第77話 捕まるって意味がわからない
「ちょっと、ここで何処かに行こうとしないでよ」
私は、怪しい札を渡して立ち去ろうとする炎駒の袖を引っ張って引き止める。
こんなところで置いていかれると……私はそのまま貸家に帰るだけ。あ、帰ってもいいかもしれない。
すると、私の手が払われてしまった。
そこにいる門兵にだ。
「無礼者!」
そして両腕をガシリと掴まれて、足が浮いている状態にされてしまった。
……何故に囚われているのだろう?
意味がわからず、炎駒を見ても、腹を抱えて笑っている姿が私の瞳に映るのみ。
いやいやいや、さっきここで怪しい札を受け取ったのを見ていたよね?
「麒麟様。この者はどう処罰いたしましょう」
え? 処罰?
処刑されるとか?
私は何も悪いことはしていない。
「そうだねぇ。牢でもいれておく?」
「何で迎えにきたの!」
絶対に面白いできたよね。
何をしに迎えにきたのだ。
「だから、面白そうだからって言ったはず」
最悪だ。いい加減に化けの皮を剥いでやろうか。
いや、結局私が悪いということになる。何故なら目の前でニヤニヤと笑みを浮かべているのは、自称麒麟なのだから。
そうなると、さきほどもらった札も怪しい。何も意味がないものかもしれない。
あの門兵が震えていたのは、炎駒がここにいたからだったという理由のほうが大きいということか。
……まさか、これが目的だったりするのか?
私の動きを封じて調査をさせないと。
「それって何の意味があるわけ?私が誰に依頼されたかわかって言っている?」
「もちろんわかっているよ」
「だったら、その誰か名を言ってみてよね」
「芙蓉だよね」
普通に答えた。馬鹿みたいにまともな答えだった。
すると両腕が自由になり足が地面につく。
そして足元にザッと音が……。
私が皇帝のつぎに偉い女性と関わりがあるとわかったのだろう。足元で平伏している二人の兵がいる。
そしてまたしてもお腹を抱えて馬鹿笑いをしている炎駒。
これ、まともに相手をするだけ無駄だよね。
「はぁ、やっぱり王離のおっさんに来てもらったほうがよかった」
「王将軍を……」
「おっさん……」
足元の兵がなにか言っているけど、おっさんだよね。私は間違ったことは言っていない。
あ、そうだ。コレを頼ろうとするから駄目なのだ。
「そこの地面と一体化している人。王離のおっさんを呼んできてくれない?」
「「ひっ!」」
「霍良は朝から来て、蛮族討伐に行くって言っていたから、案内を頼めなさそうだしね」
ガチガチと歯の根が合わないような音が聞こえてくる。
なんだか、私がいじめているみたいになっていない?
この状況は出直したほうがいいだろう。
「はぁ、面倒になってきたから帰るわ。琅宋に次はおっさんを迎えによこしてって言っておいて、炎駒は二度とくるな!」
私は来た道を戻ろうと足を進めると、炎駒がそれを阻んできた。
本当にさっきからなんなの?
「白」
私は白を頭から地面に下ろす。
今まで頭の上に置いていたのかという感じなのだろうけど、白も炎駒の相手をするのが面倒なのか途中から反応しなくなったのだ。
巨大化し翼が生えた白虎の姿になる。その背に腰掛ける私。
「本当に何がしたいのか全くわからない」
「そうかな?僕はキリンだからね。国のためにいいことをしているんだよ」
正論を言っているようで、平気に嘘を吐く。
何が国のためなのか。
私はそれ以上話すことはないと、白の首元を撫で、ここから離れるように促す。
すると空を蹴り空に飛び立つ白。
周りが騒がないのは、白が隠蔽の術を使っているからだろう。
そして貸家のほうに向かうのかと思っていたら、全く逆のほうに進む白。
え?そっちは皇城の敷地に入ってしまう。
隠蔽の術を使っているからか、堂々と皇城の上空を飛ぶ白。これはバレたら大変なんじゃない?
「黎明。芙蓉だ」
白は芙蓉様を見つけたようだ。
えっと、ここ後宮とか言わないよね?
そして何処かの庭園に白は降り立つ。
綺麗に整えられた庭の奥には、色鮮やかな四阿があり、そこに何人もの女性たちが集まっていた。
あの? こんなところに突っ込んでいけとか私に言わないよね? 白。
どう考えても不法侵入なので、これこそ捕まって投獄されてしまう未来しかないのだけど。
いや、処刑か投獄かという嫌な選択肢はありそうだけどね。




