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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第3章「風遁修行編」
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第89話「最後の試練」

翌朝。


蒼真たちは、黒影衆の里から離れた山中に集まっていた。


目の前に広がっているのは、深い森。


その奥には、古びた砦が見える。


影宗が四人の前に立っていた。


「今日が最後の訓練だ」


蓮司が刀の柄に手を添える。


「今までで一番厳しいんだろ?」


「ああ」


影宗は即答した。


「だからこそ、これまでの修行で身につけたものを全て使え」


蒼真が森を見る。


「何をするんですか?」


「砦の最上階にある旗を取れ」


影宗が一本の黒い旗を取り出した。


「これを持って戻ってこい」


「敵は?」


「いる」


「何人?」


「分からん」


蓮司が苦笑する。


「それ、一番嫌な答えだな」


影宗は続ける。


「敵を倒す必要はない。ただし、四人全員で戻ってこい」


凛が眉をひそめる。


「一人でも欠けたら失敗?」


「ああ」


レイが短く呟く。


「……守りながら進む」


影宗が頷いた。


「開始」


四人は森へ入った。


最初は静かだった。


鳥の声。


木々を揺らす風。


足元の葉が擦れる音。


蒼真が突然、手を上げる。


「止まって」


三人が止まる。


「どうした?」


蓮司が尋ねる。


蒼真は目を閉じた。


「風が変だ」


風が森の奥から流れてくる。


だが、一部だけ流れが乱れている。


「右」


蒼真が指を向ける。


「何かいる」


次の瞬間。


シュッ!


苦無が飛んできた。


レイが弾く。


「来る」


木の上から忍が飛び降りた。


「火遁・火弾!」


炎が飛ぶ。


凛が水を放つ。


「水遁・水弾!」


水と炎がぶつかり、蒸気が広がる。


その隙に蓮司が走る。


「俺が行く!」


刀を振る。


忍は苦無で受け止めた。


ガキン!


しかし、蓮司は力任せに押さない。


相手の力を受け流す。


「そこだ!」


身体を回転させ、敵を横へ崩す。


忍が地面を転がった。


「一人」


蓮司が構える。


しかし、蒸気の中から別の影が現れた。


「水遁・水刃!」


水の刃が飛ぶ。


レイが二本の短刀で弾く。


カンッ!


「二人目」


レイが踏み込む。


だが――。


「土遁・土壁!」


二人の間に土壁が出現した。


「また分断か!」


蓮司が叫ぶ。


蒼真が風影刀を抜く。


「風遁・風刃!」


土壁を切り裂く。


しかし、そこに敵はいなかった。


「消えた?」


凛が周囲を見る。


蒼真は地面を見る。


足跡がない。


「隠密系か……」


その瞬間。


「上!」


レイが叫んだ。


木の枝から忍が落下してくる。


蒼真が風を纏って跳ぶ。


空中で敵と交差する。


キィン!


風影刀と苦無がぶつかる。


敵が身体を捻って着地。


蒼真も着地する。


「速いな」


敵が構える。


「だが、まだ甘い」


蒼真が目を細める。


「……何?」


「お前の足元」


敵が視線を落とす。


そこには凛が作った水溜まりがあった。


蒼真は風を吹かせる。


水が一気に舞い上がる。


敵の視界を奪う。


「今だ!」


蓮司が飛び込む。


敵の攻撃を受け流し、体勢を崩す。


レイが背後を取る。


「終わり」


短刀を首元で止めた。


敵は動きを止める。


「……なるほど」


敵は苦笑した。


「以前よりは成長したな」


その声を聞いた蒼真が眉をひそめる。


「俺たちを知っている?」


忍は答えなかった。


煙玉を地面へ投げる。


「煙遁……!」


煙が広がる。


だが、蒼真は追わなかった。


「追うな」


蓮司が振り返る。


「いいのか?」


「俺たちの目的は、あいつを倒すことじゃない」


蒼真は砦を見る。


「旗を取ることだ」


四人は再び進んだ。


森を抜ける。


目の前に砦が現れた。


しかし――。


砦の入口には、大量の起爆札。


さらに壁の上には敵の忍たち。


「囲まれたな」


蓮司が刀を抜く。


「数……かなりいる」


凛が水を構える。


レイが短刀を逆手に持つ。


蒼真は砦を見上げた。


「正面突破は無理だ」


「じゃあどうする?」


蒼真は周囲を見る。


右側には崖。


左側には細い川。


そして砦の裏には、風が抜けている。


「裏から行く」


蓮司が笑う。


「そう簡単に行かせてくれるかな」


その瞬間。


砦の上から大量の苦無が降ってきた。


「来る!」


四人が散開する。


凛が水壁を作る。


「水遁・水壁!」


蓮司が苦無を弾く。


レイが二本の短刀で次々と撃ち落とす。


蒼真は風を纏う。


「俺が道を作る!」


風圧で敵の足元を崩す。


「今!」


四人は一気に走り出した。


だが、砦の裏へ回った瞬間――。


地面が崩れた。


「なっ!」


四人の身体が落下する。


「蒼真!」


「凛!」


暗闇の中へ、四人が次々と落ちていく。


ドンッ!


地下に広がる空間。


四人は何とか着地した。


蒼真が立ち上がる。


「……地下通路か」


壁には古い忍術の紋様。


そして、奥には階段が続いている。


蓮司が立ち上がる。


「砦の地下にこんなのがあるとはな」


凛が壁を見る。


「誰かが作ったみたい」


レイが奥を見つめる。


「敵が来る」


遠くから足音が響く。


一つではない。


複数。


蒼真が風影刀を抜く。


「ここからが本番だ」


四人は背中を合わせた。


修行の集大成。


それぞれが身につけた力を、今度は本当の意味で一つにする。


階段の奥から、忍たちが姿を現した。


第89話 完

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