第26話 歪なじゃがいも
【第三部】推しは私が救うー終ー
私には、毎朝ひそかに楽しみにしていることがある。
それは──朝食に並ぶ、トワさんが剥いたじゃがいものお味噌汁!
毎日出るわけじゃないからこそ、並んでいるのを見つけた日は、ちょっとだけ嬉しくなるんだ〜。
なぜかって?
あの歪な形のじゃがいもが入っていたら当たりで、「一日、良い日になる」って言われているから!
……皆さん、知ってました?
トワさんって、実はとても料理が苦手なんです。
それでも、お城のみんなのために、一生懸命手を動かしてくれている。
そんなトワさん、やっぱり本当に素敵だよね。
同じお手伝い係のお菊さんが、優しく丁寧に教えてくれているおかげだと、トワさんは言っていた。お菊さんは穏やかで温かい方で、私も大好きなんだ〜。
「おっ、今朝はじゃがいもの味噌汁だ」
「じゃがいも占いが楽しみであるな」
食堂前に貼り出された御品書きを、嬉しそうに見ている二人。
朝の城門を守る門番の琥景さんと煌景さん。
名前にちなんで、“朝の大小組”なんて呼ばれている。
トワさんの歪なじゃがいもは、いつしか「じゃがいも占い」と呼ばれ、お城の人たちに親しまれていた。
──その始まりは、この二人。
とある日の朝食。意見がぶつかり合って言い争っていた二人は、トワさんが剥いた歪なじゃがいもを見た瞬間、思わず吹き出してしまったらしい。
そこから空気が一気にやわらいで、気づけば仲直りしていたんだって。
その朝食で、周りの人たちもそれぞれに歪なじゃがいもを見ては、「なんだか元気が出た!」なんて声が上がり始めて──
それを見た団丸さんが、こう叫んだ。
『じゃがいもが歪な形のときは“当たり”だーーー!!一日、良い日になるぞーーー!!』
それがきっかけで、「じゃがいも占い」はお城中に広まっていった。
団丸さんって、やっぱりいつも豪快だよね。
私は頭の中で、あのアニメのシーンを思い出していた。
そういえば──団丸さんの好物って、じゃがいものお味噌汁だったな。
その中で団丸さんが、『おいらの夢は、将来お嫁さんに毎日じゃがいもの味噌汁を作ってもらうことなんだ!』
なんて言ってて、哀伝さんと七左衛門さんが驚いていたっけ。
一緒に町へ出かけたときにも思ったけど、団丸さんって、あまりそういうことを深く考えてなさそうに見えて──ちゃんと自分の中の軸をしっかり持ってるよね。
そういえば──栄善さんのお母さんも料理が苦手だったんだよね。
確か、ちょっと苦かったんだっけ?
料理が苦手なところまでトワさんに似てるなんて……尊い!!
トワさんと栄善さん、この間二人で町へ出かけてたよね〜。
ぐへへへへぇ〜。
アニメで見たあのシーンを思い出しただけで、ひとりで勝手に顔がゆるむ。
そのとき、栄善さんはトワさんに、ひとつお願いをしていた。
師走の冬至──栄善さんの御誕辰祭。
その御菜を、芋きなこ和えと、トワさんが剥いたじゃがいものお味噌汁にしてほしいと。
どちらも、栄善さんにとってはトワさんの気配そのもののような、大切な献立なんだよね。
それに加えて、毎年必ず並ぶという舞茸ご飯。
香りがふわりと立つだけで、画面越しでも冬の空気がやわらかくなるような気がした。
そんなことを朝からひとりで思い出しては、勝手にテンションが上がっていた。
──だけど。
刻々と、物語は進んでいた。
「夜更けの会議」まで、あと少し。




