第91話「新たな任務」
修行を終えた翌日。
黒影衆の里。
蒼真、蓮司、凛、レイの四人は、久しぶりに揃って食事をしていた。
「……やっぱり修行の後の飯はうまいな」
蓮司が勢いよく箸を動かす。
凛が呆れた顔をする。
「昨日までずっと食べてたじゃない」
「修行した分だけ腹が減るんだよ」
「それ、修行してなくても同じじゃない?」
「なんだと?」
二人のやり取りを見ながら、蒼真が笑う。
レイは黙々と食事を続けていた。
その時。
「蒼真。四人とも来い」
影宗の声が響いた。
四人が顔を上げる。
「任務ですか?」
蒼真が尋ねる。
「ああ」
食事を終え、四人は影宗のもとへ向かった。
黒影衆の作戦室。
机の上には一枚の地図が広げられている。
影宗が地図の一点を指した。
「ここだ」
そこには山間にある小さな宿場町が記されていた。
「最近、この町を通る忍や商人が何人も消息を絶っている」
蓮司の表情が変わる。
「夜叉衆か?」
「可能性は高い」
影宗が答える。
「だが、まだ確証はない」
凛が地図を見る。
「どんな情報があるんですか?」
「目撃されたのは黒い装束の忍。そして、町の周辺で奇妙な術が使われた痕跡が残っている」
レイが地図を指差す。
「何の術?」
「分からん」
影宗は首を振った。
「だから調査する」
蒼真が頷く。
「俺たちが行きます」
「待て」
影宗の声が止める。
「今回の任務は、敵を倒すことが目的ではない」
四人が顔を見合わせる。
「まず情報を集めろ」
影宗が続ける。
「敵の人数、目的、忍術、拠点。それを確認してから判断しろ」
蓮司が刀の柄に手を置く。
「もし夜叉衆だったら?」
「その時は状況次第だ」
影宗は蒼真を見る。
「お前たちは修行を終えたばかりだ。力を試したい気持ちは分かる」
蒼真は黙って聞く。
「だが、実戦では戦わないことも立派な判断だ」
「……分かりました」
影宗が頷く。
「出発は今夜だ」
四人は準備を整え、里を出た。
山道。
日が沈み始める。
蓮司が歩きながら口を開いた。
「久しぶりの任務だな」
「修行が終わったばかりなのにね」
凛が笑う。
レイは周囲を警戒している。
蒼真も風を感じながら歩いていた。
「……静かすぎる」
「山だからじゃないのか?」
蓮司が言う。
「違う」
蒼真は立ち止まった。
「風がほとんど動いてない」
凛が周囲を見る。
木々は揺れていない。
虫の声もない。
「誰かが……」
レイが短刀を抜く。
「いる」
その瞬間。
シュッ!
一本の苦無が飛んできた。
蒼真が風影刀で弾く。
カンッ!
「来た!」
蓮司が刀を抜く。
だが、敵の姿はない。
「どこだ?」
凛が水を構える。
レイは目を細めた。
「上」
全員が木の上を見る。
しかし誰もいない。
次の瞬間。
ドンッ!
地面から煙が噴き出した。
「煙遁!」
視界が遮られる。
「散るな!」
蒼真が叫ぶ。
だが、煙の中から複数の影が現れた。
「一人じゃない!」
蓮司が刀を振る。
ガキン!
敵の苦無を弾く。
別の敵が凛へ向かう。
「水遁・水壁!」
凛が防ぐ。
レイは二本の短刀で別の忍を迎え撃つ。
そして蒼真の前にも、一人の忍が現れた。
黒い装束。
顔は面で隠されている。
蒼真が風影刀を構える。
「お前たちは……夜叉衆か?」
忍は答えない。
ただ印を結んだ。
「火遁・火弾!」
炎が迫る。
蒼真は横へ飛ぶ。
火弾が地面を焼く。
「火遁……」
蒼真が構える。
「なら、こっちも!」
風を纏おうとした瞬間――。
忍の姿が消えた。
「……!」
蒼真は目を閉じる。
風を読む。
右。
違う。
左。
違う。
背後――。
蒼真が振り返る。
苦無が迫っていた。
ギィン!
風影刀で受け止める。
敵が後ろへ飛ぶ。
「速い……」
だが、迅牙とは違う。
迅牙のような雷の気配はない。
蒼真が敵を見る。
「お前……何者だ?」
初めて敵が口を開いた。
「それを知る必要はない」
次の瞬間。
敵は煙玉を地面へ投げた。
白煙。
「待て!」
蒼真が追おうとする。
しかし蓮司が止めた。
「蒼真!」
煙が晴れる。
敵は消えていた。
だが――。
地面には黒い札が一枚残されている。
レイが拾い上げる。
「……夜叉衆の印」
凛が周囲を見る。
「やっぱり……」
蒼真は黒い札を見つめた。
今回の任務は、始まったばかりだった。
そして夜叉衆は――。
すでに蒼真たちの動きを把握していた。
第91話 完




