第83話「帰還と新たな修行」
黒影衆の里。
夕暮れの中、蒼真たちはようやく戻ってきた。
四人とも傷を負っている。
特に蓮司は雷を何度も受けたため、腕を動かすたびに顔をしかめていた。
「痛ぇ……」
「無理に動かすな」
凛が蓮司の腕を見る。
「雷遁の影響が残ってる」
「これくらい平気だって」
「その言葉、何回目?」
「……」
蓮司は黙った。
レイが小さく笑う。
「説得力がない」
「お前まで言うかよ」
そんなやり取りをしながら、四人は修行場へ向かった。
そこには影宗が待っていた。
「戻ったか」
「はい」
蒼真が頭を下げる。
影宗は四人を順番に見た。
「迅牙との戦い」
蓮司が驚く。
「もう知ってるのか?」
「里に戻る途中で報告を受けた」
影宗は蒼真を見る。
「よく戦ったな」
蒼真は少し考える。
「勝った……とは言えません」
「なぜだ?」
「迅牙は負けを認めました。でも、俺たちはまだ彼を完全に押さえ込めたわけじゃない」
影宗が頷く。
「その認識でいい」
蓮司が口を挟む。
「でも、四人の連携はかなり良かっただろ?」
「ああ」
影宗が答える。
「以前とは比べものにならない」
四人の表情が少し明るくなる。
しかし影宗は続けた。
「だが、まだ完成していない」
「……」
「迅牙にも見抜かれた」
蒼真が頷く。
「俺たちの動きには、まだ決まった形が多い」
「そうだ」
影宗が四人の前に立つ。
「連携とは、同じ動きを繰り返すことではない」
地面に木の棒で四つの印を書く。
「仲間の動きを理解し、その場で自分の役割を変える」
蓮司が考え込む。
「つまり……」
「相手によって連携を変えろ」
影宗は棒を置いた。
「これからの修行は、技を増やすだけではない」
蒼真が聞く。
「じゃあ、何を?」
「判断力だ」
影宗が四人を見る。
「一人で戦う力」
「仲間と戦う力」
「そして――」
一拍置く。
「状況そのものを読む力だ」
四人は黙って聞いていた。
「明日から、実戦形式の修行に入る」
蓮司が目を輝かせる。
「また影宗さんと戦うのか?」
「そうだ」
「よし!」
蓮司が拳を握る。
だが影宗は首を振る。
「今回は私一人ではない」
「え?」
「相手は複数だ」
凛が尋ねる。
「黒影衆の忍ですか?」
「そうだ」
レイが少し考える。
「敵役を用意する?」
「その通りだ」
影宗は四人へ告げる。
「実戦を想定し、相手はそれぞれ違う忍術を使う」
蒼真の目が鋭くなる。
「忍術への対応も含めて修行するんですね」
「そういうことだ」
影宗が頷く。
「火遁、水遁、土遁、雷遁」
「それぞれ違う戦い方をする忍を用意する」
蓮司が笑う。
「面白そうじゃねぇか」
凛も頷く。
「私の水遁が通じない相手も出てきそう」
「そこを考える」
影宗が答える。
「術が効かなければ、別の方法を探せ」
レイは二本の短刀を見つめる。
「……楽しみだ」
蒼真は風影刀を鞘へ戻した。
「分かりました」
その日の夜。
四人はそれぞれの部屋へ戻った。
蒼真は一人、窓を開けた。
夜風が入ってくる。
風影刀に手を置く。
「……もっと強くならないと」
迅牙との戦いで、自分たちの成長を感じた。
同時に――
まだ足りないことも分かった。
風を読むだけでは足りない。
風を操るだけでも足りない。
仲間の動きを理解し、その場で判断する。
それが、次の課題だった。
翌朝。
修行場には、すでに四人の忍が立っていた。
それぞれ違う装備。
違う構え。
そして――
それぞれ違う忍術の気配。
影宗が告げる。
「今日から実戦修行を始める」
蒼真たちは構えた。
「始め!」
四人の敵忍が、一斉に動き出した。
第83話 完




