第85話「忍術への対応」
四人の前に、四人の忍が立っていた。
火遁を操る忍。
水遁を操る忍。
土遁を操る忍。
雷遁を操る忍。
昨日までの訓練とは違う。
四人はそれぞれ別々に戦うのではなく、互いの忍術を組み合わせるように構えていた。
「来るぞ」
蒼真が風影刀を抜く。
次の瞬間。
「火遁・火球!」
火遁の忍から巨大な火球が放たれた。
同時に水遁の忍が地面へ手をつく。
「水遁・水流!」
大量の水が地面を走る。
「雷遁・雷走!」
雷遁の忍が水の上を走った。
蒼真の表情が変わる。
「水に雷を流すつもりか!」
「気づくのが遅い!」
雷が水面を走った。
四人は一斉に後ろへ飛ぶ。
直後、土遁の忍が地面を叩いた。
「土遁・土壁!」
地面から土壁がせり上がり、四人の視界を完全に塞ぐ。
「くっ!」
「バラバラにされるぞ!」
蓮司が叫ぶ。
土壁の向こうから手裏剣が飛んできた。
「来た!」
レイが二本の短刀で弾き落とす。
しかし、その直後。
「水遁・水縛!」
水の縄がレイの足元へ伸びた。
「……!」
レイが飛び退く。
その瞬間、頭上から火球が迫った。
「レイ!」
凛が水壁を展開する。
「水遁・水壁!」
火球と水壁がぶつかる。
大量の蒸気が周囲を覆った。
「見えない!」
蓮司が周囲を警戒する。
白い霧の中。
足音がした。
一つ。
二つ。
三つ。
そして四つ。
「どこから来る……!」
蒼真は目を閉じた。
視界は役に立たない。
ならば――。
風を読む。
蒸気の流れ。
木々の揺れ。
足元を伝わる空気。
その中に、わずかな違和感があった。
「右だ!」
蒼真が叫ぶ。
蓮司が振り向く。
そこには土遁の忍がいた。
「遅い!」
忍が苦無を突き出す。
蓮司は刀で受け止めた。
だが、その瞬間。
地面から土の槍が飛び出した。
「土遁・土槍!」
「うおっ!」
蓮司が横へ転がる。
「蓮司!」
蒼真が駆ける。
しかし、蒼真の前に火球が飛んできた。
「火遁・火炎弾!」
蒼真は風を纏う。
「風遁!」
身体を横へ滑らせ、火球を避ける。
そのまま風影刀を振った。
「風遁・風刃!」
風の刃が地面を走る。
火遁の忍は身を低くして避けた。
「まだまだ!」
背後から雷遁の忍が迫る。
「雷遁・瞬雷!」
姿が消えたように見えるほどの速度。
蒼真が振り返る。
雷を纏った苦無が迫っていた。
ガキィン!
風影刀で受け止める。
「速い……!」
押し込まれる。
蒼真の足が地面を滑った。
そこへ凛が水槍を放つ。
「水遁・水槍!」
雷遁の忍は横へ跳ぶ。
その瞬間、水槍が地面に突き刺さった。
雷遁の忍が着地する。
「水を使ったか」
「……何かおかしい」
凛が周囲を見る。
先ほどから敵は、攻撃を避けている。
ただ避けているのではない。
四人の動きを誘導している。
水を撒く。
土壁で進路を限定する。
火で視界を奪う。
そして雷で動きを狙う。
「こいつら……」
蓮司が気づいた。
「俺たちを狙ってるんじゃない」
レイが続ける。
「動く場所を作っている」
蒼真が頷いた。
「つまり、俺たち自身が敵の術に誘導されてる」
その直後。
地面が揺れた。
「土遁・地裂!」
地面が大きく割れる。
四人はそれぞれ別方向へ飛ばされた。
「蒼真!」
凛の声が響く。
「凛!」
しかし、蒼真の前には火遁の忍。
蓮司の前には土遁の忍。
レイの前には雷遁の忍。
そして凛の前には水遁の忍。
再び四人が分断された。
「最初と同じだな」
蓮司が刀を構える。
「でも、さっきとは違う」
蒼真は風影刀を握り直した。
「敵の術を消すんじゃない」
凛が水を纏う。
「利用するんだ」
レイは二本の短刀を構えた。
「……反撃開始」
その瞬間、四人の忍が同時に印を結んだ。
「火遁!」
「水遁!」
「土遁!」
「雷遁!」
四種類の忍術が、再び放たれる。
今度は――。
蒼真たちの反撃が始まろうとしていた。
第85話 完




