第80話「信頼と隙」
「そこが、お前たちの隙だ!」
迅牙が地面を蹴った。
バチィッ!
雷を纏った身体が、一瞬で蒼真との距離を詰める。
「蒼真!」
凛の声。
その瞬間、蒼真は動かなかった。
迅牙の刀が迫る。
ガキィン!
風影刀で受け止める。
「……!」
迅牙の目が細くなる。
「なぜ避けなかった?」
「避ける必要がなかったからだ」
蒼真が刀を押し返す。
「蓮司!」
「おう!」
蓮司が横から飛び込む。
迅牙は後ろへ跳ぶ。
だが、そこには凛がいた。
「水遁・水槍!」
水の槍が突き出される。
迅牙は身体を捻ってかわす。
その着地点には――
「そこだ」
レイ。
二本の短刀が迫る。
迅牙は刀で一本を弾く。
しかし二本目を完全には防げない。
ザッ!
腕に浅い傷が入った。
「……!」
迅牙が距離を取る。
「今のは?」
蓮司が聞く。
蒼真は迅牙を見ながら答えた。
「俺たちが決めた動きじゃない」
凛が気づく。
「それぞれが、その場で動いた……」
「そういうことだ」
蒼真が頷く。
迅牙は四人の連携を読むことで、攻撃の先を予測していた。
ならば――
「決められた動きを捨てる」
レイが短刀を構える。
「その場で合わせる」
「面白い」
迅牙が刀を握り直す。
「なら、それを俺が破れるか試してやる」
バチッ!
再び雷が走った。
迅牙が蒼真へ突っ込む。
蒼真は風影刀を構える。
だが、迅牙は直前で進路を変えた。
「……!」
凛へ向かう。
「凛!」
蓮司が走る。
迅牙が刀を振り下ろす。
ガンッ!
蓮司が木刀で受け止めた。
「させるか!」
迅牙が雷を纏った脚を振る。
蓮司は身体を引いてかわした。
その隙に凛が距離を取る。
「ありがとう!」
「まだだ!」
迅牙が蓮司へ斬り込む。
ガキン!
蓮司が受ける。
二撃目。
ガキィン!
三撃目。
蓮司の腕が痺れる。
「くっ……!」
「正面から受け続けるだけでは――」
迅牙が踏み込む。
「俺には届かない!」
雷が爆ぜる。
バチィッ!
蓮司が後ろへ押し込まれる。
その瞬間。
レイが迅牙の背後へ回った。
「隙ができた」
迅牙が振り返る。
「……!」
短刀が迫る。
迅牙は身体を低くしてかわす。
レイの攻撃が空を切る。
だが、その直後――
「風遁・風弾!」
蒼真の風弾が飛んできた。
迅牙は横へ跳ぶ。
風弾が地面を抉った。
「まだ!」
凛が水を放つ。
「水遁・水縛!」
水が迅牙の足へ絡みつく。
「今度こそ!」
蓮司が突っ込む。
迅牙は足を取られながらも刀を振った。
ガキィン!
蓮司の木刀とぶつかる。
「ぐっ!」
迅牙の動きが止まる。
そこへレイ。
二本の短刀。
さらに蒼真。
風影刀。
四人の攻撃が、ほぼ同時に重なる。
迅牙は水縛を引きちぎった。
バシャッ!
そして刀を横薙ぎに振る。
「雷遁・雷走!」
バチィィッ!
雷の衝撃が周囲へ広がった。
四人が吹き飛ばされる。
「うわっ!」
「ぐっ!」
蒼真も地面を転がる。
迅牙は膝をついた。
肩で息をしている。
雷遁の連続使用で、明らかに疲労が増していた。
蒼真がゆっくり立ち上がる。
「……かなり消耗してる」
迅牙が顔を上げる。
「お前もだろ」
「そうだな」
蒼真は風影刀を構え直した。
「だから、次で決める」
蓮司が立ち上がる。
「俺もいける」
凛も構える。
「私も」
レイが二本の短刀を握る。
「まだ戦える」
四人が並ぶ。
迅牙も刀を構えた。
「来い」
森に静寂が戻る。
次の一撃が、この長い戦いの流れを大きく変える。
蒼真が一歩踏み出した。
「行くぞ!」
四人が同時に走り出した。
第80話 完




