死んでるけど生き抜く!
私の名前は広田未来。
元17歳の女子高生で……今は転生して異世界でゴーストをやってます。
はい、ゴーストです。幽霊です。転生者です。
「……いや、転生できてないって」
霧がかった薄暗い森の中、1人そう呟く。
自分の姿を見ると、制服を着ていて死んだときそのまま。
おまけに体が透けていて、自分が人間ではなく幽霊だってことが嫌でも理解できる。
…え、これ生きてるの?死んでるの?
「転生してゴーストに……生きてるって言うべきなのか、死んでるって言うべきなのか…」
自分でもよくわからない状態だ。
ゴーストである以上、人間としては死んでいる。
けれどこうして意識があって、存在を確かに認識できているのなら生きていると言えなくもないのかな…?
……よくわかんない。私頭良くないし。
というか、今私が悩むべきはそこじゃない。
「これからどうすればいいんだろう…?」
辺りを見渡すが、木々が鬱蒼と生い茂っていて霧がかっている以外に何も見えない森。
こんなところにずっと居たら気が狂ってしまう。
早く誰か人を見つけて、なんとか正気を保てるようにしないと…
「とりあえず歩いてみよう。遭難…とは訳が違うし、何していいのかもわからないけど」
遭難した時はどうすればいいかの対処法というものがあるしい。
ぼんやりとしか覚えてないけど、無暗に歩くのは危険なんだとか?
でも、私は遭難した訳じゃない。
突然見知らぬ森のど真ん中(?)に放り込まれたんだ。
濃い霧で太陽も見えないし、方角もわからない。
とりあえず歩くしかないだろう。
そう思って一歩踏み出す。
そこで気が付いた。
「…私、ちょっと浮いてる?物理的に」
地面に触った感触がない。
いや、霊体だから物理的に触ってないし当然ではあるんだけど…
それでも、何と言うか変な感じがする。
不安定な足場の上に立っているような感覚。
そう思って足元をよく見たら、地に足ついておらず少し浮いていることに気が付いた。
「幽霊だから浮いてるのは当然か……ってことは、空も飛べる?」
幽霊って、何となく宙に浮いてふわーって移動してるイメージがある。
それに、自由に空を飛び回っている気もする。
そのイメージと、実際に浮いていることから自分もできるのでは?と空を飛ぼうとしてみた。
すると、体が浮き上がり、どんどん木の枝が近づいてくる。
「すごい!飛べる!流石幽霊!!」
なんとなく行きたい方向に行こうと思うだけで動ける。
しかも、どんな体制でも思うがまま。
今の私は自分の思うように、自由に空を飛べるらしい。
その事にはしゃぎ、一番近くにあった木の頂上まで来て気が付いた。
「…あれ?空が飛べるなら、上から見下ろして街を探せばいいんじゃ?」
わざわざ森の中を進む理由はない。
道なき道を歩いて迷うより、空を飛び回った方が確実だ。
なら、もっと高度を上げて上から世界を見下ろそう。
そう思いついて飛び上がる。
ぐんぐん高度を上げ、地面が遠のき、木のてっぺんも霧に隠されて見えなくなる。
それでも気にせず空へ舞い続けると、だんだん霧が薄くなってきた。
「よし、これで――痛っ!?」
もうすぐ視界がよくなる、なんて考えていた矢先のことだった。
突然、全身にやけどでもしたかのような熱い痛みが走る。
「痛い痛い!?なにこれ!?」
たまらず飛び回ると、高度を下げて霧の濃いところへ逃げ込むと痛くなくなった。
そこで自分の体の状態を確認すると…体の外側が使い古した毛糸のセーターみたいにボロボロになっている。
「なにこれ…どうなってるの?」
訳が分からない。
でも…ダメージを受けたのは確かだろう。
問題はなんでダメージを受けたか?
…そんなの決まってる。
「もしかして…日光に当たっちゃダメなの?」
霧が薄くなって、日光が沢山当たるようになると痛みが襲ってきた。
それはきっと、お日様の光に当てられて私の体が浄化されそうになったことが原因だと思う。
思い返してみれば、幽霊は夜や暗い場所に出てくるイメージがある。
私の知る幽霊がそうなのかはわからいけど…日光にはそういう負の存在を浄化する印象。
鬼とか吸血鬼を倒す話は大抵日光が敵の弱点。
じゃあ私も…?
「……少なくとも、夜になるまでは霧の中から出られないね」
日中に霧の外へ出て街を探すのは現実的じゃない。
でも、夜中に霧の外に出たって何が見えるのかな?
周りが森しかないなら、電気の明かり一つなくて何も見えないだろう。
それじゃ街を探せない。
…いや、それだけじゃないでしょ。
「この霧が晴れちゃったら、私は死ぬってことだよね……いや、もう死んでるんだけど」
日に当たるとダメージを受けるのなら、この霧が晴れたときが私の死ぬときだ。
それまでに、日中身を隠せる場所を探さなきゃいけない。
この濃い霧の中、果たしてそんな場所が見つけられるのかわからないけれど…できなきゃ死ぬ。
「……そんなの、嫌に決まってるでしょ」
たった17歳で死に、幸運にも転生できると思ったら、実質転生していないような状態。
それも、霧が晴れて日が当たるようになれば死んでしまうとか……納得できない。
「なんの説明もなくこんな世界に連れてこられて、こんな転生先に勝手に決められて、そしていつ死ぬかわからない?………納得できるわけ無いじゃん」
ふつふつと怒りが湧き上がる。
私が何をしたって言うんだ。
何もしてないじゃないか。
こんなのあんまりだ。
これも調整だって言うの?
神様が決めた理不尽な運命で、私は死ねって?
そんなの、真っ平ごめんだね!
「絶対生き抜いてやる。もう死んでるけど、絶対生き抜いてやる!!」
絶対に簡単に死んでやるものか。
私は生きて生きて生き抜いて…『もう十分だ』って思えるまで生きてやる。
もう死んでるけど!
その想いを胸に、決意表明として拳を突き上げた。
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