第23話 ペンダント騒動
【第三部】推しは私が救うー終ー
私はここ最近、どうにも居心地の悪さを感じていた。
──というか、何なんすか最近のこの空気。
皆さんが、やたらとにやにやしながら私を見てくる。
「……」
「おい、どうなんだよ〜。おめぇらよ〜。ひっく」
……きぃーーーー!!
うっせぇんだ、この万里小路ゴリラめー!!
酔っ払った時雨さんが、にやにやしながら肘で私の腕をくいくいとつついてくる。
事の発端は、素直すぎる団丸さんだった。
団丸さんと一緒に聖地巡礼の旅へ行ったあと、団丸さんはなぜか毎日のように大声で私に聞いてきていた。
「歌羽ーー!!毎日肌身離さず付けてるかー!!」
その声が城内中に響き渡る。
──当然、周囲の耳にも入るわけで。
気づけば、皆さんがぞろぞろと顔を出していた。
「何を毎日肌身離さず付けているのですか?」
「私もとても気になります!」
大納さんと蒼月さんの言葉に、団丸さんは満面の笑みで答えた。
「おう!歌羽に山茶花の形をした首飾りを贈ったんだ!」
その一言で、場の空気がぴたりと止まる。
──え?
みたいな顔で、皆さんが一斉にこちらを見る。
「食べ物と訓練のことしか頭にない、あの団丸が?」
そんな空気が広がる中、団丸さんはまったく気にした様子もなく、さらに続けた。
「桃色の山茶花の首飾りを贈ったんだぞ!花言葉は、永遠の愛と素直なんだ!だから毎日おいらだと思って、肌身離さず身につけてくれって歌羽に渡したんだ!がははははー!」
……。
…………。
……ぶーーーっ!!
団丸さん、何言ってんすかーー!!
こんな公共の場でーー!!
そんな私の心境も知らず、団丸さんは毎日、小袖の上で揺れているペンダントを見ては、満足した様子でにこにこしていた。
団丸さんのそんな嬉しそうな笑顔を見たら……何も言えないっすよ。
(いやほんと、何なんすかこの空気……)
そんな妙な空気が、ずっと続いている。
特に厄介なのが、私の上司である交易奉行の万里小路時雨だ。
哀伝さんと外回りの任務に就いている私は、その報告書提出のたびに、嫌でも時雨さんとは顔を合わせなければいけない。
──そのたびに。
時雨さんは酔っ払ったおやじみたいに、にやにやしながら聞いてくる。
「おい、永遠の愛だってよ〜。どうなんだよ歌羽〜。その山茶花の首飾り、毎日付けてるってことはそういうことなのか〜。げぷっ」
……。
むきーーぃ!!!
なんて毎回絡まれるのが、しつこいわ恥ずかしいわで、私は思わず小袖の襟の中にペンダントをしまい込んだ。
げぷっ、じゃないんだよこのやろーー!!
仕事中に酒飲むなーー!!
そうしたら、ペンダントを付けてないとでも思ったのか、団丸さんが勢いよく声を上げた。
「どうしたんだ歌羽ーー!!おいらの首飾り付けてないのかー!!おいらは歌羽からもらった手拭い、毎日ちゃんと洗って持ってるぞー!!」
……およよよよーー!!
突然の大声に、思わず目が泳ぐ。
「付けてますよー!!大切なものだから、傷つけないように、小袖の中に隠してるんすよーー!!」
そう言うと団丸さんは、一瞬きょとんとしたあと、すぐにいつものように笑顔になった。
「そうか!そうなのか!がははははー!」
……ふぅ。
団丸さんが素直な方でよかったぜ……
こうして、団丸さんに手拭いを渡したことも含めて、また皆さんににやにやされるネタは増えたけど──ペンダントの確認騒ぎはひとまず落ち着いて。
私たちは、いつもの日常へと戻っていった。




