第10話 嘘つき英雄!?―福紙堂へ向かう途中で―
【第三部】推しは私が救うー終ー
私は福紙堂へ向かう途中、先ほど思い出した、哀伝さんが栄善さんに「英雄になれる」と言って町へ連れ出した騒動について、哀伝さんに尋ねてみた。
「哀伝さん、なんで昔、栄善さんに『こっそり町へ抜け出した人は英雄になれる』なんて言ったんっすか?」
「ええ〜?歌羽、僕が栄善に嘘ついたって思ってるの?英雄って、そういうもんじゃん」
悪びれる様子もなく、さらっと言ってのける哀伝さん。
……なんすか!?それ!?
さすがの私でも、よく分かんねぇよ、哀伝さんの思考回路!!
「だけど栄善って、素直すぎるよね〜。ぷはははは〜」
そう言いながら、両手を頭の後ろで組み、無邪気に笑う哀伝さん。
その横顔には、どこか懐かしむような、やわらかな笑みが浮かんでいた。
まぁ、栄善さんも哀伝さんに誘われたとき、「とても輝いて見えた」って言ってたし──きっと、それはそれでいい思い出なんだろうね。
推しが「幸せ」それが一番!
それにしても信じられないよね。
まさかあの栄善さんが、初めは哀伝さんと杏歌さんに心を閉ざしていたなんて。
栄善さんは、このお城の跡取りだった蛍火さんが亡くなったあと、このお城に迎えられた。
哀伝さんと杏歌さんは、代々このお城に仕える家系だったから、身分制度の中で苦しい思いをして育ってきた栄善さんは、当初二人に嫌悪感を抱いていたと言っていた。
……だけど、そうだよね。
栄善さんの家系は、とても貧しかった。
お父さんは家族を養いきれず、栄善さんとお母さんの元を去っていった。
その後もお母さんは、貧しいながらも栄善さんを必死に育てていた。
けれどそのお母さんは、不治の病を抱えていることを隠したまま、静かにこの世を去ったという。
なかなか距離が縮まらなかった三人だったけれど、ある日、しきたりに苦しみ悩む杏歌さんの姿を見て、栄善さんの考えは少しずつ変わっていく。
そして次第に知っていく。
お城の人たちもそれぞれ事情を抱え、同じように苦しみながら生きていることを。
やがて栄善さんは、この国の人々もお城に生きる人々も、皆が自由に生きられる未来を望むようになっていった。
そうして二人と打ち解けたことで、いや、打ち解けすぎたことで、後に「やんちゃ坊主」とまで呼ばれるようになっていった。
アニメでそのことを知ったときは、もう色々と信じられなくて大号泣した。
次回予告からして、かなり意味深だったし。
あぁ〜、今も泣きそう〜。
「あ〜あ〜うぅー……!!」
「歌羽、泣きながら鼻水垂れてるよ?」
「……うぅーー!!」
哀伝さんは笑い、私は泣きながら、福紙堂へと歩いていく。




