第4話 推しは私が救う!
【第三部】推しは私が救うー終ー
──推しは、私が救うんだ!!
「いいっすか!?今は皆さん、意味が分からないと思いますけど、私は本気で救いたくて、流れ星に願ってここに来たんです!!」
突然声を張り上げた私に、ゴリラをはじめ、皆さんが息を呑む。
「この先、いずれ“四乃森綿花”という人物がお城に入ってきます。こいつが、まぁ〜それはそれは悪いやつなんです!!」
びしっと、万里小路時雨を指す。
「いいっすか!!その四乃森綿花を連れてくる張本人──時雨さん、あなたなんですよ!!」
「……おっ……おう……」
「あなたの行きつけの飲み屋で働き始めた綿花を、酔っ払った勢いで連れてきたんです!!」
その言葉に、柚寧さんと春風さんが顔を見合わせる。
「……酔っ払って連れてきた……あり得るわね」
「……あぁ、納得の二文字しか浮かばないな」
ざわめきが広がる中、私はさらに声を張る。
「──そしてしばらく経つと、このお城になぜか、私と同じように“笠原トワ”さんという人物が現れます!!」
私はトワぬいを、びしっと突き出した。
「これはそのトワさんのトワぬいです!!……あぁ〜可愛い〜」
思わず撫で回す私を見て、杏歌さんと哀伝さんが、どこか呆然とした様子で呟いた。
「……なんだか少し、雲祈に似てるわね、この子……」
「僕も……そんな気がする……」
「ぬ……?私ですと……?」
雲祈さんが顎に手を当て、首を傾げる。
その様子をよそに、私はさらに続けた。
「トワさんは、なぜかこのお城に現れます。しか〜し!!この方は決して怪しい者ではありません!!」
ぐっと拳を握り締める。
「現れた経緯は、皆さんにとって怪しく映るのも分かります。でも──とても、とても……まぁ〜とても素敵な方なんです!!」
推しであるトワさんを語るうちに、声に熱がこもっていく。
皆さんが息を呑む中、私は真っ直ぐ前を見据え、言い切った。
「私は皆さんを必ず救います。──だから、黙ってついて来てください」
……静寂が室内を包む。
茶々蔵さんは白い髭をゆっくりと撫でながら、口を開いた。
「ここまで熱心に語るのじゃ。わしらには分からぬことを、きっと歌羽は知っておるのじゃろう」
それに続き、栄善さんが私へと視線を向けた。
「歌羽は“救う”と言っておったが……恐らくこの先に起こりうる出来事を、すでに知っておるのだろう。そしてそれが、四乃森綿花とやらの手によって引き起こされるということも……」
私は栄善さんを見据え、力強く頷いた。
「……そして後に現れる、笠原トワとやらは、怪しい者ではないと……」
栄善さんは皆さんへと視線を向け、静かに言葉を続ける。
「私は歌羽を信じる。あにめとやらはよく分からぬが、私たちの情報を知っていることは確かだ。それに……先ほどの歌羽の熱弁は、私の心に強く響いた」
しばらくの静寂の後、口を開いたのは哀伝さんだった。
「僕も栄善の意見に賛成だな〜。さっきの熱弁も、とても嘘をついているようには見えなかったし、詳しい内容は分からないけど、この国を守るためにも、歌羽の存在は大切なんじゃないかな?」
はぅ!
さすが次期殿を務めただけある、哀伝さん!
「……そうね。それに、何か起こってからでは遅いもの。私もできることがあるなら協力するわ」
あぁ〜、さすが哀伝さんの妻になる杏歌さん!
お二人ったら、頼もしいったらありゃしない。
その言葉を皮切りに、次々と同意の意見が上がった。
その様子を見届けてから、栄善さんが茶々蔵さんへと静かに問いかける。
「茶々蔵、歌羽を我が城に迎え入れる。よいか?」
茶々蔵さんは柔らかな笑みを浮かべ、ゆっくりと頷いた。
「あぁ、かまわん」
……いや〜ぁああー!!可愛い、可愛い、茶々蔵さん!!
萌え萌えきゅん♡
「……大丈夫か、こいつ……」
一人で茶々蔵さんに興奮している私を見て、時雨さんが呆れたように呟いた。
「それで栄善。歌羽はなんの役職にするつもりだ?」
春風さんの問いかけに、皆さんが興味深そうに栄善さんへと視線を向ける。
「あぁ、歌羽には交易使者として務めてもらう。交易使者は、まだ決まっていなかったからな」
「げぇーーー!!!!」
「こんなうるせぇ女が俺の部下だと!?」
私とゴリラの声が重なる。
「……んだと、このゴリラ。もう一回言ってみやがれってんだー!!」
「なんだてめぇは!!杏歌以上に暴れ馬なやつだな!!」
言い合う私たちを見て、皆さんがくすくすと笑っている。
こうして私は、交易使者としてこのお城に仕えることになった。
──私の“推しを救う物語”は、ここから始まる。
だが、そのときの私はまだ、この物語の本当の意味を知らなかった。
『遺志を継ぐ者たち【巡】』
その言葉が何を指しているのかも──




