第99話「地下に眠る起爆装置」
ドン……。
ドン……。
地下深くから響く振動が、四人の足元を揺らしていた。
蒼真は玄岳と向かい合ったまま、奥の通路へ視線を向ける。
「……あれは何だ」
玄岳は答えない。
黒雷だけが、身体の周囲を激しく走っていた。
「気になるなら、俺を倒して確かめろ」
「そういうことかよ……!」
蒼真が踏み込む。
「風遁・風纏!」
一瞬で間合いを詰め、風影刀を振り抜く。
ガキィン!
玄岳は黒雷をまとわせた腕で刀を受け止めた。
「まだ甘い」
「くっ……!」
黒雷が刀身を伝ってくる。
蒼真はすぐに刀を引いた。
バチッ!
足元の地面が弾ける。
「近づくだけじゃ勝てないか」
玄岳が笑う。
「お前は風を操る。ならば、風を使えない場所ではどうする?」
蒼真は周囲を見る。
地下空間には蒸気と煙が充満していた。
風の流れが乱れている。
しかし――。
「風は消えたわけじゃない」
蒼真は目を閉じた。
「流れが見えないなら……感じる」
玄岳の黒雷が動いた。
「黒雷遁・雷鳴煙!」
黒い煙が一気に広がる。
視界が完全に消えた。
「蒼真!」
凛の声が響く。
「大丈夫!」
蒼真はその場から動かなかった。
煙の中で、微かな空気の揺れを感じる。
右。
そして――左。
「そこだ!」
蒼真が刀を振る。
ガキィン!
玄岳の黒雷とぶつかった。
「……!」
玄岳が初めて目を見開く。
「見えているのか?」
「見えてない」
蒼真は刀を押し込む。
「感じてるだけだ!」
二人の攻防が激しくなる。
一方、蓮司。
土牢の中に閉じ込められていた。
「まずいな……」
壁は厚い。
刀で切っても、すぐに土が崩れて塞がる。
敵が外から声を飛ばす。
「そのまま閉じ込めておけばいい」
蓮司は刀を握り直した。
「そうはいかねぇよ」
壁に手を当てる。
そして、自分の周囲を確認する。
「……土ってことは、力を受け流せる場所もある」
蓮司は刀を土壁に突き刺した。
「ここだ!」
刀を横へ滑らせる。
ズズッ……。
壁に亀裂が走った。
敵が気づく。
「何をしている!」
蓮司は笑った。
「お前が作った壁だろ?」
亀裂を蹴る。
ドゴォン!
土壁が崩れた。
蓮司は土煙の中から飛び出した。
「だったら、壊し方も分かるってことだ!」
敵が拳を振り抜く。
蓮司は受け止めない。
身体を横へ流し、拳の勢いを利用する。
敵の身体が前へ流れた。
「なっ……!」
蓮司の刀が敵の背後へ回る。
「終わりだ!」
しかし、敵は地面へ手をついた。
「土遁・土壁!」
二人の間に巨大な壁が立ち上がる。
蓮司は舌打ちした。
「まだやるかよ!」
凛の方でも戦いは続いていた。
火遁の忍が、蒸気の中から突然現れる。
「火遁・炎弾!」
炎の弾丸が飛ぶ。
凛は水遁で受け止める。
「水遁・水盾!」
ジュッ!
水蒸気が広がる。
その隙に、凛は村人たちへ駆け寄った。
「みんな、こっち!」
村人を少しずつ安全な場所へ移動させる。
だが、一人の村人がその場に座り込んだ。
「足が……」
怪我をしている。
凛は迷わず肩を貸した。
「大丈夫。私が連れていく」
その瞬間。
火遁の忍が背後から苦無を投げた。
ヒュッ!
レイが二本の短刀で弾き飛ばす。
「凛、下がれ」
「レイ!」
「ここは俺がやる」
レイは火遁の忍と向かい合う。
敵が印を結ぶ。
「火遁・火走!」
炎が床を這う。
レイは後ろへ跳ぶ。
そのまま壁を蹴り、天井へ。
敵が上を見る。
しかし――。
レイはすでに背後へ回っていた。
「遅い」
二本の短刀が交差する。
敵の袖と肩当てが切り裂かれる。
「ぐっ!」
敵は距離を取った。
レイは追わない。
ちらりと凛を見る。
「村人を頼む」
「分かった!」
その頃。
蒼真と玄岳の戦いは激しさを増していた。
ガキィン!
風影刀と黒雷の拳がぶつかる。
蒼真が一歩下がる。
玄岳が追撃する。
「黒雷遁・黒雷走!」
黒い雷が一直線に走った。
蒼真は横へ避ける。
だが――。
雷が途中で分岐した。
「なに……!」
バチィッ!
蒼真の左肩を黒雷が掠める。
「ぐっ!」
蒼真が膝をつく。
玄岳が迫る。
「終わりだ」
その瞬間。
蒼真は地面へ手をついた。
「風遁……」
周囲の空気が動く。
「風刃!」
風の刃が玄岳の足元を切り裂いた。
玄岳が跳ぶ。
その隙に蒼真は立ち上がる。
「……まだ終わってない」
玄岳は左腕を見る。
袖が切れている。
「少しは変わったな」
そして、地下の奥を指差した。
「だが、時間は待ってくれない」
蒼真が振り返る。
奥の通路から赤い光が漏れていた。
「……あれは?」
「起爆装置だ」
玄岳が初めて明確に答えた。
「この地下迷宮の最深部にある」
蒼真は目を見開く。
「じゃあ、あれを止めれば……」
「誘爆印も止まる」
「なら、そこへ行く!」
蒼真が走ろうとする。
しかし玄岳が立ちはだかる。
「俺を倒してからだ」
「邪魔するな!」
「それが第二段階だ」
玄岳の全身から黒雷が噴き出した。
その瞬間。
地下の奥から、巨大な音が響いた。
ゴゴゴゴゴ……。
壁が開いていく。
その向こうに、巨大な円形の装置が姿を現した。
無数の起爆札。
それを繋ぐ黒い管。
中央には巨大な黒い球体。
そして――。
中央の球体に、赤い光が灯った。
凛が息を呑む。
「……あれが起爆装置?」
玄岳が答える。
「そうだ」
蒼真は風影刀を握る。
「なら、あれを壊す」
「簡単にはいかない」
玄岳が印を結ぶ。
同時に、四人の忍たちも動いた。
四方向から攻撃が迫る。
蒼真たちは、それぞれ敵と再び向かい合った。
そして中央の起爆装置が――。
カチッ。
一段階、赤く染まった。
第99話 完




