第28話 疑いの芽生え
【第三部】推しは私が救うー終ー
会議は着々と進み、アニメ通り、私は交易使者として独り立ちすることになった。
朽葉ノ国から届いた塩の増量に関する文書を受け、会議では追加の紐と麻袋が必要だという話が出ている。
そのため明後日の午前中に諭作さんの福紙堂へ向かい、荷まとめ用の紐を調達することになり、午後からは上司の時雨さんに教わりながら文書の作成を行う予定だ。
麻袋については、外交使者の雲祈さんが担当することになっている。
さらに、縁談を断る件も皆さんの同意を得て無事にまとまっていく。
そして──栄善さんがトワさんを再び町へ誘う、その流れまでもが、目の前で静かに進んでいく。
── アニメで見たあのやり取りが、現実になっていく。
その感覚に、私はただ興奮を抑えきれなかった。
あ〜そういえば、この間トワさんが食堂前に貼り出していた御品書きに「芋きなこ和え」って書かれてて……
そのとき、栄善さんがトワさんの口元についたきなこをそっと払っていたあの場面を思い出して、なんかもう、変にテンション上がっちゃったんだよね〜。
ははははははー!
一人でそんなふうに、にやにやしていると、柚寧さんが静かに口を開いた。
「……歌羽……あなた、大丈夫?」
それに続いて、時雨さんが呆れたように言う。
「ったく……こいつは場所は間違えるわ、会議中に厠に行くわ、急ににやにやし出すわで……世話の焼ける部下を持ったもんだぜ」
……きぃぃぃぃ!!
万里小路時雨ー!!
あんたにだけは、言われたくねぇんだー!!
「なんやかんや言って、時雨も歌羽みたいな世話の焼ける子、ほっとけないんじゃないか?」
「何言ってんだ、春風。冗談はよそでやれってんだ」
……きぃぃぃぃ!
またしても私がむきー!となっていると、大納さんがぽつりと呟いた。
「……それにしても、綿花さんという方は現れないですね」
その言葉に、蒼月さんが弾む声を上げる。
「本当だね、大納。でも、その方はとても悪い方なんですよね?現れないならこのお城も安全だということで、私は嬉しいです」
そのとき、ふと雲祈さんの様子が目に入った。
いつもの雲祈さんらしくない、神妙な表情を浮かべていた。
「交易使者だったのよね?その子」
「歌羽が来たことで、歴史が変わったのかもしれないね」
「確かに、今の交易使者は歌羽だもんな」
「きっとそうだー!おいらもそう思うぞ!」
杏歌さん、哀伝さん、七左衛門さん、団丸さんが口々にそう言う中、時雨さんが不敵な笑みを浮かべて口を開いた。
「いや、もしかしたらこのじゃじゃ馬娘が、嘘ついてるかもしれねぇぜ」
「こりゃ、時雨やめんか!」
「時雨、何を言っておる」
時雨さんの発言に、茶々蔵さんと栄善さんが制止の声を上げるが、時雨さんは構わず続けた。
「こいつが、四乃森綿花だったりしてな」
……むきー!!
怒りが一気に頂点に達した。
私だって言いたいことはある!
あのとき、アニメの中では誰も疑ってなかったけど、一番怪しいのは綿花を連れてきた、この万里小路ゴリラだ!!
絶対に化けの皮を剥がしてやる。
万里小路ゴリラめーー!!
けれど──このとき時雨さんの言葉が、後になって胸の奥に深く刺さることになるなんて、思ってもみなかったんだ。




