それ結局転生できてなくない!?
『あなたは―――“ゴースト”に転生してもらいます』
女神様から告げられた私の第二の人生。
それは、“ゴースト”だった。
高校2年生の秋
修学旅行に行くためのバスが大事故に巻き込まれ、私たちはみんな死んだ。
広田未来享年17歳。
あまりに短い人生だった。
雲の中のような空間でそんなことを考えていた私に、どこからか声が降り注いでくる。
『みなさんが新しい転生者ですね』
誰だこの声?
そんなことを考えたのも束の間。
気が付くと私たちは石造りの建物の大広間に居た。
無駄に広い大広間の中心には、宙に浮かぶ椅子に腰かける一人の女性が居る。
服は生地が薄いがあらゆる場所に金の細工が施され、一目見てそれが高価なものだとわかる威厳のある服。装飾品をいくつも身に着け、少し動こうものならじゃらじゃらと音が鳴りそうだ。
あれが神様か何かなのか……?
『今回は一度に23人ですか。調整が面倒ですね』
今回?調整?
そう言えばさっき転生者とか言ってた気がする。一体何の話だろう?
死んだら天国か地獄に行くものだと思ってたけど…私たちはすぐに生まれ変わるってこと?
急展開の連続で逆に冷静になれた私を置いて、推定女神様の話は進んでいく。
『では一人ずつ転生させていくので、そこでそのままゆっくりしていてくださ―――』
「ちょ、ちょっと待ってください!!」
けれど、それを止める人が居た。
この場で唯一の大人である私たちの担任の先生だ。
「何がどうなっているのかの説明をしてください!これから私の生徒はどうなるって言うんですか!?」
先生はすごく熱意のある人で、この状況で自分のことではなく私たちの事を気にしてくれている。
今にもつかみかかりそうな勢いで声を張り上げる先生。
それを見て、女神さまは面倒くさそうにしながら答えた。
『そうですね。まず皆さんは死にました。そこはいいですね?』
「え、ええ……あれほどの事故ですから…」
淡々と告げられる、私たちが命を落としたという事実。
けれど、それを嘆いても仕方ないし、先生の言う通りあれほどの事故なのだから生き残っている方が不思議だ。
『皆さん、自分が死んだことに納得しているようですね。では次です。皆さんはこれから異なる世界で第二の生を受けることになります。私はその斡旋をしている者です』
「それは……“記憶を保持したまま”、ですか?」
『ええそうです。―――ああ、何故?という質問は受け付けませんよ。私は上から与えられた役を淡々とこなしているだけなので、詳しい事情など知りません』
記憶を保持したままの転生。
なんでそんなことを…という質問はしてはいけないらしい。
女神様も知らないことらしいから。というか、神様にも仕事とか上下とかあるんだ。
『そして、ただ記憶を保持したままではなく、特別な力を持たせたうえで生まれ変わることになっています』
「…なぜですか?」
『存じませんね。あちらで神格と会う機会があれば、その時に質問してください』
理由とか、詳し事は何一つわからないけど…とりあえず異世界に特別な力と記憶を持って転生するってことは分かった。
どこかで聞いたことがあるような展開だけど……ホントにあるんだね、こういう事。
女神様からの説明はそこで終わり、転生の作業が始まる。
『あなたは地方の村に転生してもらいます』
『あなたは都市に転生してもらいます』
『あなたは地方貴族に転生してもらいます』
『あなたは王族に転生してもらいます』
1人ずつ名前を呼ばれ、そこで転生先を告げられる。
地方出身の人から、王族まで。
一体何の差があるんだと思うけど…聞いても『調整です』としか言われない。
その調整が何なのか聞きたいんだけど、その対応はしてくれない。
詳しいことは何も説明してくれないことに疑問を感じ、不信感を抱き始めた頃に私の番がやってきた。
『あなたは―――“ゴースト”に転生してもらいます』
女神様は淡々とそう告げた。
そして次の人の番――
「ちょ、ちょっと待ってください!!?」
――ということはさせず、私は待ったをかける。
『なんでしょう?』
心底不思議そうな疑問の顔を浮かべ、首をかしげる女神様。
いや、おかしいでしょ?
「みんな人間だったじゃないですか!ゴーストって…幽霊ってことですか?」
『そうですね。霊体のみで存在するアンデッド。言い方を変えればモンスターです』
私の質問に一切言葉を淀ませることなく応える女神様。
けれど、その内容は淡々と答えて良いものではない。
「モンスター…?人間じゃないんですか?なんで……」
『調整です』
自分に課された運命を理解できずもう一度質問すると、女神様はまた言った。
『調整です』、と……
それを言われ、私の中で何かが切れた。
「調整調整って!私はそれが何なのか知りたいんですよ!?なんですか調整って!!何を調整するんですか!!」
椅子が宙に浮いていることもあって、こちらを見下ろす女神様に怒鳴る。
自分の人生がかかっていることに対して、何の詳細も知らされないまま適当なことを言われても納得できない。
何も知らないのに信用できるわけがない。
それに何より………
「それにゴーストって……それ結局転生できてないじゃないですか!!?」
転生しても死んだまま。
それって転生できていないのと同じだ。
その不満をぶつけるが……女神様の表情は変わらない。
『……言いたいことはそれだけですね。ではよい第二の生を』
「ちょ―――」
私の怒りに対してなんの反応もなく、ただ雑務の一部化のように流された。
女神様が手を振ると、体がどこかに向かって強く引かれるような感覚に襲われる。
そして答えを得ることもできず……気が付くと、私は薄暗い森に居た。
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