第75話 苛つく
「何? 嫌がらせ?」
私は、皇城からの迎えの者を見上げながら言った。
「何って? 面白そうだから?」
私は心底嫌そうな顔をしているだろう。そう、一人だけ迎えに来てと言っていた。
言っていたが、なぜ炎駒が迎えに来ているのだ。
何かを企んでいる渾敦の張本人が私の前に現れたのだ。
「お前はそういうやつだよな」
私の肩の上にいる白猫がくだらないという感じで呟く。
なに? この軽い感じ?
会えば、もっと緊迫感があるようになると思っていたのに。
「はぁ、霍良や霍将軍に命令出したのは炎駒で合っている?」
「最近、北の蛮族がちょっかいを出してくるからね。陛下が命令をだしたんだよね」
「進言したやつが誰かという話だよ」
それは皇帝が命じなければ、霍将軍も霍良も動かないのはわかりきっている。北に出兵することを霍家に言い渡すように進言したのは誰なのかという話だ。
「もちろん、この国をいい国にしたいと思っている僕だよ」
「はぁ」
よくも堂々とこう言いきれるものだ。
これは私の首など簡単に取れるぞと言われているのだろうか。
「で、本音は何?」
「え〜? 本音だよ?」
イラッとする。なに?
言い方? ニヤニヤと笑っている顔?
「で、何しに来たわけ?」
「もちろん、黎明をお迎えに来たんだよ。迎えを一人だけって言ったそうじゃない?気軽に動ける僕が来てあげたんだよ」
できれば、王離のおっさんでよかったのだけど? いや、おっさんが動いても兵がついてまわることになるのか。
でも、おかしいよね。麒麟である炎駒が迎えにくるなんて、後ろからグサッとやるつもりだったりして?
「気持ち悪い笑顔を向けてくるな。見てみろ、尻尾の毛が立ってしまった」
白がふわふわになった白い尻尾を前に持ってきたけど、それは威嚇しているっていうことだよね?
「え? 窮奇には笑っていないよ? それこそ気持ち悪い」
「あ? てめぇが気持ち悪いんだよ」
なに? この妖魔たち?
互いに気持ち悪いって言い合っているけど?
色々考えていた私が馬鹿みたいに思えてきた。
これは、炎駒は何も考えていないのでは? すべて楽しいが基準なのでは?
もしかして、これが白が言っていた希望があるということ?
そんなことないよね?
「でさぁ、迎えにきたんだよね。いつまでここでくっちゃべっているわけ? 取り敢えず、炎駒ではなくて、おっさんを迎えによこしてよ」
私は迎えにくる人の交換を頼む。
人畜無害を装っているけど、中身は渾敦だからね。
「そう言わずにさぁ。一緒に行こうか」
私の腕を掴んでくる炎駒。
うわぁ! 体中に鳥肌が!
「白! コイツの手が離れないのだけど!」
私の腕を掴んだ手を引き剥がそうとしても全く動かない。どうすればいいのだ?
家の入口にとどまっていた私は、炎駒に引きずりだされるように貸家から出されてしまった。
「黎明。元々皇城に呼ばれているのだからいいだろう?」
「いやいや、この赤髪が歩いていたら誰がみても炎駒だとバレバレじゃない!」
こんな真っ赤な髪の者は普通はいない。
この国に赤い髪の者はいるだろうが、こんな鮮やかな赤い色は炎駒ぐらいしか見たことがない。
それに炎駒を見たことがない人でも噂では知っているだろう。
この国は赤麒に守護されていると。
だけど私はニヤニヤと笑う炎駒に広い大通りまで連れて行かれてしまった。
人々の視線とコソコソ話が聞こえてくる。
いやぁ! 私がものすごく注目を浴びてしまっている。
これは軍に連行されるのと、どっちがヤバいのだろう?
「白を頭からかぶれば顔が隠せるかな?」
「それ怪しい人になるだけだ」
「それ面白そうだね!」
そんなくだらないことを言いながら、私は炎駒に連行されてしまう。
「それで腹を割って話したいのだけど?」
私は人混みの中、白を頭の上に乗せられて白猫のかぶり物をしている馬鹿っぽい感じにさせられている。
なにこれ? 冗談で言っただけなのに、余計に人の目を集めてしまっていない?
「俺に触るんじゃねぇ!」
「案外かわいいよ。くふっ……窮奇を頭の上に乗せるって普通ないよね」
乗せた本人が言うんじゃないよ。
それよりも私と話をする気があるのかな?
「それで何が聞きたいのかな? 饕餮のことかな?」
炎駒は悪気があるとかそんな感じじゃなくて、日常の会話をしているだけという感じだ。
なんだか苛つく。
多大に遅くなり申し訳ありません。来週も金曜日の投稿のみになるかもしれませんm(_ _)m




