現状確認、アンタは誰!?
さて、生き抜いてやると息巻いたはいいものの……これからどうしたものか。
やるべきことも、何ができるのかもわかってない。
今の私にできることと言えば…飛ぶくらいだ。
これじゃ、夜中に現れた人を驚かすくらいしかできない。
「…そう言えば、何か特別な力が貰えたんだっけ?その説明もなんにも無かったなぁ……」
あの説明放棄女神は、私たちに何か力を与える的なことを言っていた。
普通こう言うのって、送り出す時にどんな力を与えるのかの説明があるものだと思う。
その説明すら無いんだから、本当にあの女神は信用ならない。
……てか、力をもらっても説明が無かったら使えないんだけど?
誕生日プレゼントで自家用ジェットを貰っても、その運転方法なんてわかんないのと同じ。
無いも同然の力……本当にどうやったら使えるんだろう?
「説明…説明が足りな過ぎる……誰か教えてよ……」
今を生きる若者の私には、人から教わらないと何もできない。
手探りでやろうにも、その手探りのやり方すらわからない。
どうにもならない現状を嘆いて、霧に覆われた森で弱音を漏らす。
その時だった。
《お困りでしょうか?》
「―――っ!?」
突然人工音声のような女性の声が聞こえ、無いはずの心臓が口から飛び出しそうなほど驚いた。
「だ、誰!?誰かいるの!?」
返ってくるはずのない返事が聞こえ心底驚いたが……『誰かいる』という現状に気付くことができ、希望が芽生える。
私は一人じゃない。
ただそれだけで、私はまだやれるんだ。
《こんにちは。わたしはあなたのお手伝いをさせていただく精霊。『ミシャ』と申します》
「は、はぁ…?精霊…?」
辺りを見渡すが、そこにミシャと名乗る何者かの姿見当たらない。
それとも精霊って言ってるから、目には見えないとか?
……いや、それなら私も見えない側の存在のはずなんだけど。
《わたしに実体はありません。わたしは、あなたの中に存在しています》
「私の中…?」
自分の中に誰かが居る……なんて感覚は全くしない。
私は至って普通で、変な感じは全然しないんだけど……まあ、周囲を見渡しても見つからないし、多分本当のことなんだろう。
「えっと…ミシャさん?」
《はい。なんでしょう?どんな事でもご質問ください》
「……なんかAIみたい」
《すみません。よくわかりません》
「うわっ、めっちゃAIっぽい!……じゃあ、ミシャ。この世界は何なの?」
ミシャがAIみたいなものなのら、わざわざ敬語を使わなくてもいいだろう。
普通に聞けばいいんだ。
《この世界は何か?という質問ですね。ここは『ネイテア』と呼ばれる世界です》
「ネイテア…?それがこの世界の名前なの?」
《はい。そのとおりです。ここは神―――が創造した世界、『ネイテア』です》
「……今なんて言ったの?」
神がどうこうって言ってたけど……なんか、聞こえなかった。
その瞬間だけミュートされたみたいに。
「神がどうこうの辺りが聞こえなかったんだけど、なんて言ってたの?」
《―――権限が不足しているため、回答できません》
「権限…?」
なんか雲行きが怪しくなってきた……
これまた大したこと聞けない感じ…?
「……わかった。じゃあミシャ。あなたは何者なの?」
私の予想だと、これも……
《―――権限の不足のため、詳細説明はできませんが、自己紹介をさせていただきます。私はミシャ。あなたのお手伝いをさせていただく精霊です》
……やっぱりね。
ここの説明にも権限とやらがいるのか。
女神といい、精霊といい……なんにも教えてくれないんだね。
まあでも、今のところミシャはチャットAIみたいな感じで話せそうだし、それだけは救いか。
……いや、人工知能としか会話できないって、かなり虚しいんだけどさ。
「……わかった。ミシャ。これから私は何をしたらいいと思う?」
チャットAIが居るのなら、それにこれからどうすれば良いか聞けばいい。
最近の若者はすぐにAIに頼るって言われそうだけど、この先AIを活用してこそだと私は思う。
だから、ミシャに私がするべきことを聞いてみる。
《素晴らしい質問ですね。あなたがするべき事は3つあります》
「う〜ん、めっちゃAI……」
この項目立てて答えてくれる感じ、本当にAIだ。
こういう言い方をされると、それが間違った情報でも信じちゃうから、AIはダメって言われるんだよね…
まあそれはともかく、とりあえずミシャの話を聞こう。
《1 ステータスを確認する
2 能力を試す
3 拠点を探す
この3つです》
ステータスだって?ステータスってアレだよね?ゲームとかで見るアレ。
この世界そんなのがあるの?
「……そのステータスってどうやって確認するの?」
《本来ステータスの確認には『鑑定』のスキルを必要としますが、わたしにはステータス表示権限が存在します。ステータスを表示しますか?》
「へぇ?便利だね。私のステータスを見せて」
『鑑定』なるスキルが必要なところを、ミシャがいればその必要が無くなるのは嬉しいね。
さて、私のステータスはどんなものかな?
《こちらが広田未来のステータスになります》
――――――――――――――――
名 広田未来
種族 ゴースト
レベル1
HP 30/30
MP ∞
筋力 0
防御 10(物理無効)
魔力 50
防魔 30
素早さ 30
スキル
『魔力無限』『自由自在』『浮遊Lv1』『生命力吸収Lv1』『情報精霊Lv1』
称号
『転生者』
――――――――――――――――
え?これ強いんじゃない?
攻撃力がゼロなのは、幽霊だから物理攻撃ができないからだとして…数字の低い防御も、霊体だから物理攻撃無効だし。
それに何より目を引くのが『魔力無限』。
私は魔法を使い放題ってことだよね?
今は魔法なんか使えないし、そういうスキルも見当たらないけど、これは明確な強みだと思う。
あとは……
「情報精霊、か…ミシャのこと?」
《はい。わたしは精霊の中でも情報精霊に分類される精霊です》
情報精霊とはミシャのことらしい。
これが火の精霊とか水の精霊とかなら分かりやすいんだけど……情報の精霊ってなに?
それにスキル欄にあるけど、精霊ってスキルなの?
「精霊ってスキルなの?」
《―――権限不足のため、詳細な情報が不足しています。ですが、精霊は本来スキルではありません》
また権限不足。
…まあ、レベル1だし仕方ないか。
それに、なんとなく推測できる。
「ミシャだけ。あるいは情報精霊が特別ってことか。まあ、スキルレベルが上がったときに聞けばいいね」
多分、スキルレベルが上がればミシャの権限が増えて、アクセスできる情報も増えるんだろう。
それを教えてくれるだけあの女神よりは親切だし、信用できる。
さて、じゃあ最後に――
「『自由自在』ってどんなスキル?」
ずっと気になっていた謎のスキル。
それについてミシャに質問してみた。
すると……
《権限不足のため、詳細な情報が不足しています》
……と、権限不足で説明してもらえなかった。
じゃあ使えないじゃん、このスキル。
いやまだだ。情報が不足してるだけで、説明できないわけではないはず。
「…どこまでわかってるの?」
質問の仕方を変えると、ミシャも返事を変えた。
《スキル『自由自在』は転生特典として付与されているスキルです。効果・使用方法は情報不足のため不明です》
ようやく私の求める答えが返ってきた。
このちょっと使い勝手が悪いところも、AIっぽいよね。
それで、転生特典だって?
じゃあ、あの女神が言ってた特別な力ってのはこれのことなのか。
情報が不足てるとか言われて全く使えないけど…いずれはすごく強いスキルになるかも。
さて、これで今できるステータスの確認は終わりかな?
数字に関しては聞かなくてもわかるし、これが強いのか弱いのかは聞いたところでまた『権限不足』って言われるだけだろう。
なら次にするべきこと……確か、能力を試すだっけ?
『自由自在』は使えないし、『魔力無限』は試すような能力じゃない。
『浮遊』はさっき試したし、残るスキルとなると……
「『生命力吸収』か」
試す能力と言えばそれしかない。
名前からして、相手のHPを吸収するスキルだろう。
なんというか、幽霊らしい能力だね。
「今の私のメインウェポン。効果はあんまり―――ん?」
どんなスキルなのか考察していた時のこと。
近くで茂みが揺れる音が聞こえた―――
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