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洞窟の奥深くへ

「倒した…のかな?」


動かなくなった洞窟の主。

試しにファイアーボールで突いてみるが、爆発で揺れる以外は特に変化がない。

どうやら倒せたみたいだね。


「ふぅ…生き残ったぁ……」


ゴーストになってからもっとも私に死を意識させた洞窟の主は、ついに死体へと戻った。

私は生き残り、洞窟の主は……まあ、解放されたんじゃないかな?

そう思う理由は……


「……ミシャ。さっきホーリーショットを洞窟の主に当てたとき、なにか言ってた気がするんだよね。あれ、なんて言ってたかわかる?」


洞窟の主は倒れるその瞬間に何か言っていた。

私の全く知らない言語だから、なんて言ってたのかはわからないけど……なんとなく、感謝されていたような気がする。


《権限不足により翻訳ができません》


「…そっか。でも、一応覚えておいてくれない?翻訳できるようになった時、なんて言ってたのか知りたいから」


《はい。かしこまりました》


何と言っていたかの翻訳は、今のミシャにはできないようだ。

でも、いずれ出来るようになった時に彼が何と言っていたのか知りたい。

だからあの言葉をミシャに覚えておいてもらうことにした。


また、それとは別に……あの洞窟の主を見て、ふと思ったことがある。


「ねえミシャ。あの洞窟の主、昔は人間だったのかな?」


《はい。その可能性は高いと思われます》


「……じゃあさ?私が焼き払ってきたゾンビもそう?」


《はい。その通りです》


「そっかぁ……なんで、あの人たちはアンデッドになったんだろうね?」


今まで倒してきたアンデッドは、元は人間だった。

……まあ、ずっと前に死んだ人がアンデッドになったわけだから、人を殺したって感覚は無い。ちょっと気分は悪いけど。


それはそうと、彼らがアンデッドになった理由。

洞窟の主やゾンビだけじゃない。

この洞窟には数多くのゴーストが居た。

その多くは自我を失い、ただその場を漂うだけの存在と化していたけれど……あのゴーストたちもかつては私と同じ人間だったはずだ。


「この洞窟に居るアンデッドが一体とか二体とかだったら、森で死んだ人の霊や死体が太陽から逃れるために集まった、わかるんだよ。でも、一体や二体じゃ済まない。何百体って数のアンデッドがこの洞窟に居る。それって、なんか変じゃない?」


ステータスとかスキルとか。

何かとゲームみたいな世界だ。

瘴気が集まって、何もないところにゴーストやゾンビが生まれても不思議じゃないとは思ったけど……あの洞窟の主を見ると、どうやらそうじゃないっぽい。


「ミシャ。そもそもどうやってアンデッドは生まれるの?」


アンデッドはゲームのモンスターのように突然出現するものじゃない。

きっと…そこに死があって生まれる存在なんだと思う。

その私の考察が当たっているか、ミシャに訊いてみた。


《はい。アンデッドは主に瘴気による汚染によって発生します。死後間もない死体に瘴気の汚染が起こるとゾンビ種に。死後時間が経過し白骨化、しかし骨にわずかでも生命力が残っていた場合はスケルトン種に。死後間もない魂が瘴気に汚染されることでゴースト種になります。それが、自然発生するアンデッドです》


「なるほどね……じゃあやっぱり、私が倒してきたアンデッドは元は人間だったんだね?…ってことは、間違いなくこの洞窟で“何か”あったんだろうね」


私の考察は当たってた。

アンデッドは自然発生する時、必ずそこに死がある。

沢山のアンデッドが居るってことは、それだけその場所で多くの死があったってこと。


……それも、死後間もない死体から生まれるゾンビや、死後間もない魂から生まれるゾンビが大量に居るってことは、何があったのか想像に難くない。


「洞窟の奥に行けば、何かわかるかな?」


この洞窟は、どうやらまだ先があるっぽい。

そこまで行けば、どうして彼らがアンデッドになったのかがわかるかもしれない。

……きっと、ろくな理由じゃないだろうけどね。


あまり期待はしないけど、洞窟の奥へ向かってみる。

3メートルはありそうな洞窟の主が居ただけあって、奥に進んでも進んでも大きな空洞が続いている。


「この洞窟かなり大きいね…まだ何か居そう…」


ミシャの推測ではさっきのアンデッドが洞窟の主らしいけど、これだけ大きいならもっとヤバイ何かが出てきそうだ。

そんなことを考えながら飛んでると、物が散乱している場所にやってきた。

それが何か見ようと炎魔法で明かりを出すと…


「うわっ……」


まるで強盗にでも入られたかのように荒らされており、価値なさそうなものが散乱している。

でも、それでも物の配置を見ると……昔ここに人が住んでいたことが分かった。

……いや、住んでいたというか、『避難してた』かな?

昔テレビで見たことがある震災直後の避難所になった学校の体育館を思わせるものが沢山転がってるからね。


違うことがあれば、色々なものが血の跡で汚れてるって事と白骨死体だらけってことだ。


「ミシャ……これどう思う?」


《はい。おそらく、戦争に巻き込まれた人々が避難してきたと思われます。しかし、追手が洞窟まで追いかけて来て、洞窟内で虐殺が起こったものと考えられます》


「まあ……そんな感じだよね。明らかに殺されとしか思えない骸骨がいくつも転がってるし」


あまり想像したくないが…かつてここで起こった事実だ。

そして、そのまま放置された死体が瘴気に汚染されてアンデッド化……酷い話だ。


「…神様は何をやってるんだろうね?こんなのあんまりだよ」


白骨死体の中には子供のモノもあった。

殺された人に見境はないらしい。

こんなに沢山の人が殺されて……一部の人はアンデッドになっちゃってるし。


「…この骨も、いつかはアンデッドになるの?」


《その可能性は高いでしょう。ですが、瘴気をすべて浄化すればそれは防ぐことができます》


「そっか……お墓は作ってあげられないけど、せめて浄化くらいは…!」


神聖魔法を使い、周辺を浄化していく。

洞窟の奥から入り口に向かって地道に浄化する。

避難場所として使われるだけあってかなり洞窟は広く、浄化にはかなりの時間がかかった。

どのくらい時間がかかったかというと……


「うわっ、外もう夜じゃん!」


洞窟全体の浄化が終わる頃には、外は夜になっていた。

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