獲物発見!…いや同種じゃん!
「はぁー……全然モンスター倒せないじゃん…」
あれから数時間後。
森を彷徨って手当たり次第に喧嘩を売ってみたが、無視されるか速攻で逃げられる。
どのモンスターもかなり強く、とても倒せそうにない。
ミシャにどうすればいいか訊いてみたが、どの返答も当てにならず使えない。
この絶妙に使えない感じ、すごくAIって感じだ。
まあ、そんなわけで特に成果を上げられず数時間が経過した。
憂鬱な気持ちで森を彷徨う。
「な~んか息苦しい…いや、呼吸してないけどね。どう思うミシャ?霊体って息苦しいって思うことあるの?」
気持ちが落ち込んだせいか、なんだか息苦しい。
はぁ~…なんで転生してゴーストになってもこんな思いしなきゃいけないんだろう?
何気なく、愚痴のつもりでミシャに相談する。
《それは非常に危険なサインでしょう。霊体、ゴーストなどのアンデッド種が息苦しいなどのストレスを感じる環境は、アンデッドにとって適さない環境に居ると言う事です。現在であれば、霧が薄くなり日光が差し込み始めている証拠と言えます》
「ふ~ん………んんっ!!!??」
ミシャから帰ってきた答えは、それだった。
今私は適さない環境にいるらしい。
『適さない環境』ってのは『危険な環境』って意味だ。
じゃあそれは何か?
「霧が晴れかかってる!!?ヤバいじゃん!早く隠れないと死んじゃう!!」
霧が晴れかかり、太陽光がすぐそこまで迫っているのだ。
太陽光は私の天敵。
このままでは霧が晴れて焼け死んでしまう。
「早く隠れられるところを!!ミシャ!どこかに無い!?」
《―――周辺の地形の把握は、権限不足により行うことができません》
「はいクソ!マジで使えない!!」
ミシャにどこか隠れられる場所がないか訊いてみたが、権限不足で役に立たない。
マジで女神と言い精霊と言い……何にも教えてくないじゃん!
本当に使えないね!!
ミシャはあてにならないので、とにかく動き回って自力で探す。
その間にも霧はどんどん晴れて行き、周囲がどんどん明るくなっていく。
それに比例して暑さを感じるようになり、最初は梅雨くらいだったのが真夏日に、真夏日が猛暑日に、猛暑日が酷暑日に、酷暑日がサウナに変わっていく。
やがてサウナがオーブントースターの中のように、表面がヒリヒリ傷むくらいになり始めた頃。
「あった!!!」
私はようやく身を隠せそうな洞窟を発見し、そこに飛び込んだ。
その瞬間、プールに飛び込んだように一気に体が冷えて物凄く心地が良い。
「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛~~~~!!!生き返るぅ~~!!!」
もう死んでるのに、そんな言葉が出るくらいには心地が良い。
本当に心地が良い。
どのくらい心地が良いかって、最適な温度と最適な湿度に調整された部屋で、着るだけで疲れが取れる服を着て、人をダメにするソファーに全身を預けているかのような気持ちよさ。
この世のモノとは思えない……天国はここにあったか…
「ミシャ~、ここって天国?」
《いいえ。ここは天国ではありません。ですが、ここは瘴気濃度が高く、アンデッド種にとってはとても心地の良い環境でしょう》
「瘴気濃度…?そんなの分かるの?さっき周辺地形の把握は権限不足でできないって言ってなかった?」
冗談のつもりでミシャに話しかけたら、意外な話が聞けた。
一気に気持ちが現実に引き戻され、詳しく問い詰める。
《はい。今のわたしに周辺地形を把握することはできません。ですが、あなたが見た景色、聞いた音、感じた感覚は全て共有されているため、そこからの推測は可能です》
「ふ~ん…?」
どうやら、ミシャは私が見た物、聞いた音、感じたことは記憶出来たり考えたりすることができるらしい。
つまり、私がわかる範囲のことならミシャにもわかるって事。
何か見落としがないか?今知りえる情報で打開策は無いか考えることを訊く分にはいいんだろう。
けど、それ以上の事は権限不足でできない。
それを理解して使うべきだね。
「なるほどなるほど。ちなみに、なんでここの瘴気濃度が高いかわかる?」
《はい。ここは日光が当たらないため、瘴気の浄化が遅いと考えられます。また、同様の理由でアンデッドが日中の避難場所として活用しやすく、多くのアンデッドが集まっていると考えられます。すると、アンデッドが放つ瘴気がこの空間に滞留し、結果として瘴気濃度が上がると考えられます》
「………わかった。つまり、冬の教室で暖房を使わなくても、生徒が何十人いたら部屋の温度が上がるのと同じって事?」
《はい。その認識で問題ありません》
なんとなく、ミシャの使い方に慣れてきた。
何回も使って学習させたり、自分の求める答えを得られやすい聞き方をしたりする。
この先もミシャとは沢山話すことになりそうだね。
それはそうと、ここがアンデッドの多い環境ってことが分かったわけだけど…それってつまり……
「………めっっっっちゃゴーストいるじゃん」
空間ってか、洞窟を見渡すと、ほのかに光を放つゴーストがごまんといる。
ただ、私と違って生前の姿そのままというわけではなく、おおよそ人型をした何かが漂ってるって感じだ。
とはいえ、同種だからかすごく親近感を感じる。
「凄く、幽霊って感じのぼやけ感……なんでこんなことになってるの?ミシャ」
《はい。これらのゴーストには自我がなく、ただ本能のままに動いているためです。彼らには意思がなく、自己を持たないため概ね人型をした霊体が漂っているのです》
「ふ~ん…なんで意識とか自我がないの?」
《本来、肉体に存在しない魂は非常にもろく、死後意識や記憶が分散してしまうためです。およそ1ヶ月~半年ほどで何者でもないクリアな魂へとなり、彼らのようになります》
「……え?それ、私もそうなるの?」
ちょっと待って?私何もしてなくても死ぬの?
肉体って言う器に入ってないと死ぬの?
ヤバいじゃん?
《はい。その通りです。そのため早急にレベルアップを繰り返し、肉体に入っていなくとも多くの力を有し、意識や記憶が分散しないように対策する必要があります》
「な、なるほどね…それで『生命力吸収』を使えるようになる必要があったのか……でも、倒せるモンスターが居なくて、レベルアップなんてできないよ?」
今の私には、レベルアップによって力を手に入れて意識や記憶の分散を防ぐ必要があるらしい。
でも、今のところ私に倒せそうなモンスターは存在しない。
このままじゃ、ゆっくり私が私を認識できなくなって死んでいくだけだ。
……言ってて滅茶苦茶怖いじゃん。
マジでどうしたらいいの…?
《レベルアップには他者を倒す必要があります。現状の『生命力吸収』では生物を倒すことは難しく、レベルアップに必要な蹴家検地を得られないでしょう。ですが、『生命力吸収』以外にも攻撃手段は存在します》
「ホントに!?それ何なの!?」
絶望しかかっていたけれど、まだ希望はあるらしい。
私がこの先私のままでいられる方法。
何だってやってやる。私が生き残るためならね!
《生物を倒すことは難しいですが、アンデッド。特に、ゴースト種であれば撃破は簡単です。霊体同士であれば直接攻撃が可能であり、『生命力吸収』を使わずとも倒すことができます》
「なるほどね!『ゴーストタイプにはゴーストタイプがバツグン!』ってわけだ!」
某有名ゲームのタイプ相性みたく、ゴーストにはゴーストが有効らしい。
つまり、私はゴーストを倒せばいいんだね!
……ゴーストを倒せばいい?
「今私が狙い目な獲物って、ゴーストなんだよね?」
《はい。その通りです》
「狙い目のモンスターはゴースト……いや同種!!」
狙い目の獲物は同種という事実に、かなり複雑な心境になるのだった。
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