第35話 大騒ぎ
【第三部】推しは私が救うー終ー
「ぎゃーーーーーーあーー!!!!」
私の叫び声に、春風さんが真っ先に時雨さんの書斎へ駆け込んできた。
「歌羽、どうしたんだ!?」
「……あっ……あっ……」
私は完全に放心していた。
「……かなり気分が悪かったようだな。時雨は」
その直後、ばたばたと足音が重なり、皆さんも一斉に書斎へと駆け込んでくる。
「歌羽どうしたんじゃー!」
「時雨がまた何かやってしまったのかしら?」
「柚寧さん、ここは危険です!」
「私と大納が先頭に!」
「何があったの!?」
「あ〜杏歌様〜驚いたお顔もお美しい〜」
混乱する声の中で、春風さんだけが静かに一歩前に出た。
「歌羽。時雨に公印はもらったのか?」
「……もっ、もらいました!文書も中に入れて、あとは糊付けするだけです!」
「ここは私たちが処理しておく。お前は飛脚に文書を渡してくるんだ。開門時間内に渡さないといけないからな」
その言葉に、私はこくこくと力強く頷く。
そんな私に雲祈さんが、すっと何かを差し出した。
「歌羽さん!この文書、落ちていましたよ!」
「……あっ、ありがとうございます」
私は思わず叫んだ拍子に、文書を投げ捨てていたらしい。
そして、雲祈さんは続ける。
「歌羽さん、公儀飛脚さんの元へ行かれるんですよね?それなら、私がご案内しますよ!公儀飛脚さんとは仲良しですし、得意分野ですから!」
満面の笑みでそう言う雲祈さん。
……うっ、そうだった。
外回りから帰ってきた雲祈さんは、ここで綿花を公儀飛脚さんのところへ案内する流れだった。
午前中の出来事もあり、少し気まずさはあったけれど、雲祈さんの押しに負けて、私は案内してもらうことにした。
「……じゃあ、よろしくお願いします!」
「はい!もちろんです!」
時雨さんに、何があったのか。
──結果としては、ひどく“体調を崩した”とだけ言っておこう。
(お食事中の方には申し訳ないので、ここは割愛する)
そして私は、自分の書斎で糊付けを終え、雲祈さんとともに、公儀飛脚さんの屯所へと向かった。




