第16話 晩秋到来!てんこ盛りな日々
【第三部】推しは私が救うー終ー
なんやかんやで、晩秋がやってきた。
そして……ここ最近は、びっくりするくらい忙しかった。
もうね、あたい、目ん玉飛び出るかと思ったくらい!
そりゃ杏歌さんも、なかなかトワさんに会いに行けなかったわけだ。
ほら、身分制度の廃止に向けた新たな改革についての会議や調整でしょ〜。
冬に向けての備蓄のやり取りもあるし、対縁の儀の準備も進んでるし、それに……我が推し・栄善さんの御誕辰祭の段取りまで!
もうね、行事関連の準備と会議で、てんこ盛りなわけですよ!
ははははは。
しかし皆さん、侮っちゃいけませんよ。
このオタクの神(自己満)・天音歌羽を。
忙しい中でも、推しに会いに行くのがオタク。
私はゴリラの目をかいくぐり、トワさんに会いに行っていた。
「トワさんー!今夜の夕食は何ですか?トワさんの夕食を楽しみに頑張りますからねー!」
「ふふふ。ありがとう歌羽ちゃん。だけど今、みんな忙しそうだけどここに来ちゃって大丈夫なの?」
「全然大丈夫っすよー!それに癒しがないと頑張れませんからー!」
──なんて、呑気なことを言っていると。
ごっ!!
頭上から拳が降ってきた。
「……なぁ〜にが、全然大丈夫だ」
「……いったぁーー!なにすんだゴリラー!」
「てめぇ、上司に向かってその口の利き方はなんだ!おめぇは早く報告書まとめねぇか!ちょこまかと抜け出しやがって」
ちっ、出たな万里小路時雨。
通称:ゴリラ。
「トワさん〜この方は私の上司で、万里小路時雨。通称:ゴリラです。態度も図体もでかいですが、実は繊細な一面も持ち合わせている意外な人です。仲良くしてやってください」
私がそう言うと、トワさんは可愛らしくくすっと笑った。
時雨さんは「……てんめぇ……なんてこと言いやがる……」とぼそっと言っていたけど、そのあと何故かもじもじし始めて。
「……おっ、おう、トワ。よろしくな」
「ふふふっ。こちらこそよろしくお願いします」
そうして、小さなトワさんと握手をした。
「……ぎゃーーーーー!!!!あたいの、あたいの……推しぃぃ!!ぐぇっ!!」
“推し”と言いかけた瞬間、時雨さんに首根っこを掴まれ、そのまま走り去られる。
「てんめぇ、哀伝たちに言うなって言われてんだろうが!!」
「だってぇぇぇ……!」
その様子を見て、お菊さんがふふっと笑った。
「歌羽ちゃんは、トワちゃんのことが本当に大好きなのね」
だから私は去り際に叫んだ。
「なぁに言ってるんすか!お菊さんのことも大好きに決まってるじゃないっすか!」
その言葉に、お菊さんはとても嬉しそうで、あとでトワさんにそのことを楽しそうに話していたらしい。
──もうこの世界の人たち、みんな尊い!
私はトワさんとまだ絡んでいない皆さんを、時雨さんのように紹介していった。
トワさんたちが嬉しそうで楽しそうな姿を見ていると、胸の奥がじんわりと温かくなった。
……あっ、思い出すだけで涙と鼻水が。
「お!どうしたんだ歌羽!?腹でも痛いのか!?それとも疲れたのか!?」
「違うっすよ団丸さん!はははははー。この天音歌羽の体力をみくびってもらっちゃ困ります。うらぁーー!」
「そうか!さすが歌羽だな!おいらも負けないぞー!がははははー!」
——あっ、急にすみません。
今、団丸さんと深夜の城内で絶賛訓練中です。
このお城、広いから走り甲斐があるんだよね〜。
「あぁ〜夜風が気持ちいいっすね〜。明日も休みだし最高な気分ですよ〜」
私がそう言うと、団丸さんが目を輝かせて言った。
「歌羽は明日休みなのか?おいらもだ!じゃあ明日、町へ出て走り回ろう!がははははー!」
「ええー!まぢっすか!行きたいっす、行きたいっす!」
私のあまりの勢いに、団丸さんはきょとんとしたまま、素直に尋ねた。
「歌羽は町に行きたかったのか?どこか行きたいところがあるのか?」
「ありますとも!ありますとも!」
私の返答に、団丸さんは豪快な笑顔を浮かべ、嬉しそうに言った。
「そうなのか!それなら明日は歌羽の行きたいところに行こう!」
「本当ですか!やったーー!」
「よし、もう一周走るぞー!おいらに続けー!」
「うっしゃあ〜!負けませんよ〜!」
私は嬉しさのあまり、全速力で団丸さんの後を追った。
「歌羽そんなに明日が楽しみなのか!がははははー!」
「はははははー!楽しみに決まってるじゃないですかー!」
静かな城内に、私と団丸さんの笑い声が響く。
明日が楽しみで仕方がなかった。
──だって。
私の夢が叶うんだから。




