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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第3章「風遁修行編」
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第88話「連携崩し」

煙が晴れない。


訓練場の中には、何人もの忍が散らばっていた。


蒼真たちは四体の人形を囲むように立っている。


「数が多すぎる……」


蓮司が刀を構えた。


敵は十人以上。


火遁、水遁、土遁、雷遁。


さらに分身と隠密を使う忍まで混ざっている。


蒼真は周囲の風を読む。


「気をつけろ」


「何か分かった?」


凛が尋ねる。


「本物が何人いるのか分からない」


その直後。


「雷遁・雷走!」


一人の忍が突っ込んできた。


レイが迎え撃つ。


キィン!


短刀と苦無がぶつかる。


「速い……!」


レイが一歩下がる。


そこへ別の忍が背後から迫った。


「レイ!」


蓮司が割り込む。


しかし――。


「水遁・水弾!」


水の弾丸が飛んできた。


蓮司は刀で弾く。


「くっ!」


その隙に雷遁の忍が人形へ走った。


「させるか!」


レイが追う。


だが、地面から土の壁が飛び出した。


「土遁・土壁!」


レイの進路が塞がれる。


「しまった!」


敵は最初からレイを狙っていた。


蒼真が気づく。


「違う!」


「え?」


凛が振り返る。


「敵は人形を狙ってるんじゃない!」


蒼真が叫んだ。


「俺たちを一人ずつ引き離そうとしてる!」


その言葉と同時に、火遁の忍が凛へ攻撃を仕掛けた。


「火遁・火炎弾!」


凛が水壁を作る。


「水遁・水壁!」


炎が水壁にぶつかる。


ジュウッ!


大量の蒸気が発生する。


凛の視界が奪われた。


「凛!」


蒼真が駆ける。


だが、その前に土遁の忍が現れた。


「通さない」


「邪魔だ!」


蒼真が風影刀を振る。


風刃が飛ぶ。


敵は土壁を作って防御する。


その間に、別の忍が蒼真の横を抜けた。


狙いは人形。


「しまった!」


蒼真が振り返る。


しかし――。


蓮司が先回りしていた。


「そこまでだ!」


刀を振り抜く。


敵は苦無で受け止める。


「重い……!」


蓮司が押し込む。


敵が後ろへ飛ぶ。


その瞬間、蓮司の足元に札が落ちた。


「……!」


「蓮司、そこから離れて!」


レイの声。


ドンッ!


爆発。


蓮司の身体が吹き飛ぶ。


「蓮司!」


蒼真が駆け寄ろうとする。


だが――。


「蒼真、動かないで!」


凛が叫んだ。


蒼真の足元にも札が仕掛けられている。


「……!」


蒼真は動きを止めた。


敵は罠を使っている。


ただ攻撃しているわけではない。


仲間を助けようとする動きすら利用している。


「これが……実戦か」


蒼真が呟く。


遠くで蓮司が立ち上がる。


「問題ねえ!」


服は土で汚れている。


額から血が流れている。


それでも刀を握っていた。


「でも、どうする?」


凛が周囲を見る。


「助けに行けば罠にかかる」


レイも敵を警戒する。


「ならば、助けに行かなくてもいい状況を作る」


蒼真が言った。


三人が蒼真を見る。


「敵を倒すんじゃない」


蒼真は風影刀を地面へ向ける。


「敵の動きを変える」


風が巻き起こる。


「風遁・風圧!」


強風が訓練場を横切る。


敵の忍たちが体勢を崩した。


同時に凛が印を結ぶ。


「水遁・水流!」


水が地面を走り、敵の足元を濡らす。


「蓮司!」


「分かった!」


蓮司が地面を蹴る。


敵の攻撃を正面から受けるのではなく、刀で受け流す。


一人。


二人。


敵の位置が変わっていく。


「レイ!」


「任せて」


レイが二本の短刀を構えた。


敵の背後へ回り込む。


一人の忍がレイを追う。


しかし――。


レイは人形の前を通過する。


敵がそのまま追いかける。


「今!」


蓮司が刀を振る。


敵の足元へ土が跳ね上がる。


凛の水遁で地面が泥になっていた。


敵の足が沈む。


「動けない!」


レイの短刀が喉元で止まった。


「一人」


蒼真が周囲を見る。


まだ敵は残っている。


だが、先ほどとは違う。


四人が別々に動いていない。


お互いの位置を意識しながら、敵を誘導している。


「このまま行くぞ!」


蒼真が走る。


「おう!」


「うん!」


「了解」


四人が一斉に動く。


しかし――。


その瞬間。


影宗が手を上げた。


「そこまでだ」


敵も四人も動きを止める。


訓練終了だった。


蒼真は息を整える。


「……まだ敵が残ってます」


「ああ」


影宗は頷く。


「だからこそ止めた」


蓮司が首を傾げる。


「どういうことだ?」


影宗は訓練場を見渡した。


「お前たちは最初、仲間を助けようとして連携を崩した」


「……」


「だが途中から、仲間を直接助けるのではなく、仲間が動きやすい状況を作るようになった」


凛が頷く。


「相手を倒すことだけが、仲間を守る方法じゃない……」


「そういうことだ」


影宗は蒼真を見る。


「蒼真」


「はい」


「お前は風を読むようになった」


「……はい」


「次は、人を読むことだ」


蒼真の表情が変わる。


「人を……?」


「敵が何をするか」


影宗が続ける。


「仲間が何を考えているか」


風影刀を見る。


「それを感じ取れれば、お前たちの連携はさらに変わる」


蒼真は静かに頷いた。


修行は、ただ技を磨くだけではない。


相手を見る。


仲間を見る。


そして戦場そのものを見る。


それが、忍として生き残るための力だった。


影宗が背を向ける。


「明日が最後の訓練だ」


四人が顔を見合わせる。


最後の訓練。


そこで何が待っているのか。


まだ誰にも分からなかった。


第88話 完

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