり物事をネガティブに考えるのは良くない。
もっと前向きに、ポジティブに考えて行かないとね。
まずはこの洞窟にいるモンスターを全滅させて、私の成長の糧にする。
そのためにも、さらに奥に進んで次の獲物を探そう。
帰り道?
まあ、なんとかなるよ。
「ゴースト、ゾンビって続いたら次は何だろう?ガイコツ…スケルトンって言うんだっけ?」
気持ちを切り替えて、次の獲物の事を考える。
次のモンスターは……多分スケルトンってやつじゃないかと思う。
というか、他にアンデッドって呼ばれるモンスターを私は知らない。
まあ、アレとか?吸血鬼。
ただ、こんな洞窟の中に吸血鬼が隠れているとも思えないから、多分スケルトンだと思う。
それか、私の知らないアンデッドだね。
どんなアンデッドが居るのだろうと考えながら、道中ゾンビを見かけると炎魔法で焼き続け飛ぶ。
すると、そう時間を置かずに大きな影が見えた。
「デッカ!?2メートルくらいあるじゃん…」
現れたのは、身長2メートルはありそうな巨体。
よーく目を凝らしてみると、それが鎧を身に纏った人であることがわかる。
……いや、死んでるから鎧を纏ったアンデッドか。
そのアンデッドは手に槍を握っており、その矛先は禍々しい瘴気に覆われている。
あの槍なら私に傷をつけられるだろうね。
「これ倒せるかなぁ…鎧ごと焼いて、中を壺焼きにすれば……うん?」
鎧を着たアンデッドをどうやって倒そうか考えていると、近くで金属音が聞こえた。
それも、ただの金属音じゃない。
底が鉄板になった靴を履いているせいで鳴る足音。
そんなふうに聞こえる。
「一体じゃない感じね?まあ、それはさっきから散々経験済み―――っ!?」
数が多いだけ。
そう思ってたけど…コレは、違う。
全身をゾワゾワとした寒気が伝い、息をしていないけど、息が詰まる。
これが多分……“圧”ってものなんだろう。
「ミシャ……何なのこれ…?何が来てるの?」
恐怖からミシャ助けを求める。
ミシャは2秒ほど間を置いて私の質問に答えた。
《強烈な魔力波と瘴気の揺れを感知しました。この洞窟の主が現れたと思われます》
「ぬ、主!?ヤバいじゃん!そんなのと戦えるほど強くなってないんだけど!?」
洞窟の主が出てくるなんて聞いてない!
それに、私の相手は主だけじゃない。
今目の前にいる鎧のアンデッドも居るんだ。
逃げるべきかな…?
いやでも、何処に逃げるの?
外は昼だから出たら焼け死ぬし、外に逃げなかったら主にやられる。
そして、この洞窟の主ってことは、洞窟を出なかったらどこまでも追いかけてくるよね…
「……戦って、勝てってことね」
迫りくる強烈な圧に固唾を呑み、じっと暗闇の奥を見る。
覚悟なんて決まってない。
ただ、引くに引けなくなったから、脚をその場で止めてるだけ。
動けずにただ前だけを見ていると…暗闇の向こう側から、3メートルをゆうに超える全身鎧が現れた。
じっと目を凝らすと、その鎧が単なる鎧ではなく、装飾のされた特別なものだとわかる。
ただ、相当古いものなのか、はたまたアンデッド化しているからなのか、かなりボロボロだ。
でも、ボロボロになりながらも、美しさの失われない鎧。
「…生前は、高潔な騎士様だったのかな?今はまあ、見る影も無いわけだけど」
鎧からその人がどんな人物か想像する。
きっとイケメンで地位が高くて金持ちの騎士様だったに違いない。
けど、そんなものは見る影もない。
鎧は錆付き、関節部は中の肉が腐って出たであろう汁で汚れている。
そんな過去のものとなった騎士は、剣を引き抜いてこちらに向けてくる。
「剣は綺麗なままなんだね…手入れされてるってことか」
騎士が抜いた剣は、わずかな光を反射して輝くほどよく手入れされている。
それが、どれだけ醜くなろうとも、未だに高潔さは失っていないと表しているように思える。
……なんて、呑気に詩的な事は言ってられないんだよね?
「ねえミシャ。私の気の所為でなければ、あの騎士すごく怒ってるように感じるんだけど?」
《はい。確かに対象から怒気を感じます》
「なんで怒ってるのかな?アンデッドってそんなに仲間意識が強いの?」
《攻撃を受けると集団で反撃を行うのは、意識と記憶が霧散したゴーストのみです。それ以外の可能性として、意識や記憶が完全には霧散していない事が考えられます》
「まだ意識があるってこと?」
《意思疎通は不可能です。ですが、生前の強い意志や信念がアンデッド化した後も残って行動の理由となる事は稀にある現象です》
……つまり、あの騎士様は比喩でもなんでもなく高潔な騎士様だったって訳か。
じゃあなんであんなに怒ってるかって……まあ、そりゃあ私がゾンビとかゴーストを殺しまくってるからだろうね。
「あの騎士から見たら、私は守るべき民を次々に殺すバケモノってわけか。そりゃあ、ブチギレるのも納得かも」
騎士があそこまで私を敵視する理由はわかった。
そして、理由がわかったことで私が逃げられないってこともわかった。
「理由を聞くと、絶対見逃してもらえないよね。逃げるのは…流石に無理かぁ」
話し合いは無理だし、逃げたって地獄の底まで追いかけられて殺される。
生き残るためには、『殺られる前に殺れ』。
「やるしかない、ね…」
腹をくくり、炎魔法を構えた。
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