第79話「連携の隙」
森の中。
傷を負った迅牙と、蒼真たち四人が向かい合っていた。
迅牙の肩から血が落ちる。
それでも、その構えには乱れがない。
「来い」
蒼真が風影刀を握り直す。
「次で決める」
「そう簡単にはいかない」
迅牙が低く笑った。
バチッ。
足元に小さな雷が走る。
蒼真は風を読む。
「雷が弱い……」
迅牙の雷遁は、先ほどより明らかに出力が落ちていた。
「今ならいける!」
蓮司が踏み込む。
「おおっ!」
木刀を振り下ろす。
迅牙は刀で受けた。
ガンッ!
蓮司がさらに押し込む。
「今だ!」
凛が水遁を放つ。
「水遁・水槍!」
水の槍が迅牙の横から迫る。
迅牙は蓮司の刀を受けながら身体を捻る。
水槍が肩を掠めた。
「くっ!」
そこへレイ。
「逃がさない」
二本の短刀が左右から迫る。
迅牙は蓮司から離れ、後ろへ跳んだ。
「風遁・風刃!」
蒼真が追撃する。
迅牙は刀で受ける。
ガキィン!
風圧で身体が後ろへ押される。
「今!」
四人が一斉に距離を詰めた。
蒼真が正面。
蓮司が右。
凛が左。
レイが背後。
完全な包囲だった。
迅牙は動かない。
「……」
四人も動きを止める。
蓮司が叫んだ。
「今度こそ逃げ場はないぞ!」
迅牙が薄く笑う。
「そう思うか?」
「何?」
「お前たちは、連携が上手くなった」
迅牙が四人を見る。
「だが――」
刀を下げる。
「動きが素直すぎる」
次の瞬間。
迅牙が地面へ手をついた。
「雷遁・雷走!」
バチィィッ!
雷が地面を走った。
「散れ!」
蒼真が叫ぶ。
四人が同時に飛び退く。
だが――
迅牙は誰も追わなかった。
そのまま蒼真たちの中央を走り抜ける。
「何……?」
蒼真が振り向く。
迅牙は森の奥へ走っていた。
「逃げるのか!」
蓮司が追おうとする。
「待って!」
凛が叫んだ。
迅牙は木々の間で止まった。
「逃げる?」
振り返る。
「違う」
刀を地面へ突き立てる。
「お前たちの連携を崩す」
地面に印が浮かび上がった。
「……!」
蒼真の表情が変わる。
「忍術か!」
「雷遁・雷縛陣」
地面から無数の雷の線が伸びた。
「うわっ!」
蓮司が後ろへ飛ぶ。
凛も水遁で防御する。
「水遁・水壁!」
水の壁が雷を受け止める。
バチバチバチッ!
「凛、無理するな!」
「大丈夫!」
レイが迅牙へ向かう。
「俺が止める」
「レイ!」
レイが雷の隙間を走り抜ける。
迅牙が刀を抜く。
ガキン!
二人の刃がぶつかった。
「また一人で来たか」
「違う」
レイが二本の短刀を交差させる。
「俺が時間を作る」
その瞬間。
蒼真が気づいた。
「……そういうことか」
迅牙の狙いは、最初からレイを一人にすることではない。
四人の位置を分断すること。
そして――。
「蓮司!」
「分かってる!」
蓮司が雷の線を飛び越える。
迅牙へ向かう。
「二人で挟む!」
「来い!」
迅牙が刀を振る。
レイが受ける。
蓮司が横から攻撃。
ガンッ!
迅牙が二人の攻撃を同時に受け止める。
「ぐっ……!」
迅牙の足が沈む。
そこへ凛の水槍。
「水遁・水槍!」
迅牙が刀を引く。
ガキン!
水槍を弾く。
だが――
蒼真が背後にいた。
「終わりだ!」
風影刀を振る。
迅牙が振り返る。
風刃と刀がぶつかる。
ドォン!
風圧が森を駆け抜けた。
四人の攻撃が、一つにつながった。
しかし迅牙は倒れない。
「……まだだ」
肩から血を流しながら笑う。
「今の連携――」
迅牙が四人を見渡す。
「一つだけ足りない」
蒼真が眉をひそめる。
「何が?」
迅牙が刀を構える。
「お前たちは、互いを信じている」
「それの何が悪い?」
「信じすぎている」
迅牙の足元に、再び雷が集まり始めた。
「だから――」
バチッ。
「仲間が動く前提で、自分の動きを決めている」
蒼真の目が見開かれる。
迅牙が踏み込んだ。
「そこが、お前たちの隙だ!」
第79話 完




