第15話 おまけの話―時雨が起きたその後―
【第三部】推しは私が救うー終ー
あの後、時雨さんが目を覚ました。
私は任務の内容を一通り、口頭で報告する。
そして、もうひとつ──報告すべきことがある。
それは、煎承さんのお店で、時雨さんの愚痴をこぼしていた件だった。
私は、あのお店で愚痴を言った場合、必ず時雨さんにも報告している。
……え?なんでそんなことまで報告してるのかって?
それはですね、私が陰で悪口を言われるのが嫌だからです!!
だから私は、逐一報告しているのだ。
すると毎回、時雨さんはこう言う。
「てめぇはいちいちそんな報告しなくていいってんだよー!」
「なんでですかー!?人の悪口って良くないじゃないですかー!!だから報告してるんっすよー!!」
「てめぇはどんな思考回路してんだ、本当によぉー!」
そんなやり取りをしていると、書斎の襖が勢いよく開いた。
現れたのは柚寧さんだった。
柚寧さんはいつも凛とした表情をしているが、真っ直ぐに時雨さんへ向かう姿は、いつもよりわずかに迫力があった。
柚寧さんは、時雨さんに告げた。
「あなた、また春風の大切にしているお酒を飲んだそうね?お酒に強くないのだから、ほどほどにすると私と約束したのではなくて?」
右手を腰に添え、堂々と告げるその姿は、思わず見惚れるほど凛としていた。
「それに、春風が報告書の確認をしてくれたらしいじゃない?約束が守れない、なんてことはないわよね?」
その言葉に、時雨さんは小さく肩をすくめ、身を縮めた。
「……俺ぁ……その……」
柚寧さんに、完全にたじたじの時雨さん。
はっは〜ん。
時雨さんの弱点は柚寧さん、ってわけか。
そんなことを考えながら、私はにやにやと様子を眺めていた。
「歌羽、ごめんなさいね。あなたに迷惑をかけてしまって。何かあれば、奉行である私や春風が支えるから遠慮なく言ってちょうだい」
……はぅ!柚寧さん!
かっこいいっす!憧れっす!
柚寧さんが、時雨さんに対してきっぱりと物申すその姿を見て、ふと思った。
雲祈さんが初めて杏歌さんに会ったとき、哀伝さんに物申す杏歌さんの姿に憧れた理由が、今になって少し分かった気がした。
「柚寧さん、ありがとうございます!時雨さんが酔っ払った際には、逐一報告させていただきます!」
「そうね。それがいいかもしれないわね」
「……歌羽てめぇは、余計なこと増やすんじゃねぇー!」
こうして私の報告すべきことは、また一つ増えたのであった。




