第100話「四人の忍、最後の壁」
巨大な起爆装置を中心に、四人の忍が散開した。
中央の黒い球体は、一定の間隔で赤く明滅している。
カチッ。
カチッ。
蒼真は風影刀を握り直した。
「……あれを止めればいいんだな」
玄岳が黒雷をまといながら答える。
「そうだ。ただし、お前たちは俺たちを倒さなければ装置には触れられない」
「だったら――」
蒼真が一歩踏み出す。
「全員で突破する!」
その瞬間、四人の忍が同時に印を結んだ。
「風遁・風裂!」
「土遁・岩壁!」
「雷遁・雷槍!」
「火遁・炎牙!」
四つの忍術が同時に放たれる。
「凛!」
「分かってる!」
凛が両手を前へ出した。
「水遁・水壁!」
巨大な水の壁が展開される。
炎と雷が水壁へ突っ込む。
ドォォン!
大量の蒸気が発生した。
だが、土の槍が水壁を突き破る。
「蓮司!」
「任せろ!」
蓮司が前へ出た。
ガキン!
土の槍を刀で受ける。
そのまま力を横へ流した。
「はあっ!」
岩槍の軌道が変わり、敵の火遁忍へ向かう。
「なにっ!」
敵が横へ飛ぶ。
その隙にレイが走った。
「今だ」
二本の短刀が閃く。
雷遁の忍が苦無を構える。
「雷遁・雷刃!」
レイの短刀と雷の刃がぶつかる。
キィン!
一撃。
二撃。
三撃。
互いに一歩も譲らない。
「お前……速いな」
「お前もな」
レイは短く答えた。
雷遁の忍が一気に踏み込む。
「雷遁・雷走!」
姿が消えた。
次の瞬間、レイの背後。
「終わりだ!」
雷刃が振り下ろされる。
レイは振り返らない。
二本目の短刀を背後へ回す。
ガキィン!
雷刃を受け止めた。
「読んでいたのか!」
レイは身体を捻る。
一本目の短刀が敵の腕を狙う。
敵は苦無を離して後退した。
その頃、凛も火遁の忍と激しくぶつかっていた。
「火遁・火球連弾!」
炎が連続して飛ぶ。
凛は水を操りながら避ける。
「水遁・水流陣!」
水の流れが地面を走り、炎の軌道を逸らす。
しかし敵はその水流へ向かって手を伸ばした。
「火遁・爆炎!」
ドンッ!
水流が一気に蒸発する。
凛は顔を腕で覆った。
熱気が皮膚を焼く。
「くっ……!」
敵が接近する。
「これで終わりだ!」
炎をまとった拳。
凛は後退しながら、足元を見る。
蒸発した水が床に残っている。
「……そういうことか」
凛は両手を合わせた。
「水遁・水縛!」
床の水が一気に跳ね上がる。
水の縄が敵の足へ絡みついた。
「なっ!」
動きが止まる。
凛はすぐに起爆装置を見る。
「蒼真!」
「分かってる!」
蒼真は玄岳との戦いを続けていた。
黒雷が地下を走る。
バチバチバチッ!
蒼真は風を纏って避ける。
だが、玄岳の攻撃は速い。
「黒雷遁・黒雷走!」
玄岳が迫る。
蒼真は風影刀を振る。
ガキィン!
刀と黒雷が衝突する。
玄岳の拳が蒼真の腹へ入る。
「ぐっ!」
蒼真の身体が吹き飛ぶ。
ドンッ!
壁に叩きつけられる。
「蒼真!」
凛が叫ぶ。
蒼真は壁に手をつき、立ち上がった。
「大丈夫……!」
息が荒い。
左肩には黒雷による傷。
腹部にも痛みが残っている。
玄岳は静かに歩いてくる。
「まだ立つか」
「立つさ」
蒼真は風影刀を構える。
「仲間がいるからな」
玄岳の表情が僅かに変わった。
「仲間……か」
玄岳は一瞬だけ目を伏せる。
しかし、すぐに構え直した。
「ならば、その仲間ごと試してやる」
玄岳が両手を広げる。
「黒雷遁・黒雷陣!」
黒い雷が床を走った。
四人の忍たちにも雷が繋がる。
「これは……!」
蓮司が足元を見る。
黒雷が四人の忍を通して循環している。
玄岳が言う。
「四人の忍は、俺の黒雷を受け取る器だ」
四人の忍の身体から黒い雷が噴き出す。
風遁の忍が笑った。
「ここからが本当の戦いだ」
土遁の忍が拳を握る。
雷遁の忍が雷をまとわせる。
火遁の忍の炎も、黒雷によって黒く染まっていく。
「まずい……!」
蒼真が叫ぶ。
「みんな、距離を取れ!」
しかし――。
遅かった。
「黒雷連携!」
四人の忍が同時に動いた。
風と黒雷。
土と黒雷。
雷と黒雷。
炎と黒雷。
四つの忍術が一つの攻撃となって襲いかかる。
ドォォォン!
地下室全体が揺れた。
壁に亀裂が走る。
起爆装置の赤い光が強くなる。
カチッ。
カチッ。
カチッ。
凛が村人を見る。
誘爆印の赤色も濃くなっている。
「時間がない!」
蓮司が刀を握る。
「だったら、こいつらを突破する!」
レイが短刀を構える。
「四人を同時には無理だ」
蒼真が周囲を見る。
敵は四人。
自分たちも四人。
そして玄岳。
蒼真は息を整える。
「なら、四人を一人ずつ倒す」
蓮司が頷いた。
「俺は土遁の奴だ」
レイが雷遁の忍を見る。
「俺はあいつ」
凛が火遁の忍へ視線を向ける。
「私は火遁」
蒼真は風遁の忍を見た。
「俺は風遁」
四人がそれぞれ敵へ向かう。
その背後で、玄岳が動いた。
蒼真が振り返る。
「玄岳!」
「お前たちが四人を倒す間――」
黒雷が玄岳の身体を包む。
「俺は起爆装置を守る」
蒼真の表情が険しくなる。
「……そう簡単にはいかない」
玄岳が笑う。
「なら、証明してみろ」
五つの戦いが同時に始まった。
そして起爆装置の赤い光が――。
これまでで最も強く輝いた。
第100話 完




