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第34話 城内に響き渡る声

【第三部】推しは私が救うー終ー

──ここは、春風(はるかぜ)さんの書斎。


「最後に封に宛先を書いてっと……」


……つ、ついに完成した。 

この日をずっと、心待ちにしていた。


「終わったーー!!」


私は両手を高く掲げる。

嬉しさのあまり、思わず声まで弾んでしまう。


だってだって、この文書を書き終えたということは、もう朽葉ノ国(くちばのくに)に偽文書が渡ることはないと確信できるから!!


こんなに嬉しいこと、他にないよね!


「よく頑張ったな、歌羽(うたは)


そう言って、春風さんが静かに微笑む。


「春風さん!本当にありがとうございましたー!」


それに春風さんって、教え方がすっごく分かりやすいの!

さすが、戦術担当から外交奉行にまで至った人だけある!


「あとは時雨(しぐれ)さんに確認してもらって、交易奉行の公印を押してもらったら完了っすね!私、もらいに行ってきますー!」


「あぁ、よろしく頼む。最後に歌羽、松風(しょうふう)からもらった二つの印が、飛脚や門番に見えるように文書を折るんだぞ」


「あいあいさー!」


「あっ、そうだ、歌羽。あいつに水を持って行ってやってくれないか。喉が渇いているだろうから」


「あいあいさー!」


私は弾む気持ちのまま、時雨さんの書斎へと向かった。



「ぐぉ〜……すぴー」


だよねー。まぁ、分かってたけどさ。

机に突っ伏したまま、時雨さんは眠りこけている。


「時雨さんー!公印くださいー!時雨さーん!」


何度呼びかけても、反応はない。


「……ぐぉ〜すぴー」


……なんで起きないんだ、このやろぉお!!


待って、時雨さんの交易奉行の公印がないとどうなるんだっけ?


確か、この文書って正式なものとして認められなくて、ただの紙切れになっちゃうんじゃなかったっけ!?

 

国と国を結ぶ約束の証。

それがなければ国の信用を失って、栄善(えいぜん)さんの顔にも泥を塗ることになるし、交易や外交にも影響が出るんだよね!?それは何がなんでも阻止せねば!!


変な緊張が走り、私は時雨さんの肩を揺さぶった。


「時雨さーん!起きてくださいー!時雨さんー!」


「……ん……なんだ〜お〜い……」


「やっと起きたか暴れゴリラめー!!」


春風さんが言っていたあのセリフを、そのまま真似してしまう。


時雨さんの反応は分かっていたので、私はすぐに状況を簡単に説明し、公印を受け取るのを待った。


「それと、お水です。ここに置いておきますからね」


「おぉ、ありがてぇ。喉乾いてたんだ。助かったぜ、歌羽」


時雨さんは水を一気に飲み干す。

確かに、お酒の後は喉が渇くものだ。


──そのときは、何もおかしいとは思わなかった。


しばらくして、公印の押された文書が差し出され、私はそれを受け取った。


「時雨さん、ありがとうございますー!」


よし、これを印鑑が見えるように折って、この文書を挟んで……っと。

あとはのり付けすれば完成ーー!!


私は立ち上がり、その場を離れようとした。


そのときだった。


「……うっ……」


「……時雨さん?」


様子がおかしい。手で口元を押さえ、顔色も悪い。


私は思わず駆け寄る。

   

「時雨さん?大丈夫ですか?」


「……うっ……」


──次の瞬間。


「ぎゃーーーーーーあーー!!!!」


私の声が、城内に響き渡った。

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