第34話 城内に響き渡る声
【第三部】推しは私が救うー終ー
──ここは、春風さんの書斎。
「最後に封に宛先を書いてっと……」
……つ、ついに完成した。
この日をずっと、心待ちにしていた。
「終わったーー!!」
私は両手を高く掲げる。
嬉しさのあまり、思わず声まで弾んでしまう。
だってだって、この文書を書き終えたということは、もう朽葉ノ国に偽文書が渡ることはないと確信できるから!!
こんなに嬉しいこと、他にないよね!
「よく頑張ったな、歌羽」
そう言って、春風さんが静かに微笑む。
「春風さん!本当にありがとうございましたー!」
それに春風さんって、教え方がすっごく分かりやすいの!
さすが、戦術担当から外交奉行にまで至った人だけある!
「あとは時雨さんに確認してもらって、交易奉行の公印を押してもらったら完了っすね!私、もらいに行ってきますー!」
「あぁ、よろしく頼む。最後に歌羽、松風からもらった二つの印が、飛脚や門番に見えるように文書を折るんだぞ」
「あいあいさー!」
「あっ、そうだ、歌羽。あいつに水を持って行ってやってくれないか。喉が渇いているだろうから」
「あいあいさー!」
私は弾む気持ちのまま、時雨さんの書斎へと向かった。
*
「ぐぉ〜……すぴー」
だよねー。まぁ、分かってたけどさ。
机に突っ伏したまま、時雨さんは眠りこけている。
「時雨さんー!公印くださいー!時雨さーん!」
何度呼びかけても、反応はない。
「……ぐぉ〜すぴー」
……なんで起きないんだ、このやろぉお!!
待って、時雨さんの交易奉行の公印がないとどうなるんだっけ?
確か、この文書って正式なものとして認められなくて、ただの紙切れになっちゃうんじゃなかったっけ!?
国と国を結ぶ約束の証。
それがなければ国の信用を失って、栄善さんの顔にも泥を塗ることになるし、交易や外交にも影響が出るんだよね!?それは何がなんでも阻止せねば!!
変な緊張が走り、私は時雨さんの肩を揺さぶった。
「時雨さーん!起きてくださいー!時雨さんー!」
「……ん……なんだ〜お〜い……」
「やっと起きたか暴れゴリラめー!!」
春風さんが言っていたあのセリフを、そのまま真似してしまう。
時雨さんの反応は分かっていたので、私はすぐに状況を簡単に説明し、公印を受け取るのを待った。
「それと、お水です。ここに置いておきますからね」
「おぉ、ありがてぇ。喉乾いてたんだ。助かったぜ、歌羽」
時雨さんは水を一気に飲み干す。
確かに、お酒の後は喉が渇くものだ。
──そのときは、何もおかしいとは思わなかった。
しばらくして、公印の押された文書が差し出され、私はそれを受け取った。
「時雨さん、ありがとうございますー!」
よし、これを印鑑が見えるように折って、この文書を挟んで……っと。
あとは糊付けすれば完成ーー!!
私は立ち上がり、その場を離れようとした。
そのときだった。
「……うっ……」
「……時雨さん?」
様子がおかしい。手で口元を押さえ、顔色も悪い。
私は思わず駆け寄る。
「時雨さん?大丈夫ですか?」
「……うっ……」
──次の瞬間。
「ぎゃーーーーーーあーー!!!!」
私の声が、城内に響き渡った。




