第81話「最後の一手」
四人が一斉に駆け出した。
対する迅牙も地面を蹴る。
「雷遁・瞬雷歩!」
バチィッ!
雷が弾け、迅牙の姿が消える。
「蒼真!」
蓮司の声。
蒼真は目を閉じた。
風が森を抜ける。
木々の揺れ。
葉の動き。
そして――迅牙が生み出す、わずかな風の乱れ。
「右!」
蒼真が叫んだ。
蓮司が振り向く。
「そこか!」
木刀を横薙ぎに振る。
ガキィン!
迅牙の刀を捉えた。
「止めた!」
だが、迅牙は口元を上げる。
「それはどうかな」
バチッ!
雷が刀から蓮司へ流れる。
「ぐあっ!」
蓮司の身体が硬直する。
迅牙が刀を引き抜こうとする。
しかし――
「水遁・水縛!」
凛の水が迅牙の腕へ絡みついた。
「今です!」
「任せろ!」
レイが飛び込む。
二本の短刀が迅牙へ迫る。
迅牙は腕を振り、水縛を引きちぎる。
そのまま身体を低くする。
短刀が頭上を通過した。
「甘い!」
迅牙がレイへ斬り込む。
キィン!
レイが一本で受ける。
二本目で迅牙の刀を弾く。
「まだ!」
レイが踏み込む。
しかし迅牙の足元に雷が走った。
「雷遁・瞬雷歩!」
「……!」
迅牙の姿が消える。
レイの背後へ回った。
刀が振り下ろされる。
その瞬間――
「風遁・風壁!」
ドンッ!
風の壁が迅牙を横へ吹き飛ばした。
迅牙が木へ叩きつけられる。
「ぐっ……!」
蒼真が風影刀を構える。
「もう、お前の動きは見えてる」
迅牙が立ち上がる。
「見えている?」
「ああ」
蒼真は風を感じ続けていた。
「お前が雷遁を使うと、必ず周囲の風が乱れる」
「……」
「だから、速くなっても完全には消えない」
迅牙が笑う。
「ならば――」
刀を逆手に持ち替えた。
「風が乱れる前に斬ればいい」
迅牙が走る。
雷は使わない。
「速い!」
蒼真が迎え撃つ。
ガキィン!
刀と刀がぶつかる。
迅牙が連続して斬り込む。
ガン!
ガキン!
キィン!
蒼真が全て受ける。
だが、少しずつ押される。
「蒼真!」
蓮司が駆け出す。
「来るな!」
蒼真が叫んだ。
蓮司が止まる。
「……!」
蒼真は迅牙の刀を受けながら、わずかに笑った。
「今だ」
迅牙の目が動く。
「何?」
蒼真が刀を受け流す。
迅牙の身体が前へ流れた。
そこへ――
「蓮司!」
「おう!」
蓮司が踏み込む。
木刀を振る。
迅牙が受ける。
ガンッ!
その瞬間、蓮司は力を抜いた。
迅牙の刀を受け止めるのではなく、横へ流す。
「なに……!」
迅牙の体勢が崩れる。
蓮司が身を入れ替える。
「これが修行の成果だ!」
木刀の柄で迅牙の腕を打つ。
迅牙の刀がわずかに浮いた。
「今です!」
凛が両手を突き出す。
「水遁・水槍!」
水の槍が迅牙へ迫る。
迅牙は身体を捻る。
水槍が肩を貫くように通過する。
「ぐっ!」
肩から血が飛ぶ。
だが迅牙は踏みとどまった。
「まだ……!」
最後の力を振り絞る。
「雷遁・瞬雷歩!」
バチィィッ!
強烈な雷が身体を包む。
迅牙が蒼真へ突っ込む。
速い。
これまでとは比べものにならない。
蒼真は風を読む。
「……そこだ!」
風影刀を振る。
ガキィィン!
迅牙の刀とぶつかった。
雷と風が激しくぶつかり合う。
「うおおおおっ!」
「はああああっ!」
二人の足元の地面が砕ける。
だが――
迅牙の雷が少しずつ弱くなっていく。
蒼真はそれを感じ取った。
「今だ!」
レイが動く。
迅牙が振り向く。
「!」
二本の短刀が左右から迫る。
迅牙は一本を弾く。
もう一本も刀で受ける。
そこへ凛。
「水遁・水縛!」
水が迅牙の両足を絡め取る。
「くっ……!」
さらに蓮司が踏み込む。
「これで終わりだ!」
木刀が迅牙の刀を弾き飛ばした。
カランッ。
刀が地面へ落ちる。
迅牙の身体が止まった。
蒼真が風影刀を突きつける。
四人が迅牙を囲む。
誰も動かなかった。
迅牙は荒い息を吐きながら、地面に落ちた刀を見る。
そして――
「……俺の負けだ」
森に静寂が戻った。
だが、蒼真は風影刀を下ろさなかった。
「夜叉衆として、何をしに来た?」
迅牙は答えなかった。
ただ、蒼真を見つめる。
「その答えは――」
ゆっくり顔を上げる。
戦いは終わった。
しかし、夜叉衆との因縁はまだ終わっていない。
第81話 完




