第93話「人質と起爆札」
地下空間。
蒼真たちの頭上には、大量の起爆札。
その下には、宿場町の人々が閉じ込められた牢。
そして正面には、夜叉衆の忍たちが立っている。
中央に立つ黒い面の男が、静かに笑った。
「どうする?」
蓮司が刀を握り直す。
「……卑怯なやり方だな」
「忍に卑怯も何もない」
男が手を上げる。
その瞬間。
「火遁・火弾!」
炎が飛んできた。
「凛!」
凛が水壁を展開する。
「水遁・水壁!」
炎が水にぶつかる。
ジュウッ!
蒸気が広がる。
しかし、その隙に別の忍が動いた。
「水遁・水刃!」
水の刃が牢へ向かう。
「させるか!」
蒼真が風影刀を振る。
「風遁・風刃!」
風の刃が水刃を弾き飛ばす。
だが――。
別の方向から苦無が飛んできた。
レイが二本の短刀で弾く。
「……四方から来る」
「人質を狙ってる!」
蓮司が叫ぶ。
敵は蒼真たちを直接倒そうとしていない。
四人に防御を強制している。
黒い面の男が笑う。
「そうだ」
印を結ぶ。
「守れ」
ドンッ!
地面から土の壁が飛び出す。
「土遁・土牢!」
蒼真と蓮司が分断される。
「蒼真!」
「蓮司、そっちは任せる!」
蒼真は凛とレイを見る。
「俺たちは牢を守る!」
「分かった!」
蓮司は一人で土牢の向こうへ走る。
そこには三人の忍。
火遁、水遁、雷遁。
「一人で相手する気か?」
「四人で守るって決めたんでな」
蓮司が刀を構える。
「一人でもやることは同じだ!」
雷遁の忍が突っ込む。
「雷遁・雷走!」
蓮司は刀で受ける。
ガキン!
重い。
しかし蓮司は力比べをしない。
相手の勢いを利用する。
身体を横へ流す。
「そこだ!」
敵の身体が前へ流れる。
蓮司が足を払う。
雷遁の忍が倒れる。
「一人!」
その瞬間、火遁の忍が印を結ぶ。
「火遁・火炎弾!」
炎が蓮司へ迫る。
蓮司は避ける。
その先には牢。
「しまった!」
炎の軌道が牢へ向かう。
「水遁・水壁!」
凛が遠距離から水壁を展開した。
炎が消える。
「蓮司、気をつけて!」
「助かった!」
「まだ!」
レイが叫ぶ。
水遁の忍が蓮司の背後へ回っていた。
「水遁・水縛!」
水の縄が蓮司の腕へ絡みつく。
「くっ!」
動けない。
そこへ火遁の忍が接近する。
だが――。
シュッ!
一本の苦無が飛ぶ。
火遁の忍が飛び退く。
レイだった。
「仲間を狙うなら、俺が相手する」
二本の短刀を構える。
「……二刀流か」
敵が構える。
レイが踏み込む。
一撃。
二撃。
三撃。
敵の苦無を左右から弾き、間合いを詰める。
しかし敵は水遁で足元を滑らせた。
「水遁・水滑!」
レイの足元が崩れる。
「……!」
身体が流れる。
敵が苦無を突き出す。
レイは身体を捻ってかわした。
そのまま地面へ片手をつき、回転する。
短刀が敵の腕をかすめた。
「くっ!」
敵が下がる。
その時。
「レイ!」
蒼真の声。
レイが振り返る。
天井の起爆札が一枚、剥がれ落ちていた。
「……!」
火遁の忍が苦無を投げる。
苦無には火が纏っている。
「まずい!」
蒼真が風を纏う。
一気に駆ける。
「風遁・風走!」
火の苦無を風で弾き飛ばす。
だが、弾かれた苦無は天井へ向かって飛んでいく。
「蒼真!」
凛が叫ぶ。
蒼真は風の流れを瞬時に変える。
「風遁・風圧!」
苦無の軌道をさらに逸らす。
ギリギリで壁へ突き刺さった。
しかし――。
壁には起爆札が貼られていた。
「……!」
ドンッ!
爆発。
地下空間全体が揺れる。
「きゃあ!」
牢の中から悲鳴が上がる。
天井から土が落ちてくる。
黒い面の男が笑った。
「どうした?」
「まだ始まったばかりだぞ」
蒼真は男を睨む。
「……お前」
風影刀を握り直す。
「人質を使って俺たちを戦わせたいんじゃないな」
男の笑みが止まる。
「何?」
蒼真は周囲を見る。
敵の攻撃。
起爆札。
牢。
地下通路。
そして、先ほどの爆発。
「俺たちに、全部守らせて疲れさせるつもりだ」
蓮司が気づく。
「そういうことか……」
凛も周囲を見る。
「敵はずっと、私たちに防御させてる」
レイが短刀を構える。
「攻撃する暇を与えない」
黒い面の男が沈黙する。
蒼真が一歩前へ出る。
「だったら――」
風が蒼真の周囲を渦巻く。
「こっちから戦い方を変える」
「ほう」
男が初めて構えを変えた。
「やってみろ」
蒼真は三人を見る。
「凛」
「うん」
「牢の周りを守ってくれ」
「分かった」
「蓮司とレイは敵を引きつける」
「任せろ!」
「了解」
そして蒼真は一人、敵の中央へ歩き出す。
「俺が、あいつを止める」
黒い面の男が印を結ぶ。
「面白い」
地下空間に雷鳴が響いた。
「ならば、見せてもらおう」
男の身体から黒い雷が噴き出す。
蒼真は風影刀を構えた。
「来い」
二人が同時に地面を蹴った。
第93話 完




