第81話 外法の術
「妖魔の骨だな」
「え? 何のために?」
ここで妖魔を飼っていたってこと?
「知らん」
まぁ、それはそうだ。
「ただ、何かの実験を行っていたのだろう。蠱毒に近い感じがする」
蠱毒。確かに狭い空間に妖魔を詰めて互いに食わせる。
生き残ったモノを核として、呪いに使用する外法。
もし、この一つ一つの牢が蠱毒を作り出していたとすれば、その数は尋常じゃない。
だけど、納得出来る私もいる。
高家の敷地全てを蠱毒の呪の場にしていた異常さからみれば、これもありうるだろうと。
「でもここは二十年ほど前に死んだ高美人の宮だ。この感じだと少し前まで使われていた感じがする」
「使っていたのだろう?幽霊騒ぎや謎の病を発症させて人を遠ざけてな」
確かに人知れず、このような場所は中々作れない。それも後宮だから、普通の人の目には絶対に止まらない。
立地からいっても好条件ということだ。
しかしそうなってくると、誰かという話になってくる。高家の生き残りと言いたいが、家として存続できなければ意味がないのではないのか。
高家の地位を奪ったモノと言えば霍家となってくる。
しかし霍家が皇帝を陥れる理由はないはずだ。
芙蓉様の息子が皇帝に立ち、その後孫の琅宋が皇帝だ。皇妃はいないが姜昭儀を妃として後宮に送り込んでいる。
あれ? なぜ皇妃ではなかったのだろう?
現状では霍家が皇妃を立ててもおかしくは無いと思うのだけど、政治のことは流石にわからないな。
うーん?
「まぁ、先代の皇帝の死は、この蠱毒が絡んでいてもおかしくはないだろうね」
先帝を守ったという武官が切ったヘビもどきも蠱毒の一種だったのかもしれない。
これも予想でしかない
「でもさぁ。結局、何がしたいのかさっぱりだよね?」
白の言う通り蠱毒の核をここで作っていたとしてだ。こんなに必要なのかということだ。
あと実験していたのではとも白が予想していたけれど、妖魔を実験に使う意図が見えてこない。
「それにさぁ、骨の形が歪なのが気になるよね。まぁ妖魔の骨なんて見る機会なんてないのだけど」
頭が二つや三つある妖魔もいるし、足が六本ある妖魔もいるから、このねじれているような骨が正常だと言われれば、そうなのかと言わざる得ない。
「外法では嵌合体を作る者もいるから、それをやっていたのではと俺は思っている」
嵌合体かぁ。一つの肉体に二種以上の生体を組み合わせたモノだよね。
「ん? そういえば、猫鬼の顔をして身体が女性のモノがいたよね?それを作っていた可能性が?」
「無きにしもあらずだ」
言われてみれば、猫鬼は猫の姿をしているのが一般的だ。女性の身体を持つことは普通はありえない。
「うわぁ。高家、えげつない」
「さて、高家とは限らないのではないのか?」
「え?」
「俺は人のことなどわからぬが、ここ最近再び事が起きだしたということは、高家の可能性は低いと思ってしまうのだが」
確かに、赤子の鳴き声を聞いて倒れたという話がでたのは、最近の話だと聞いた。
二十年前とかの話ではないのだ。
でも先王が亡くなったのは三年前なんだよね?ヘビの事件が起きた半年後の夏に亡くなった。
先王を守った武官が死んだのは今年に入ってからの話だ。
その前となると、かなりの年月の間が空いてしまっている。
同じ人物が関わっていると考えるからややこしいのではないのか?
同じようなことが起きているが、全く別の者が関わっているのでは?
二十年前の事件は王子や妃を狙ったものだった。いわゆる後継者争いだったと考えられる。
だから、身ごもったばかりの高美人に疑いの目が向けられた。
だが、三年前の事件は皇帝を狙ったものだった。これは皇帝の座を狙ったものだと解釈できるが、皇帝の子は琅宋だけなので、目的としては否定される。
それに琅宋自身も呪われている。
これは皇帝という存在を排除したい者の仕業と考えていいのでは?
下剋上的な?
どちらにしろ、二十年前にことを起こした者と、現在皇帝を排除しようとしている者は違うと言えるだろう。
だからと言って、誰かというところにたどり着けないのだけどね。
「そろそろ外に出る?」
「そうだな、一周を回って代わり映えしないのを確認したからいいだろう」
結局何も結論がでないまま、私は建物の外に向って行ったのだった。




