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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第4章「夜叉衆暗躍編」
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第94話「黒雷の忍」

地下空間に、低い雷鳴が響いていた。


黒い面の男の身体から、黒い雷が走る。


バチッ……バチバチッ!


蒼真は風影刀を構えたまま、男を見据えた。


「その雷……普通の雷遁じゃないな」


「よく見ている」


男はゆっくりと印を結ぶ。


「俺の名は黒雷の玄岳」


黒い雷が腕へ集まっていく。


「夜叉衆の忍だ」


蒼真の目が細くなる。


「夜叉衆……」


玄岳が地面を蹴った。


「黒雷遁・黒雷走!」


ドンッ!


一瞬だった。


玄岳の姿が消える。


「速い!」


蒼真は風を読む。


空気が乱れた。


右。


反射的に風影刀を振る。


ガキィン!


刀と刀がぶつかった。


しかし、玄岳の姿はすでに蒼真の横を通り過ぎている。


「……!」


蒼真の肩から血が滲んだ。


浅い。


だが、確実に斬られている。


「蒼真!」


凛が叫ぶ。


「大丈夫だ!」


蒼真は振り返る。


玄岳は数メートル先で刀を下げていた。


「今のを防いだか」


「風が教えてくれた」


「風?」


玄岳が面の奥で笑う。


「なら、風そのものを乱せばいい」


玄岳が両手を広げる。


「黒雷遁・雷鳴煙!」


バチバチッ!


黒い雷が地面を走り、同時に黒い煙が地下空間へ広がった。


視界が一気に奪われる。


「何も見えない!」


蓮司が叫ぶ。


「凛、人質から離れるな!」


「分かってる!」


凛は牢の前に立ち、水の壁を展開する。


「水遁・水壁!」


牢を覆うように水壁が広がる。


その直後。


ドンッ!


水壁に黒雷が叩きつけられた。


「きゃっ!」


凛が後ろへ押される。


「凛!」


レイが駆け寄る。


「大丈夫」


凛は立ち上がる。


「でも、この雷……水に触れても消えない」


レイが周囲を見る。


「なら、水で防ぐのは危険」


「分かった」


二人が同時に構える。


その頃、蓮司は煙の中で敵の気配を探していた。


「どこだ……」


足音。


背後。


振り向く。


ガキン!


敵の刀を受け止める。


「見つけた!」


蓮司が押し返す。


だが敵はすぐに印を結んだ。


「土遁・土槍!」


地面から土の槍が突き出す。


蓮司は横へ飛ぶ。


その先にも土槍。


「くそっ!」


蓮司は刀で土槍を斬り落とす。


しかし、斬った土槍の破片が牢へ飛ぶ。


「しまった!」


レイが走る。


短刀を投げる。


シュッ!


土の破片を弾き落とす。


「蓮司、前だけ見るな」


「悪い!」


「敵は俺たちを人質から離そうとしている」


レイは周囲を確認する。


煙の中。


複数の敵が動いている。


「……増えた」


「何人いる?」


「分からない」


レイは短刀を構える。


「でも、全員が牢を狙ってるわけじゃない」


蓮司が眉をひそめる。


「どういうことだ?」


「俺たちを動かしている」


その言葉に、蓮司も気づいた。


敵は直接牢を攻撃しているわけではない。


攻撃を仕掛けることで、四人を別々の場所へ動かしている。


そして――。


蒼真のいる場所だけが、少しずつ牢から離れていた。


「蒼真!」


蓮司が叫ぶ。


「俺たち、分断されてる!」


蒼真にも聞こえた。


「分かってる!」


黒い煙の向こう。


玄岳が姿を現す。


「気づくのが遅い」


玄岳の刀に黒雷が集まる。


「お前たちがどれだけ成長したかを見る」


「そのために、この町の人たちを巻き込んだのか!」


「そうだ」


玄岳は迷いなく答えた。


「戦場では、守るべきものが必ず存在する」


「仲間、住民、任務、情報……」


「すべてを守りながら戦える忍かどうか」


蒼真は風影刀を握る。


「……試してるってわけか」


「そういうことだ」


玄岳が刀を構える。


「そして、お前たちがまだ足りないことも分かった」


蒼真の表情が変わる。


「何?」


「お前たちは強くなった」


玄岳の黒雷がさらに激しくなる。


「だが――」


「四人が同じ場所にいることを前提に戦っている」


蒼真は息を止めた。


連携。


互いの動きを理解すること。


それが自分たちの強みだった。


だが。


今はその連携そのものを敵に利用されている。


玄岳が踏み込む。


「ならば――」


黒雷が爆発する。


「一人でも戦えるか?」


蒼真は風を纏う。


「……やってみる!」


二人の刀が激突した。


ガキィィン!


風と黒雷がぶつかり合う。


その衝撃で地下空間の壁が震える。


一方、牢の前。


凛は水壁を維持していた。


額から汗が流れる。


「このままじゃ……水壁が持たない」


レイが周囲を見る。


「なら、俺が時間を作る」


「一人で?」


「問題ない」


レイが二本の短刀を構える。


「俺は俺の戦いをする」


凛が頷く。


「分かった。牢は私が守る」


少し離れた場所では、蓮司が三人の敵忍を相手にしていた。


「まとめて来い!」


敵が同時に印を結ぶ。


「火遁・火弾!」


「土遁・土壁!」


「水遁・水刃!」


三つの忍術が同時に襲いかかる。


蓮司は刀を構えた。


「……全部避けるんじゃない」


敵の攻撃を見極める。


そして――。


「利用する!」


水刃を刀で受け流す。


その水が土壁へぶつかる。


土壁が崩れる。


そこへ火弾が飛び込む。


ボンッ!


蒸気と煙が広がった。


蓮司はその中を走る。


「今だ!」


一人の敵を蹴り飛ばす。


「あと二人!」


戦場のあちこちで、それぞれの戦いが始まっていた。


だが――。


玄岳との戦いを続ける蒼真の足元に、小さな紙片が落ちていることを誰も気づいていなかった。


起爆札。


しかも、その札には今まで見たものとは違う印が刻まれている。


玄岳が刀を振り下ろす。


蒼真が受け止める。


その瞬間。


玄岳が低く呟いた。


「……気づいたか?」


蒼真が足元を見る。


「何だ、これ……」


玄岳が笑った。


「この地下にある起爆札は――」


「まだ半分しか使っていない」


カチッ。


遠くで、何かが作動した。


地下空間の奥から、


カチ……


カチ……


と、一定の間隔で音が響き始める。


蒼真の顔から血の気が引いた。


「まさか……」


玄岳は刀を下ろした。


「ここからが本当の試験だ」


第94話 完

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