第7話 遂に来た!愛しの推し!
【第三部】推しは私が救うー終ー
私は、とてもわくわくしていた。
歓迎会が終わったということは……そう!!
我が推しであるトワさんが、もうすぐこの世界に現れるから!!
毎日、毎日、癒しのトワぬいを抱きしめながら待っていたのだよ。
ははははは。
そしてついに──来たーーーーー!!!!!
摩訶不思議な出来事に、アニメの展開通り皆さん驚くかと思いきや……
私という謎の女が先に現れ、さらにトワさんの存在についても話していたこともあって、案外とすんなり受け入れてくれていた。
時雨さんなんか、アニメでは初めトワさんにかなり反対していたのに、今回は──
「てめぇなんかより、トワの方が大歓迎だぜ」
なんて、余計な一言を言ってきやがった。
かっちーーん、ときたけど……愛するトワさんを受け入れてくれたことに免じて、大目に見ることにした。
私はトワさんに速攻で会いに行った。
朝食の準備をしているトワさんに会いに。
念願の推しであるトワさんが目の前にいることに、大・大・大興奮!!
思わずトワさんに抱きつこうとする。
「あぁ……トワさんーーー!!会いたかったですよーーー!!……ぐぇ!!」
その瞬間、なぜか哀伝さんたちに阻止された。
「ごめんね歌羽〜。僕たち、栄善に頼まれてるからさ〜」
「おいらたち、トワが困ってないか様子を見るように言われてるからな!」
「……お前はトワに何するか分かったもんじゃないからな」
……ちっ。出たな、幼馴染三人組め〜。
だけど、推しである栄善さんの頼みとなると仕方ないっす……
しゅんと肩を落としている私の様子に、トワさんは手を口元にあてて「ふふふっ」と微笑んでいる。
……あぁ〜、癒し〜。天使だ〜。
──そして私は、静かに天に召された。
そのあと私は、アニメで一度もトワさんに会っていなかった杏歌さんを、トワさんの元へ連れて行った。
「……ちょ、ちょっと歌羽。そんなに引っ張らないでよ」
「なぁ〜に言ってるんすか!杏歌さん、仕事詰めでトワさんに一度も会ってなかったんですよ!時間は作るものっすよ!」
その言葉に杏歌さんは「……うっ」と言葉を詰まらせた。
「トワさん〜、外交補佐の杏歌さんを連れて来ました〜。気が強くて怒ってばかりですが、仲良くしてやってください〜」
「あんたね……なんて紹介してんのよー!」
ぷんすか怒っている杏歌さんを見て、トワさんはまた「ふふふっ」と愛らしく微笑んだ。
「……歌羽は鼻血拭きなさい」
……はっ!いけない!
あまりの可愛さに鼻から血が……!
「ごめんねトワちゃん、うるさくて。私は杏歌。これからよろしくね」
「杏歌さん。“トワちゃん”なんて、柄じゃないっすよ〜。似合わない〜」
私がぶーぶー言っていると、杏歌さんは額にピキッと青筋を立てた。
「……あー、うるさいわね!分かったわよ!ごめんね、トワって呼ばせてもらうわね。これからよろしく、トワ。私のことも杏歌って呼んでね」
「ふふふっ。こちらこそ、よろしくね杏歌」
そして、二人は握手を交わした。
……ゔぅ……いい。すんげぇ、いいよ。
だって二人とも、この惑星に降り立つ前から、ずっと一緒だったんだよ!?
なのにアニメでは、あんな結末でさ……
「よがっだよーーー」
今度は鼻水を垂らしながら号泣する私の姿を見て、二人は揃って困惑していた。
ちなみに私は──あえて話さないでいる。
栄善さんとその幼馴染の皆さん、そしてトワさんが、この惑星に降り立つ前──「元の世界」で一緒だったことも。
トワさんが、別の世界から来た存在だということも。
きっと話しても、あの星に還らない限り思い出せないだろうし……トワさんはとても繊細な人だ。
アニメで見たときも、自分が別の世界から来た存在だということを、とても言いにくそうにしていた。
だから、それを私から言うのは無責任だと思った。
それに──私が余計なことを言って、トワさんと栄善さんのあの絆が深まる大事な流れが変わってしまっても困るし!!
……あれ、今ちょっと意外って思いましたね?
こう見えて、ちゃんと考えてるんっすよ、私だって。
だけど、トワさんって本当に可愛いよね。
一人だけ、降り立つ惑星を間違えちゃうなんて。
それでもこうして、また皆さんが巡り合えるなんて……強い絆で結ばれてるんだよね。
あ〜、尊いっす!!
それから──皆さんには全力で阻止されたので、トワさんには話さないでいる。
私が別の世界から来たことも、この世界の出来事がアニメとして存在していることも。
あと、トワぬいを絶対に見せるなと言われている。
「なんでですかー!!愛する推しに伝えなくてどうしろってんですかー!?」
そう叫び散らかしていたら、にこにこ顔の哀伝さんに肩をがしっと掴まれた。
「僕が話した感じだと、あの子すごく繊細そうだしね。それに、歌羽が持ってるそのトワぬい。トワ本人が知ったら、絶対に恐怖だから。僕たちもトワのことは栄善にも頼まれてるし。だから絶対に、余計なことは言わないでね」
……こっ、怖ぇええーよ!!哀伝さん!!
あんた実は、この城の裏ボスだな!!
さすが御用貿易商人の息子で、栄善さんが亡き後は、次期殿まで務めた男だぜ……
それに頭の回転は速い、おまけに武術も強い。
春風さんも言ってたけど、敵に回すと一番怖いタイプかもしれない……
そんなこんなで、無事に私の愛しの推しも揃いまして、ますます意欲が湧く次第であります。
拝啓──愛しのトワさん・栄善さん。
私はあなた方に、決して悲しい思いはさせません。
そして、お二人の愛するこのお城の方々も。
心の中でそう呟きながら、私は今夜もトワぬいと栄善ぬいを抱え、幸せな眠りへと落ちていくのであった。




