第12話 蓮橙くんの小さな約束
【第三部】推しは私が救うー終ー
無事に任務を終えた私たちは、煎承さんのお店へ向かう前に、諭作さんへ挨拶をする。
「諭作さん、今日もありがとうございました!またよろしくお願いします!」
「いえいえ、いつでもお力になりますぞ」
「諭作〜、いつも本当に助かるよ〜」
そう言って笑い合う私たちに、諭作さんがふと何かを思い出したように口を開いた。
「そういえば、もうすぐ晩秋ですな。その頃には、山茶花団子をご用意してお待ちしておりますので、どうぞ楽しみにしていてください」
「わーい!山茶花団子だ〜!楽しみ〜!」
「ぷはははは〜!歌羽、素直すぎ〜!」
「ほほっ。喜んでいただけて何よりですぞ」
諭作さんの穏やかな笑い声に見送られながら、私たちは満ち足りた気持ちのまま歩き出し、福紙堂を後にした。
*
「だっだんだんまる〜♪おいらはだんまる〜♪体力ゴリラ〜だんまる〜♪」
「ぷはははは〜!歌羽、団丸の歌も知ってるんだね!確かにその歌、なかなか頭から離れないよね〜」
「そうなんっすよ〜。気づいたら口ずさんじゃうんですよね〜!」
そんなたわいもない会話を交わしていると、目の前に小さな男の子が現れた。
……はぅ!こっ、この子は!!
アニメで少しだけ登場する、町の男の子・蓮橙くん。
かっ……可愛い〜♡萌え〜♡
「哀伝しゃま〜、お姉しゃん、こんにちは!」
「蓮橙、ちゃんと挨拶できて偉いね〜」
そう言って哀伝さんはしゃがみ込み、蓮橙くんと視線を合わせると、優しく頭を撫でた。
蓮橙くんは嬉しそうに笑う。
「こんにちはー!蓮橙くん!ここで何してるの?」
そう声をかけると、蓮橙くんはにこっと笑って、小さな手を差し出してきた。
その手にあったのは、さっき諭作さんのお店で見た──新しく仕入れられた文具だった。
「これ、諭作しゃんのお店で初めて見たんだよ。お母しゃんが買ってくれたの」
満面の笑みでそう話す蓮橙くんの姿に、町を守る役目に就く者として、どこか心に残るものを感じた。
哀伝さんも、柔らかく微笑む。
「そうなんだね。よかったね、蓮橙。大切に使うんだよ」
「うん!たいしぇつにつかうね!」
そして蓮橙くんは、嬉しそうに続けた。
「諭作しゃんがね、もうすぐ寒くなったら山茶花団子を用意して待ってるから、楽しみにしててねって言ってたんだよ。ぼく、しゅごく楽しみ!」
その言葉が嬉しかったのか、蓮橙くんは文具をぎゅっと抱え、小さな体でぴょんぴょんと跳ねていた。
……ぐはっ!あまりの可愛さに、キューピッドの矢が胸を貫いたぜ……
「……歌羽大丈夫?今度は鼻血出てるよ?」
そんな声が遠くに聞こえる。
……いやぁ、分かりますよ、諭作さん。
この笑顔見せられたら、配りたくもなりますよね。
諭作さんは、晩秋から冬にかけて町で発売される山茶花団子を、お城の人たちや町の人たちに振る舞うのが好きで、みんなが喜んでくれるのが何より嬉しいんだって。
蓮橙くんは、このあとのアニメの展開では、約束通り諭作さんから山茶花団子をもらうことになるんだけど、こんなふうに、満面の笑みで喜んでたんだよね〜。
……そりゃあ、こんなに喜ばれたら、何個でもあげたくなっちゃうよね。
蓮橙くんに癒された私たちは、口元を緩めながら、煎承さんのお店へと歩いていった。




