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第12話 蓮橙くんの小さな約束

【第三部】推しは私が救うー終ー

無事に任務を終えた私たちは、煎承せんしょうさんのお店へ向かう前に、諭作ゆさくさんへ挨拶をする。


「諭作さん、今日もありがとうございました!またよろしくお願いします!」


「いえいえ、いつでもお力になりますぞ」


「諭作〜、いつも本当に助かるよ〜」


そう言って笑い合う私たちに、諭作さんがふと何かを思い出したように口を開いた。


「そういえば、もうすぐ晩秋ですな。その頃には、山茶花団子さざんかだんごをご用意してお待ちしておりますので、どうぞ楽しみにしていてください」


「わーい!山茶花団子だ〜!楽しみ〜!」

「ぷはははは〜!歌羽(うたは)、素直すぎ〜!」

「ほほっ。喜んでいただけて何よりですぞ」


諭作さんの穏やかな笑い声に見送られながら、私たちは満ち足りた気持ちのまま歩き出し、福紙堂(ふくしどう)を後にした。



「だっだんだんまる〜♪おいらはだんまる〜♪体力ゴリラ〜だんまる〜♪」


「ぷはははは〜!歌羽、団丸(だんまる)の歌も知ってるんだね!確かにその歌、なかなか頭から離れないよね〜」


「そうなんっすよ〜。気づいたら口ずさんじゃうんですよね〜!」


そんなたわいもない会話を交わしていると、目の前に小さな男の子が現れた。


……はぅ!こっ、この子は!!


アニメで少しだけ登場する、町の男の子・蓮橙れんだいくん。


かっ……可愛い〜♡萌え〜♡


哀伝(あいでん)しゃま〜、お姉しゃん、こんにちは!」


蓮橙れんだい、ちゃんと挨拶できて偉いね〜」


そう言って哀伝さんはしゃがみ込み、蓮橙れんだいくんと視線を合わせると、優しく頭を撫でた。


蓮橙れんだいくんは嬉しそうに笑う。


「こんにちはー!蓮橙れんだいくん!ここで何してるの?」


そう声をかけると、蓮橙れんだいくんはにこっと笑って、小さな手を差し出してきた。


その手にあったのは、さっき諭作さんのお店で見た──新しく仕入れられた文具だった。


「これ、諭作しゃんのお店で初めて見たんだよ。お母しゃんが買ってくれたの」


満面の笑みでそう話す蓮橙れんだいくんの姿に、町を守る役目に就く者として、どこか心に残るものを感じた。


哀伝さんも、柔らかく微笑む。


「そうなんだね。よかったね、蓮橙れんだい。大切に使うんだよ」


「うん!たいしぇつにつかうね!」


そして蓮橙れんだいくんは、嬉しそうに続けた。


「諭作しゃんがね、もうすぐ寒くなったら山茶花団子を用意して待ってるから、楽しみにしててねって言ってたんだよ。ぼく、しゅごく楽しみ!」


その言葉が嬉しかったのか、蓮橙れんだいくんは文具をぎゅっと抱え、小さな体でぴょんぴょんと跳ねていた。


……ぐはっ!あまりの可愛さに、キューピッドの矢が胸を貫いたぜ……


「……歌羽大丈夫?今度は鼻血出てるよ?」


そんな声が遠くに聞こえる。


……いやぁ、分かりますよ、諭作さん。

この笑顔見せられたら、配りたくもなりますよね。


諭作さんは、晩秋から冬にかけて町で発売される山茶花団子を、お城の人たちや町の人たちに振る舞うのが好きで、みんなが喜んでくれるのが何より嬉しいんだって。


蓮橙れんだいくんは、このあとのアニメの展開では、約束通り諭作さんから山茶花団子をもらうことになるんだけど、こんなふうに、満面の笑みで喜んでたんだよね〜。


……そりゃあ、こんなに喜ばれたら、何個でもあげたくなっちゃうよね。


蓮橙れんだいくんに癒された私たちは、口元を緩めながら、煎承さんのお店へと歩いていった。

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