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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第4章「夜叉衆暗躍編」
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第96話「迷宮の忍たち」

地下迷宮。


蒼真は風影刀を構え、暗闇の奥を見据えていた。


そこには、六人の忍が立っている。


火遁、水遁、土遁、雷遁。


そして――。


姿を隠す二人。


蒼真の後ろでは、黒雷の玄岳が立っている。


「六人……」


蒼真が呟く。


玄岳は答えない。


ただ、刀を収めた。


「ここから先は、お前たち自身で進め」


「……お前は?」


「俺の役目は終わった」


「逃げるのか?」


玄岳は振り返る。


「違う」


黒い面の奥から声が響く。


「次の試験へ移るだけだ」


玄岳の姿が煙の中へ消える。


「待て!」


蒼真が追おうとした瞬間。


「火遁・炎弾!」


炎が飛んできた。


蒼真は横へ跳ぶ。


ドンッ!


背後の壁が焼ける。


「……行かせる気はないか」


蒼真は刀を構え直した。


「なら、全員まとめて突破する!」


六人の忍が一斉に動いた。


「水遁・水槍!」


「土遁・土壁!」


「雷遁・雷弾!」


三方向から攻撃が飛んでくる。


蒼真は風を纏った。


「風遁・風走!」


一気に駆ける。


水槍をかわし、土壁を飛び越え、雷弾を風で逸らす。


そのまま一人へ接近。


「風遁・風刃!」


ザンッ!


敵の忍が後退する。


しかし――。


「土遁・土牢!」


足元から土が盛り上がった。


「しまった!」


蒼真の身体が土に囲まれる。


「一人捕まえたぞ!」


「まだだ!」


蒼真は風影刀を地面へ突き立てる。


「風遁・風圧!」


ドンッ!


土牢が吹き飛ぶ。


しかし、その隙に別の忍が背後へ回っていた。


苦無が迫る。


キンッ!


二本の短刀が苦無を弾いた。


「……レイ!」


蒼真が振り返る。


レイが立っていた。


「遅い」


「お前、どうしてここに?」


「凛が人質を連れてくる」


レイは周囲を見渡す。


「俺は先に道を確保する」


「分かった!」


二人が並ぶ。


「久しぶりに二人で戦うな」


「余計なことを考えるな」


「相変わらずだな!」


蒼真が笑う。


敵が迫る。


レイが先に飛び込んだ。


左右の短刀が閃く。


一人の忍が苦無で受ける。


もう一人が雷遁を放つ。


「雷遁・雷撃!」


レイはしゃがむ。


雷が頭上を通り過ぎる。


そのまま足元へ滑り込み、敵の懐へ入る。


「そこだ」


短刀の柄が敵の腹へ入る。


ドッ!


敵が崩れる。


蒼真も別の敵へ斬りかかる。


しかし土遁の忍が壁を作った。


「風遁・風刃!」


ザンッ!


土壁を斬る。


だが、その向こうには誰もいない。


「……消えた?」


レイが周囲を見る。


「違う」


「?」


「床」


蒼真が足元を見る。


床の一部がわずかに盛り上がっている。


「地下か!」


次の瞬間。


地面から敵が飛び出した。


「土遁・土潜り!」


蒼真の足を掴む。


「くっ!」


レイが短刀を投げる。


敵の手が離れる。


蒼真が後ろへ飛んだ。


「助かった!」


「まだ来る」


左右の壁から敵が現れる。


「挟まれた!」


蒼真とレイは背中合わせになる。


「蒼真」


「分かってる」


「右は俺がやる」


「左は任せろ!」


二人が同時に動いた。


一方――。


凛は町人たちを連れて地下階段を下りていた。


「ゆっくりでいいです!」


「怖い……」


「大丈夫です。私たちが守ります」


だが、階段の途中。


凛が足を止めた。


「……」


何かを感じる。


水の気配。


「前に水がある」


レイの戦闘音が遠くから響く。


しかし、その音とは別に――。


小さな水音。


ポタッ。


ポタッ。


凛が前を見る。


階段の先に、大きな地下水路が広がっていた。


「ここ……」


水路の両側に、無数の小さな穴。


凛の表情が変わる。


「罠です」


「え?」


「全員、止まって!」


町人たちが足を止める。


凛が水面を見る。


波紋が一つ。


二つ。


三つ。


「誰かいる」


その瞬間。


水中から忍が飛び出した。


「水遁・水刃乱舞!」


無数の水刃が飛ぶ。


「水遁・水壁!」


凛が防ぐ。


ガガガガッ!


水刃が水壁へ突き刺さる。


「みんな、壁から離れないで!」


凛は一人で前へ出る。


敵は水路の中を自由に移動している。


「水の中じゃ……私のほうが有利」


凛が印を結ぶ。


「水遁・水縛!」


水路の水が一気に持ち上がる。


敵忍の足へ絡みつく。


「なにっ!」


そのまま引きずり出す。


だが――。


別の方向から苦無が飛んできた。


凛が水で弾く。


さらに二本。


三本。


「まだいる!」


町人たちの背後。


黒装束の忍が現れた。


「人質はもらう」


「させない!」


凛が振り返る。


しかし、その忍は煙玉を投げた。


ボンッ!


視界が真っ白になる。


「みんな!」


煙の中で町人たちの声が響く。


「助けて!」


凛は水を操り、煙を押し流す。


「水遁・水流!」


ゴォッ!


煙が消える。


しかし――。


一人の町人の姿がない。


「……一人いない?」


凛の顔が強張る。


地下通路の奥。


誰かが町人を連れて走っている。


「待って!」


凛が追う。


だが、残された町人たちを置いていくわけにはいかない。


凛は一瞬迷う。


「……どうする」


その時。


遠くから声が響いた。


「凛!」


蓮司だった。


「蓮司!」


蓮司が階段を駆け下りてくる。


「何があった!」


「一人、連れていかれた!」


蓮司が通路の奥を見る。


「追うぞ」


「でも、みんなを……」


蓮司が町人たちを見る。


「俺が残る」


「え?」


「凛、お前が追え」


「でも――」


「こいつらは俺が守る」


蓮司が刀を構える。


「蒼真たちを追ってくれ」


凛は一瞬だけ迷った。


そして頷く。


「分かった!」


凛が走る。


その背中を蓮司が見送る。


「……蒼真」


蓮司は小さく呟いた。


「絶対に合流するぞ」


その頃。


蒼真とレイは六人の忍のうち、三人を倒していた。


しかし――。


残り三人。


そして、その中には姿を完全に消している忍がいる。


「……見えない」


蒼真が風を読む。


「いる」


「どこ?」


「左――」


シュッ!


苦無が飛ぶ。


レイが弾く。


「違う」


「え?」


「本体じゃない」


蒼真が目を閉じる。


風が揺れる。


わずかな空気の流れ。


「上だ!」


二人が同時に上を見る。


天井。


忍が張り付いていた。


「見つかったか!」


敵が飛び降りる。


その瞬間。


レイが踏み込む。


「逃がさない」


二本の短刀が敵の両腕を狙う。


敵は身体を捻ってかわす。


そこへ蒼真。


「風遁・風弾!」


ドンッ!


敵が吹き飛ぶ。


壁に叩きつけられる。


残り二人が印を結ぶ。


「火遁!」


「雷遁!」


炎と雷が同時に放たれる。


蒼真は風影刀を構える。


レイも短刀を構える。


「蒼真」


「ああ」


二人は互いを見る。


言葉はそれだけだった。


蒼真が風を起こす。


レイがその風に乗る。


一瞬で距離を詰めた。


「今だ!」


蒼真の風が炎の軌道を逸らす。


レイが雷をかわして敵へ接近する。


短刀が二本、同時に閃いた。


敵の苦無が弾き飛ばされる。


そして――。


蒼真の風刃が敵の足元へ走る。


二人の忍が同時に倒れた。


「……終わったか」


蒼真が息を吐く。


だがレイは首を横に振った。


「まだ」


「何?」


レイが奥を見る。


暗闇の先。


一つの扉。


そこに夜叉衆の印が刻まれている。


そして、その扉の前に――。


凛が立っていた。


「蒼真!」


「凛!」


三人がようやく合流する。


凛は息を切らしながら言った。


「町人が一人、連れていかれた」


蒼真の表情が変わる。


「誰に?」


「分からない。でも……」


凛は扉を見る。


「この先」


三人が扉へ近づく。


すると――。


扉の向こうから、聞き覚えのある声が響いた。


「やっと来たか」


蒼真が刀を握る。


「……玄岳」


扉の向こうから黒い雷が走る。


バチッ……。


そして鍵が外れる音がした。


カチャ。


扉がゆっくり開いていく。


第96話 完

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