第22話 聖地巡礼の旅―山茶花の贈り物―
【第三部】推しは私が救うー終ー
聖地巡礼の旅を終えた私は、大満足のままお城へと帰っていた。
夕暮れの風が、今日の余韻をそっと撫でていく。
「団丸さん、今日は本当にありがとうございました!おかげでとても幸せです!」
「そうか!歌羽が幸せなら、おいらも嬉しいぞ!」
そう言って、にこっと笑う団丸さん。
その笑顔に、私はあるものを差し出した。
「団丸さん、さっきは手拭いありがとうございました!鼻血で汚してしまったので、そのお礼です!」
私が差し出したのは、先ほど雑貨屋さんで選んだ手拭いだった。
白地の布に、三つ並んだお団子の図案が静かに染められている。
飾り気はないが、その素朴な形がかえって愛嬌を感じさせた。
実はさっき、こっそり買っておいたんだ〜。
団丸さんは見た目こそ豪快で元気いっぱいなのに、手拭いはいつもちゃんと持っている。
だから、お団子の絵がいいかなって思った。
食べることが好きな団丸さんなら、こういう柄もきっと気に入る気がして。
「うまそうな団子の手拭いだ!おいら嬉しいぞ!歌羽ありがとな!」
満面の笑みで素直にそう言ってくれる団丸さんに、私もつられて思いっきり嬉しくなった。
またしても、トワさんの言葉を思い出す。
『プレゼントを渡したとき、相手がどんな顔をするのかを思い浮かべながら、品物やラッピングを選ぶ時間がすごく好きだった』
あ〜分かる!分かりますよトワさん!
こういうことだったんですね!
すると、今度は団丸さんが私に何かを差し出した。
「歌羽においらもさっき選んだんだ!受け取ってくれ!」
──えっ?
団丸さんから?
思わず目を瞬かせる。
団丸さんが誰かに贈り物をするなんて、ちょっと意外で私はびっくりした。
そっと包みを受け取り、開いてみる。
中に入っていたのは、しっかりとした木でできた山茶花のペンダントだった。
淡い桃色の山茶花が彫られたそれは、身につけるとちょうど胸元あたりに小さく花が咲くように見える。
「……わぁ。団丸さん、山茶花のペンダント可愛いっすね!ありがとうございます!」
「歌羽の世界では、ぺんだんとって言うんだな!歌羽が喜んでくれて、おいら嬉しいぞ!」
そう言ったあと、団丸さんは何の迷いもなく続けた。
「山茶花の桃色の花言葉は、永遠の愛と素直なんだ!おいらだと思って、肌身離さず身につけてくれ!がははははー!」
……およよよよよーー!!!!
団丸さん、それどういう意味で言ってんすかー!?
えっ、意味分かってますぅ!?(失礼)
……ってか、花言葉なんて知ってたんすか!?(失礼すぎ)
そんなことを思いながら、屈託のない笑顔を向ける団丸さんへ視線を落とす。
その笑顔を見て、ふと思った。
意外だと思ってたけど、私が知らなかっただけで──こういうの、ちゃんと団丸さんらしいのかもしれない。
桃色の山茶花。
その花言葉は「永遠の愛」と「素直」。
真っ直ぐで、感じたことを素直に言葉にする団丸さんにすごくぴったりだ。
そう思ったら、この山茶花のペンダントも、なんだか自然に団丸さんらしさそのものみたいに見えてきた。
「肌身離さず、大切に付けますね!」
「おう!そうしてくれ!がははははー!」
その笑い声を合図に、私たちはお城への道を駆け出した。
心地よい風に吹かれながら思う。
今日はトワぬいと栄善ぬいを抱えながら、きっと幸せな夢を見るに違いない──と。




