表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
道士の私が仙女になれない理由〜後宮が三食昼寝付きって本当?〜  作者: 白雲八鈴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/86

第84話 貴方は誰?

「無意識下の刷り込みかなぁ。例えば仙桃を食べてはならないとか?」


 私の言葉に琅宋(ろうそう)の肩がビクッと揺れる。

 これは直接的に言われていたことかな。


「呪いっていうと大げさだけど、幼い頃に言われた母親の言葉って、案外大きくなっても縛られるものでね。行動を制限してしまうこともあるんだよ」


 皇帝の母親を悪く言うと、私が悪になってしまうからね。

 当たり障りのないことを口にする。


 でもこれも嘘じゃない。


「言われると確かに、これはしてはいけませんと、言われたと時々思い出すことがありますね」


 管理官は納得してくれたらしい。

 父親よりも母親と過ごす時間が長いからか、言葉が呪いになっていることがある。


 ただ琅宋(ろうそう)は、それだけじゃない呪いが複雑に絡み合っていて、よくわからなかったりする。


「それじゃ、私は帰っていいかな?」


 腰を浮かそうとしたけど、琅宋(ろうそう)が私を捕まえているので動けない。

 手を離してほしい。


「母を殭屍(キョンシー)にした者は誰だ?」

「さぁ? 術の解除が強制的にされてしまったので、もうわからないね」

「何か痕跡があったのではないのか?」


 うーん? なんだろう? また変な感じで呪いが発動している。

 母親という言葉に反応しているようだ。


「身体が灰になってしまったから、わからない。だから衣服だけでも持ってきたのだけど」


 じーっと琅宋(ろうそう)を観察する。

 殭屍(キョンシー)が身につけていた衣服を琅宋が(ろうそう)手に取った。


 すると、衣服から煙が上がったと思えば、炎が立ち昇った。


「陛下!」


 慌てて管理官が、琅宋ろうそうの手から燃えている布を奪い取り、床に叩きつけて、足で踏んで火を消そうとしている。


 私は一つの種を取り出して床に投げ飛ばした。


「地の脈により湧く清き水」


 種がある場所から波紋が広がっていく。


「広がりし緑の()に映えし美しき荷花(かか)


 草原が水面のように揺らいでいく中、丸い蓮の葉が水面を満たしていき、ピンク色の花が浮かんでくる。


「邪のモノに慈悲を与えるべく菡萏(かんたん)に包まよ。さすれば、花は根に戻り、悪しき炎は消滅せん」


 水につかった衣服だったものは、水の中に溶けるように消えてしまった。


 これは少々危険かもしれない。

 私は引いていく水から視線を外さない琅宋(ろうそう)を見る。


琅宋(ろうそう)


 名を呼ぶ私に視線を移す金色の瞳。

 その瞳の瞳孔は縦に伸びていた。


「私たちの血の力は人が持つには大きすぎる。なので、先に肉体の限界がくる。だからと言って力に呑まれてはいけない」


 私はそう言って、右手で琅宋(ろうそう)の左目を隠した。


「で、貴方は誰?」


 やはり右目の虹彩が濁っている。

 あまり厄介事には関わりたくないけど、霍良になんとかしろと言われているし、結局これをなんとかしない限り、私はここから解放されないのだろう。


「『さて、誰だと思う?』」


 琅宋(ろうそう)と別人の声が合わさって聞こえてきた。

 管理官の息を呑む音が、静かな室内に異様に響き渡る。


「わからないから聞いているのだけど?」

「『そうかわからぬか』」


 琅宋(ろうそう)らしくなくカッカッカッカッと笑う声が耳障りに聞こえてきた。


 母親の死を認識した途端にこれか。

 この術は外法に思える。

 ということは皇帝の側に、この外法を使えるものがいるということだ。


「教えてくれないのならいいよ。引っ張り出すだけだから」

「『これは時期尚早であったか』」


 すると、琅宋(ろうそう)の瞳の濁りが消えた。


 瞬きを繰り返す金色の瞳。


「黎明?」

「はぁ……本当に厄介。ナニコレって感じ」


 私は琅宋(ろうそう)から離れて、長椅子に背を預けてうなだれる。


 これか。もしかして、琅宋(ろうそう)の中にいる存在があるから、炎駒(えんく)は放置していたのか?


 いや、そもそも渾敦(こんとん)である炎駒(えんく)にとっては、些細なことなのかもしれない。


「霍道士。今のはいったい何が起こったというのですか?」


 管理官が聞いてきた。

 あ、見られていた。これは口止めしておかないといけないね。


「口外禁止だよ」

「それは重々承知しております」

「まぁ、わからないのだけどね。厄介な外法がかけられている感じ」


 少ししか話をしていないけど、琅宋(ろうそう)の中にいたモノは男性で、自分の存在に声だけで認識できるだろうという自負があった。


 あと、生きた年月を感じる口調と態度。

 老人?

 まぁ、ここまでのことを考えると、当てがないこともない。


「やっぱり今日は帰るよ。ちょっと行きたいところができたから」


 私は立ち上がって、部屋を出ていこうとすると、管理官の人が立ちはだかってきた。


「このような状況でお帰りになれると思っているのですか?」

「私の依頼者は芙蓉様。皇帝じゃない」


 私は芙蓉様からもらった通行許可の札を見せた。


「そもそも後宮の問題を解決することが私の仕事で、皇帝のことは含まれていないからね」


 そう言って、私は部屋を出ていったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ