第25話 団丸が特別を知った日―顕在―
【第三部】推しは私が救うー終ー
そのあと、おいらたちは穏花処の近くにある雑貨屋へ向かった。
歌羽がここに来たいって言ってたからな!
店に入るとすぐ、歌羽は撫子の簪の前でぴたりと足を止めた。
そして、なぜか鼻血を出していたんだ。
だからおいらは、歌羽に手拭いを差し出してこう言った。
『歌羽は鼻血が出るほどその簪が欲しいのか?』
そうしたら歌羽は、なんか知らないけど、よろけながらもはっきりとこう言った。
『これは決して私なんかが手に入れていいものではないのです!!』
……その姿が、なんか眩しく見えた。
おいらたちを救うって真っ直ぐに言ってたときも感じたけど、歌羽は芯のあるやつなんだな。それが嬉しくて、おいらは笑っていた。
『そうか!そうなのか!がははははー!』
そのあとおいらたちは、それぞれに店内を見て回った。
木で彫られた、山茶花の形をした首飾りが目に留まる。
おいらはそれを見ながら、さっき穏花処で感じた「特別」について考えていた。
──心で感じると、格別なひとときになるんだな。特別って、なんか幸せだな。山茶花団子と山茶花は特別だ。
杏歌に教えてもらって気づいたこと。
そうだ、おいらの中の「特別」はそういうものだった。
おいらはじっと、その首飾りを見つめた。
桃色の山茶花には意味があるって、どこかで聞いた気がするぞ。
そうだ!
永遠の愛と、素直──だったよな!
おいらにとって歌羽は「特別」だ。
だから、特別である山茶花の首飾りを歌羽に贈りたくなった。
そう思ったときには、もうそれを手に取っていた。
城へと帰る途中、歌羽が手拭いをくれた。
『団丸さん、さっきは手拭いありがとうございました!鼻血で汚してしまったので、そのお礼です!』
さっきの雑貨屋で、おいらのために選んでくれたらしいぞ。
おいらは食べることが好きだから、団子の柄が染められた手拭いは、見ているだけでなんだか嬉しくなった。
おいらもさっき選んだ首飾りを歌羽に差し出した。
『歌羽においらもさっき選んだんだ!受け取ってくれ!』
歌羽はそれを見て、嬉しそうに受け取ってくれた。
おいらは渡すときに、思わず言っていた。
『おいらだと思って、肌身離さず身につけてくれ!』
だって歌羽は、おいらにとって「特別」だからな。
特別って、きっとそういうことなんだ。
歌羽がそれを付けてるのを見るのが嬉しくて、おいらは毎日大声で歌羽に確認していた。
そんなある日、歌羽が首飾りをしていないことに気づいた。
『おいらの首飾り付けてないのかー!!』
すると歌羽は言った。
『付けてますよー!!大切なものだから、傷つけないように、小袖の中に隠してるんすよーー!!』
……そうか、そうなのか。
その言葉を聞いて、おいらの中の「特別」がまた一つ増えたんだ。
山茶花と山茶花団子と──そして、「隠す」だ!
大切なものって、そうやって隠すものなんだな!がははははー!
こうして団丸の「特別」は、また一つ増えたのであった。




