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第21話 聖地巡礼の旅―撫子の簪―

【第三部】推しは私が救うー終ー

山茶花(さざんか)を眺めながらお団子を食べていると、ふと団丸(だんまる)さんが言った。


歌羽(うたは)は流れ星に願ってここに来たんだよな!かーちゃんたちは心配してないのか?」


「ん?おかん?」


……団丸さんに言われて、ふと気づく。

この瞬間まで、私の頭の中は完全に推しに会えた喜びでいっぱいで、現実のことなんてすっかり忘れていた。


ごめんよ、おかん!おとん!

推し仲間のみんなのことも、ちゃんと大好きだからね!


「まぁ、大丈夫っす!!うちの家族、能天気なんで!!」


思わずそう言ってから、「あ、これちょっと失礼だったかも」と心の中で慌てる。


許してね、おかん、おとん!!


「そうなのか!歌羽の家族は明るい家族なんだな!がははははー!」


「そうなんっすよ!はははははー!」


団丸さんの言葉に乗っかるように、私もつられて豪快に笑った。


そのあとも私たちは、たわいもない話をしながら、穏花処おんかどころでのひとときを過ごした。


「いや〜美味しかったですね!山茶花もすごく綺麗だし、晩秋の穏花処って最高っすね!」


「おう、そうだな!歌羽は行きたいところ、全部行けたのか?」 

 

団丸さんの問いかけに、私は弾む声で応えた。


「団丸さん!私ですね、もう一つ行きたい場所があるんです!」


「そうなのか!なら、その場所も行くぞ!歌羽の行きたいところ全部だ!おいらに続けー!」


「えいえいさー!」



……うっひょ〜〜!!!


見つけちゃった!見つけちゃった!


何を見つけたのか知りたいですか?


──それは


栄善(えいぜん)さんがトワさんに贈った撫子(なでしこ)(かんざし)ー!


そう、ここは穏花処のすぐ近くにある雑貨屋さん。


栄善さんは、穏花処でお団子を買っている途中、ここに立ち寄って、トワさんへの簪を内緒で選んでいたんだよね。


しかも、品選びが得意じゃないのに、それでもどうしても想いを伝えたくて、この簪を選んだなんて……


撫子の花言葉は「純粋な愛」。


そして、簪を贈る意味は「あなたを想っています」。


……あ〜、想像しただけで鼻血が出そう!!


一人で興奮している私に、団丸さんがきょとんとしながら手拭いを差し出した。


「歌羽は鼻血が出るほどその簪が欲しいのか?」


ずるっと思わずよろけそうになりながら、団丸さんから差し出された手拭いを受け取る。


「団丸さん、手拭いありがとうございます!」


鼻血を抑えつつ、私は力強く言った。


「これは決して私なんかが手に入れていいものではないのです!!」


だってこれは、トワさんと栄善さんの愛の証──!


そう言うと、団丸さんは何かを納得したように大きくうなずき、豪快に笑い出した。


「そうか!そうなのか!がははははー!」


「そうなんっすよ!はははははー!」


そうして私たちはそのあとも、それぞれに店内を見て回り、やがて雑貨屋を後にした。


穏花処の近くを吹く風が、どこか甘く感じられた。

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