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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第4章「夜叉衆暗躍編」
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第95話「地下迷宮」

カチ……。


カチ……。


地下に響く、一定の音。


蒼真は黒雷の玄岳から距離を取った。


「この音……何だ?」


玄岳は答えない。


ただ、刀を構え直した。


「気になるなら、止めてみろ」


「……!」


蒼真が走る。


しかし玄岳も同時に動いた。


「黒雷遁・雷走!」


バチィッ!


黒い雷を纏った玄岳が、一瞬で間合いを詰める。


「くっ!」


蒼真は風影刀で受ける。


ガキィン!


黒雷が刀を伝ってくる。


「ぐっ……!」


腕が痺れる。


蒼真はすぐに後ろへ跳んだ。


玄岳は追撃しない。


「戦いながら装置を探す余裕があると思うか?」


「作ったのはお前だろ」


「そうだ」


「なら、壊す!」


蒼真は地面を蹴った。


「風遁・風走!」


風を纏って加速する。


玄岳の横を抜けようとする。


しかし――。


「黒雷遁・雷壁!」


バチバチバチッ!


黒い雷の壁が出現した。


蒼真は急停止する。


「……!」


「簡単には通さん」


その頃。


牢の前。


凛は水壁を維持していた。


「みんな、落ち着いて!」


牢の中の町人たちは怯えている。


「ここから出してくれ!」


「大丈夫です!」


凛は周囲の起爆札を見る。


札から伸びる細い導線。


それが地下通路の奥へ続いている。


「……起爆札は全部繋がってる」


レイが戻ってきた。


「敵は?」


「二人倒した。残りは奥へ逃げた」


レイは導線を見る。


「これを切ればいいのか?」


「分からない」


凛が首を振る。


「切った瞬間に起爆する可能性もある」


「なら、切らない」


レイは周囲を見る。


「仕組みそのものを探す」


「うん」


二人は導線を辿り始める。


しかし――。


「……待って」


凛が足を止めた。


「この線、おかしい」


「何が?」


「一本だけ、逆方向に伸びてる」


レイがしゃがむ。


床下。


そこから別の導線が伸びていた。


「……地下の奥じゃない」


「牢の下?」


二人が顔を見合わせる。


その瞬間。


ドンッ!


牢の床が揺れた。


「きゃあ!」


町人たちが悲鳴を上げる。


凛は水壁を強める。


「大丈夫!」


レイが床を見る。


「下から来る」


「じゃあ……」


凛が印を結ぶ。


「水遁・水探知!」


薄い水が床へ広がる。


その水面に、地下構造が浮かび上がる。


「……牢の下に空間がある」


レイが立ち上がる。


「隠し通路か」


「たぶん」


その頃。


蓮司は最後の敵忍と対峙していた。


敵は土遁を使い、地面を自在に変形させる。


「土遁・土壁!」


壁が迫る。


蓮司は横へ逃げる。


「またか!」


壁の向こうから火弾が飛ぶ。


蓮司は刀で弾く。


「しつこい!」


敵が笑う。


「お前一人では仲間を助けられない」


「……何?」


「今も地下のどこかで、仲間は戦っている」


蓮司の表情が変わる。


「焦ってるな」


敵が印を結ぶ。


「焦れば、判断を誤る」


土の槍が一斉に飛び出す。


蓮司は受け流す。


一本。


二本。


三本。


四本。


そして最後の一本を刀で受けた。


「……違うな」


敵が動きを止める。


「何?」


蓮司はゆっくり刀を下ろした。


「俺は一人で全部やろうとしてない」


「……」


「蒼真は蒼真の戦いをしてる」


「凛は人質を守ってる」


「レイは敵を止めてる」


蓮司が笑う。


「なら俺は、ここを片付ければいい」


一歩踏み込む。


「それだけだ!」


敵が土壁を作る。


蓮司は真正面から突っ込んだ。


「うおおっ!」


刀を振る。


土壁を斬るのではなく、力の流れに合わせて刀を滑らせる。


壁の一部が崩れる。


その隙間から蓮司が入り込んだ。


「なっ!」


柄が敵の腹へ叩き込まれる。


ドンッ!


敵が倒れた。


「……俺も、少しは成長しただろ」


蓮司は息を整える。


そして蒼真たちのいる方向を見る。


「待ってろよ」


一方。


蒼真と玄岳。


黒雷の壁を挟んで睨み合っていた。


蒼真は壁に手を近づける。


風を感じる。


「……」


風影刀を抜く。


「風遁・風刃!」


風の刃を黒雷の壁へぶつける。


ザンッ!


しかし黒雷の壁は壊れない。


むしろ風が弾かれた。


「風では突破できない?」


玄岳が答える。


「黒雷は周囲の空気そのものを乱す」


「だから風の流れが読めない」


蒼真は目を閉じた。


「……なら」


玄岳が構える。


「何をする?」


「読むんじゃない」


蒼真の周囲に風が集まる。


「作る」


ドンッ!


蒼真が地面を踏み込む。


風が地下空間全体へ広がった。


黒雷の壁にぶつかる。


雷が乱れる。


一瞬。


ほんの一瞬だけ。


壁の一部に隙間ができた。


「そこだ!」


蒼真が突っ込む。


玄岳が迎え撃つ。


ガキィン!


二本の刀がぶつかる。


玄岳の黒雷が風影刀へ絡む。


「これで終わりだ!」


「まだだ!」


蒼真は刀を引かない。


代わりに身体を回転させる。


風が渦を巻く。


玄岳の身体が押される。


「ぐっ!」


玄岳が後退した。


蒼真はそのまま走り抜ける。


「装置はどこだ!」


地下通路の奥。


カチ……。


カチ……。


音が大きくなる。


蒼真が角を曲がる。


そこには巨大な鉄製の装置があった。


無数の起爆札が繋がっている。


「これか……!」


しかし装置の中央には、一本の黒い札。


そこに文字が書かれていた。


『第一段階終了』


蒼真の背後から玄岳が現れる。


「見つけたな」


「第一段階……?」


玄岳は答えない。


その瞬間。


装置の奥の壁が、


ゴゴゴゴゴ……。


と動き始めた。


地下通路が左右に分かれていく。


さらに奥から、複数の足音が響く。


蒼真が刀を構える。


「まだ敵がいるのか……」


玄岳も刀を構えた。


「ここから先は、俺だけが相手ではない」


暗闇の奥から、忍たちの影が現れる。


そして――。


牢の下にも、同じように地下への階段が開いた。


凛とレイがそれを見つめる。


「……地下迷宮」


レイが呟く。


凛は牢の中の町人たちを見る。


「この人たちを置いていけない」


レイが頷く。


「なら、連れていくしかない」


「でも、敵が待ってる」


二人は互いを見る。


そして凛が水遁を展開した。


「だったら……全員で行こう」


地下のさらに深い場所から、不気味な鐘の音が鳴り響いた。


ゴォォォン……。


蒼真は暗闇を睨む。


「この先に、何がある……?」


第95話 完

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