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初戦闘!いや敵強くね!?

―――ガサガサッ!!


音を立てて揺れる茂み。

人……って事は無いだろう。

誰か人が居るなら、さっきの段階で私に声をかけてくるはず。

じゃあ野生動物か……もしくはこんな世界かつ、こんな所だからモンスターか。

どちらにせよ、タイミングが良い。


「ミシャ。確か次に私がするべきことは能力を試すことだったよね?」


《はい。その通りです。現状使用可能なスキルである『生命力吸収』を試してみましょう。『生命力吸収Lv1』は、相手に接触することで発動可能です》


ミシャに確認してみたら、やっぱり戦う練習をしたほうがいいらしい。

使うのはもちろん『生命力吸収』。

使うためには相手に触れなきゃいけないみたいだけど…まあ、こっちは霊体だから攻撃を受ける事はないはず。


特別心配はせずに揺れる茂みに近付く。

そして、茂みの中を覗き込むと……


「ヘビ…?」


そこに居たのは、黄色とピンクのとても隠れる気の無い色合いをしたヘビ。

ただ、サイズがかなり大きく、胴は人の腕くらい太いし、長さは2メートル近くありそうだ。


「明らかに野生動物って感じじゃないよね…?ミシャ、これ何かわかる?」


こういう時はミシャに聞くに限る。

まあ、権限不足で大した情報は貰えないだろうけど……


《こちらのモンスターは、『ピンクバジリスク』と呼ばれるモンスターです。ヘビ型のモンスターとしては控え目な身体をしていますが、毒に特化した生態をしているため、無策で挑むことは死を意味します。毒を食らわないよう、遠距離主体で戦うべきですね》


意外にも情報をくれるミシャ。

ピンクバジリスクね……なんと言うか、仰々しいけどそうでもないような変な名前。

それで、毒に特化してるんだっけ?

私霊体だから毒は効かない。

遠距離主体で戦えってのも、人間の話だろうし、気にしなくてもいいかな。


……じゃないと、接触して攻撃するしかない今の私が戦っていい相手じゃないし。


「さて…まずは敵に触れて、と」


私が近くにいると言うのに、全く気にせず舌をチラチラしているピンクバジリスク。

その身体に触れて……というか、手を透過させる感じ?

とにかく触ってみる。


すると、物理的に触るのとは違う妙な触感を手から感じた。


「霊体で触るってこんな感じなんだ……んじゃ、吸いますか」


使い方の説明は受けてないけど、発動方法はなんとなくわかる。

別に誰かに習ったわけでもないのに、なんとなく『こうすればいい』って気持ちになるんだ。

その直感に従って、スキル『生命力吸収』を発動する。


「『生命力吸収《ライフドレイン》』」


スキルを使うと、手を伝って温かい何かが私の中に流れ込んでくる。

あと、手の先に何かを吸い取ってるような感覚があるね。

こう…うまく言えないけど、何かが吸着してくるみたいなかんじ?

ビニール袋に手を入れて、中を真空にしたみたいだ。

でも、不快には感じない。

むしろ心地よくて、ずっとこうしていたいと思うほどだ。


「こうしてHPを吸ってればいつかは――っ!?」


ピンクバジリスクからHPを吸っていると、流石に不快だっただろうバジリスクが動いた。

それも、信じられないほど速く。


「は、早っ!?動いたと思ったら居なくなってたんだけど…?」


体長2メートルはあろう大蛇が、瞬きの間に目の前から消えてしまったのだ。

こんな速度で動かれたら、遠距離主体で戦うとか言ってられない気がする。

攻撃した次の瞬間には距離を詰められて噛まれる。

それがオチじゃない…?


「…幸い、私は霊体だから毒が効かなくて、逃げてくれたのは良かったね。もし噛まれて毒が効く身体なら死んでたかも。まあ、噛まれるまでもなく死んでるけどね」


私が転生したのが人間だったら、今の一瞬で私は死んでいただろう。

いや、人間ならこんな無茶なことはしないんだけどさ。

でも、そのくらいに考えなきゃいけない相手なんだよね、ピンクバジリスク。


「……そう思うと、めっちゃ強くない?アイツ」


あまりにも一瞬で消えちゃったせいで、見失っちゃったし……見くびっていい相手じゃない。

とても初陣に選ぶモンスターじゃない事は確かだろう。


……マジで幽霊で良かった。


「…ミシャ、ピンクバジリスクはダメだったよ。何か他に狙い目のモンスターは居ないの?」


ピンクバジリスクはダメだ。

なら、他のモンスターはどうだろう?

このあたりに狙い目のモンスターは居ないだろうか?


《『生命力吸収』を試すのに良いモンスターは、スライム・ゴブリン・マンラットが挙げられます。どのモンスターも普遍的なモンスターのため、探してみる価値はあるでしょう》


ミシャがおすすめしてきたのは、スライム、ゴブリン、マンラットというモンスター。

後半二つはよくわかんないけど、スライムは私にもわかる。

なんかプルプルしてて、雑魚モンスターの定番みたいなモンスター。

確かに、それなら私にもやれそう。

そう思い、ピンクバジリスクは諦めて、それらのモンスターを探すことにした。






探すことにしたんだけど………






「ミシャ。あれは…スライム?…だよね?」


《はい。あちらは『ブラッティースライム』です。死肉を消化して成長したスライムが高い攻撃性を持ち、積極的に生物を襲うように進化したモンスターです。非常に強力な酸を持ち、その体内に取り込まれるとあっという間に全身を解かされてしまいます。また、獲物を襲うために非常に機敏に動くことも特徴です》


「ミシャ。あれは…多分……ゴブリン?」


《はい。あちらは『ホブゴブリン・ハンター』ですね。ゴブリンが成長したホブゴブリンが、さらに森林での活動に特化し、非常に強力かつ知能も高くなった個体です。知能が高いため、戦闘では苦労するでしょう》


「ミシャ………マンラットって……アレ?……ビッグフッドとネズミを混ぜたバケモノにしか見えないんだけど……」


《はい。あちらは『ジャイアント・マンラット』です。4メートルにもなる巨体と、非常に発達した前脚によって繰り出される攻撃は強力で、細い木であればなぎ倒すことができます。また牙も鋭く、顎も強いため岩をも砕くことができます》


ミシャが狙うことを提案した三種のモンスターとは遭遇した。

けど、私のイメージするそれとはかけ離れていて、とても倒せそうには思えなかった。

そして、三種全てに言えることだけど……私の事がまるで眼中にない。

見えてるはずだけど、いない者として扱われている。


一応『生命力吸収』は試してみたけど……まあ、無駄だった。

スライムはものすごいジャンプを見せてどこかへ飛んでいき、ゴブリンは狙おうとした瞬間気付かれてどこかに逃げられたし、マンラットはどれだけ吸っても反応なし。10分くらいやっても、痒そうにポリポリ掻くだけで、ダメージを与えられなかった。

そうして私は気付いたんだ。


「私は弱い………いや、敵強くね!?」


どうやら、この森に居るモンスターは相当強いらしい……

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