第84話「四つの忍術」
「始め!」
影宗の声が響いた。
四人の敵役の忍が、一斉に散開する。
蒼真たちは反射的に背中を合わせた。
「来るぞ!」
蓮司が叫んだ。
その瞬間――
「火遁・火球!」
ゴォッ!
巨大な火球が飛んできた。
「散れ!」
四人が左右へ飛ぶ。
火球が地面に直撃する。
ドンッ!
炎が周囲へ広がった。
「いきなり火遁かよ!」
蓮司が木刀を構える。
「油断するな!」
蒼真が叫ぶ。
右側から別の忍が手印を結んだ。
「水遁・水弾!」
バシュッ!
水弾が蓮司へ飛んでくる。
「おっと!」
蓮司が木刀で弾く。
その直後――
「土遁・土壁!」
ドゴッ!
地面から土の壁がせり上がった。
蓮司と蒼真たちの間が分断される。
「蓮司!」
「こっちは大丈夫だ!」
土壁の向こうから声が返ってくる。
だが、その直後。
「雷遁・雷弾!」
バチィッ!
雷の弾が土壁を越えて蓮司へ飛んだ。
「くっ!」
蓮司が横へ転がる。
雷弾が地面を砕いた。
「四人とも、まずは分断するつもりだ」
蒼真が周囲を見回す。
敵忍は四人。
火遁を使う忍。
水遁を使う忍。
土遁を使う忍。
雷遁を使う忍。
それぞれが別の位置から攻撃してくる。
「蒼真!」
凛が呼ぶ。
「私たちは火遁を相手にする!」
「分かった!」
凛が水遁を構える。
「水遁・水壁!」
水の壁が立ち上がる。
その向こうから火球が飛んできた。
ゴォッ!
ドンッ!
水と炎がぶつかり、白い蒸気が広がる。
「今!」
凛が蒸気の中へ踏み込む。
「水遁・水槍!」
水の槍が炎の忍へ迫る。
「火遁・火弾!」
炎の弾が水槍とぶつかる。
ジュッ!
大量の蒸気が発生した。
「見えない……!」
凛が周囲を探る。
その時――
「背後!」
蒼真の声。
凛が振り返る。
炎の忍が蒸気の中から現れた。
クナイが振り下ろされる。
キィン!
凛が水で作った刃で受け止めた。
「忍術だけじゃないんですね」
「実戦を想定しているからな」
敵忍が距離を取る。
凛は構え直した。
一方――
「こいつ、硬すぎる!」
蓮司が土遁の忍へ木刀を叩き込む。
ガンッ!
土の防具に阻まれた。
「土遁・土甲!」
敵忍の身体が土に覆われる。
「なら、何度でも!」
蓮司が連続して打ち込む。
ガン!
ガン!
ガン!
それでも土甲は崩れない。
「力だけでは突破できないぞ」
影宗の声が飛んできた。
蓮司が一瞬考える。
「力だけじゃ……」
土甲の動きを見る。
「……そういうことか」
蓮司は木刀を構え直した。
「なら、崩す!」
敵忍が拳を振る。
蓮司は受け止めない。
身体を横へずらす。
拳の勢いを木刀で受け流す。
ドンッ!
敵忍の身体が前へ流れる。
「そこだ!」
蓮司が足を払う。
土甲の忍がバランスを崩した。
「なるほど……」
蓮司が笑う。
「力じゃなくて、動きを使うんだな」
その頃、レイは雷遁の忍と向き合っていた。
「雷遁・雷刃!」
バチッ!
雷を纏った短刀が迫る。
レイは二本の短刀で受け止める。
ガキィン!
「速い」
雷遁の忍がさらに踏み込む。
レイは後退する。
一撃。
二撃。
三撃。
雷遁の忍の速度が上がっていく。
「……」
レイは無理に攻撃しなかった。
相手の足。
肩。
手首。
動き始める直前の癖を観察する。
そして――
「そこ」
レイが一歩踏み込む。
敵忍の刀を右の短刀で受ける。
左の短刀で手首を狙う。
キィン!
敵忍が後退した。
「読んだか」
レイは答えない。
再び構える。
最後に蒼真。
炎の忍、水遁の忍、土遁の忍、雷遁の忍。
四人の攻撃が交差する。
蒼真は風を読む。
火球。
水弾。
土壁。
雷弾。
「……!」
蒼真は一気に走った。
「風遁・風纏!」
身体に風を纏う。
炎をかわす。
水弾を避ける。
土壁を飛び越える。
そして雷弾を風で逸らす。
「一人ずつ相手をしていたら、囲まれる!」
蒼真は四人の間を走り抜ける。
「なら――」
風影刀を抜く。
「まとめて動きを止める!」
風が一気に渦を巻いた。
しかし影宗が叫ぶ。
「蒼真!」
「はい!」
「今のお前の攻撃では、仲間まで巻き込む!」
蒼真の動きが止まった。
「……!」
風の勢いを弱める。
その瞬間――
四人の敵忍が一斉に攻撃態勢へ入った。
蒼真は風影刀を構え直す。
「……まだまだだな」
影宗は黙って見ていた。
今回の修行は、ただ敵を倒すためのものではない。
敵の忍術。
地形。
仲間の位置。
そして、自分の術の影響。
全てを同時に考えなければならない。
「蒼真!」
蓮司が叫ぶ。
「まだ終わってねぇぞ!」
蒼真が顔を上げる。
「分かってる!」
四人は再び、それぞれの敵忍と向き合った。
第84話 完




