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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第3章「風遁修行編」
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第90話「風を継ぐ者たち」

地下通路。


蒼真たちの前に、十人近い忍が立っていた。


火遁。


水遁。


土遁。


雷遁。


さらに幻術を使う忍までいる。


「最後の試練にしては、数が多すぎないか?」


蓮司が刀を構える。


「数は関係ない」


レイが短刀を構えた。


「四人で進む」


凛が頷く。


蒼真は風影刀を抜いた。


「行こう」


忍たちが一斉に動いた。


「火遁・豪火球!」


「水遁・水龍!」


「土遁・土槍!」


「雷遁・雷弾!」


四種類の忍術が同時に迫る。


「凛!」


「分かってる!」


凛が両手を前へ出す。


「水遁・水壁!」


巨大な水壁が炎を受け止める。


その瞬間、雷が水壁へ向かって走った。


「雷が来る!」


蒼真が叫ぶ。


風影刀を振る。


「風遁・風圧!」


強風が水壁を横へ吹き飛ばした。


雷が地面へ落ちる。


バチィッ!


「今だ!」


蓮司が走る。


土槍を刀で受け流し、敵の懐へ入り込む。


「そこ!」


敵の腕を掴み、力を利用して投げ飛ばす。


そのまま別の敵が蓮司へ襲いかかる。


レイが横から現れた。


「後ろ」


ザンッ!


短刀が敵の苦無を弾く。


蓮司が振り返る。


「助かった!」


「まだ終わってない」


レイが前を見る。


敵がさらに増えている。


蒼真は風の流れを読む。


「右に三人」


凛がすぐに水を放つ。


「水遁・水槍!」


三人の進路を塞ぐ。


「左!」


蓮司が走る。


「任せろ!」


敵の攻撃を受け流しながら、一人ずつ体勢を崩していく。


レイは二人の間をすり抜ける。


二本の短刀が別々の角度から襲いかかる。


「二刀流は……一つの動き!」


一人目の腕を弾く。


その勢いを利用して二人目の足を払う。


二人が同時に倒れた。


「残り!」


蒼真が風を纏う。


「風遁・風纏!」


一気に加速する。


敵の懐へ入り込み、風影刀を振る。


風の刃が床を走る。


敵は跳んで回避する。


だが――。


その着地点には水が広がっていた。


凛が仕掛けていた。


「そこ!」


水が敵の足を絡め取る。


「水遁・水縛!」


動きが止まる。


蒼真が風で敵を吹き飛ばした。


ドンッ!


敵が壁へ叩きつけられる。


最後の一人が印を結ぶ。


「幻術・黒霞!」


地下通路が突然暗闇に包まれた。


「……!」


蒼真たちの姿が見えなくなる。


声も聞こえない。


気配すら分からない。


「蒼真!」


凛の声。


「こっち!」


蓮司の声。


だが、どちらも本物か分からない。


蒼真は目を閉じた。


「……」


見えなくてもいい。


聞こえなくてもいい。


風を感じる。


わずかな空気の流れ。


右。


敵。


左。


仲間。


そして――。


「そこだ!」


蒼真が風影刀を振る。


風が一直線に走った。


「ぐっ!」


敵の幻術が破れる。


暗闇が消えた。


敵の忍が膝をつく。


「……見えないはずなのに」


蒼真は刀を下ろす。


「風が教えてくれた」


影宗から教わった修行。


風を読む。


風を纏う。


風を操る。


そして――。


仲間の動きを感じる。


蒼真が三人を見る。


「みんな」


蓮司が笑う。


「言いたいことは分かるぜ」


凛も頷く。


「うん」


レイは短く答えた。


「行こう」


四人は地下通路の奥へ進む。


最上階へ続く階段を上がる。


そして――。


屋上。


そこには一本の黒い旗が立っていた。


蒼真が旗を取る。


「取った!」


蓮司が拳を握る。


「終わったな!」


その瞬間。


屋上の入口から影宗が現れた。


「そう思うか?」


四人が振り返る。


「え?」


影宗は静かに歩いてくる。


「最後の試練は、旗を取ることではない」


蒼真が目を見開く。


「……どういうことですか?」


「四人全員でここまで来たことだ」


影宗が答える。


「一人で敵を倒す力ではない」


蒼真たちを見る。


「仲間を信じ、自分の役割を理解し、状況に合わせて動く」


蓮司が笑った。


「それが今回の試練ってわけか」


「ああ」


影宗は頷く。


「お前たちは、以前とは変わった」


凛が蒼真を見る。


レイも静かに頷く。


蒼真は風影刀を見る。


以前は、強い風を出すことばかり考えていた。


今は違う。


風を見る。


感じる。


利用する。


仲間の動きを読む。


そして、必要な場所へ風を届ける。


「これで……俺たちは強くなれたんでしょうか」


影宗はすぐには答えなかった。


「強くなった」


そして続ける。


「だが、完成したわけではない」


蒼真は笑う。


「分かっています」


蓮司が刀を肩に担ぐ。


「まだまだってことだな」


凛も笑った。


「修行は続くってことね」


レイが空を見上げる。


「……風が変わった」


蒼真も空を見る。


森を抜ける風。


その向こうから、何かを知らせるような風が吹いていた。


影宗の表情が変わる。


「……そうか」


「どうしたんですか?」


「いや」


影宗は背を向ける。


「里へ戻るぞ」


四人はその後を追う。


しかし――。


同じ頃。


遠く離れた山中。


黒い装束の忍が一人、手紙を受け取っていた。


「修行を終えたか」


手紙を開く。


そこには短い文字が記されていた。


『蒼真たちの成長を確認』


忍は紙を握り潰す。


「ならば……次は実戦だ」


風が吹く。


黒い装束が揺れた。


そして、その忍は森の闇へ消えていった。


蒼真たちはまだ知らない。


次に待っているのが、修行ではなく――。


本当の戦いになることを。


第90話 完

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