第78話「雷速突破」
森の中に、雷鳴が響いた。
バチバチバチッ!
迅牙の身体から放たれた雷が、地面を走る。
その姿が、四人の視界から消えた。
「来る!」
蒼真が叫ぶ。
風の流れを読む。
右――。
「蓮司、右!」
「任せろ!」
蓮司が木刀を構える。
次の瞬間、迅牙が右側から飛び込んできた。
ガキィン!
蓮司が受け止める。
だが――
「重い……!」
迅牙の刀に雷が集中している。
蓮司の身体が押される。
「雷遁・雷走!」
迅牙が踏み込む。
バチィッ!
蓮司の身体が弾き飛ばされた。
「蓮司!」
凛が水遁を放つ。
「水遁・水弾!」
連続する水弾が迅牙へ迫る。
迅牙は身体を左右に振りながら、全てをかわしていく。
「速すぎる……!」
凛が歯を食いしばる。
「だったら!」
両手を前へ突き出す。
「水遁・水壁!」
巨大な水の壁が迅牙の進路を塞いだ。
「これなら――」
迅牙は止まらない。
雷を纏ったまま、水壁へ突っ込む。
ドォン!
水が弾け飛ぶ。
迅牙が水壁を突破した。
「そんな……!」
凛の目が見開かれる。
迅牙の刀が迫る。
キィン!
レイが割り込んだ。
二本の短刀で受け止める。
「凛、下がれ」
「でも……!」
「今は俺が止める」
迅牙とレイ。
二人が至近距離で睨み合う。
「またお前か」
「何度でも相手をする」
レイが二刀を振る。
右。
左。
交差。
迅牙は雷遁で加速しながら避けていく。
ガキン!
レイの短刀が迅牙の刀を弾く。
しかし迅牙はその勢いを利用して回転した。
「雷遁・瞬雷歩!」
バチィッ!
一瞬でレイの背後へ回る。
レイが振り向く。
だが遅い。
迅牙の刀が振り下ろされる。
ガキィン!
蒼真の風影刀が受け止めた。
「レイ!」
「助かった」
蒼真とレイが並ぶ。
迅牙が一歩下がる。
「二人なら止められると思うか?」
蒼真が風影刀を構える。
「一人よりはな」
「なら試してみろ」
迅牙が踏み込む。
蒼真も走る。
風と雷。
二つの力が正面からぶつかった。
ガキィィン!
蒼真の風影刀と迅牙の刀が交差する。
迅牙が力を込める。
「遅い!」
「……!」
迅牙が身体を横へ滑らせる。
蒼真の横を抜ける。
だが、その先にはレイがいた。
「そこだ」
二本の短刀。
迅牙が急停止する。
ザッ!
短刀が迅牙の袖を切り裂いた。
「……!」
迅牙が後退する。
蒼真が気づいた。
「レイ!」
「分かってる」
「違う」
蒼真が迅牙の足を見る。
「雷が弱くなってる」
迅牙の表情がわずかに変わった。
「……」
「さっきより雷の量が減ってる」
蒼真が続ける。
「やっぱり、あの速度をずっと維持できないんだ」
蓮司が立ち上がる。
「じゃあ、そこを狙えばいい!」
「そういうことだ」
凛も頷く。
「雷が弱まる瞬間を作ればいい」
迅牙が刀を構え直す。
「よく気づいたな」
「だったら――」
迅牙が笑う。
「それを狙ってみろ」
バチッ!
再び雷が身体を包む。
蒼真が叫ぶ。
「来るぞ!」
迅牙が走った。
今度は四人の中央へ。
「全員、動くな!」
蒼真の声に三人が反応する。
迅牙が四人の中心へ飛び込む。
「雷遁・雷走!」
雷が一気に弾ける。
「今!」
凛が水を地面へ流した。
「水遁・水流陣!」
地面一面に水が広がる。
迅牙の足元が濡れる。
「何……!」
蓮司が突っ込む。
木刀を振り下ろす。
迅牙が受ける。
ガンッ!
その瞬間、レイが左右から二刀を振る。
迅牙が後退する。
そして――
蒼真が最後に踏み込んだ。
「風遁・風刃!」
風の刃が迅牙の足元を狙う。
迅牙は跳んだ。
だが――
空中では、雷遁による細かな方向転換ができない。
「そこだ!」
蒼真が風を操る。
風圧が迅牙の身体を横へ押す。
「くっ!」
迅牙の着地点がずれる。
レイが待ち構えていた。
「終わりだ!」
二本の短刀が迫る。
迅牙は刀で一本を弾く。
もう一本が肩へ――。
ザシュッ!
肩から血が流れた。
迅牙が地面へ着地する。
息が荒い。
しかし、その目から戦意は消えていなかった。
「……なるほど」
血を拭う。
「ようやく、お前たちらしい戦い方になってきた」
蒼真が構える。
「まだ終わってない」
「ああ」
迅牙が刀を握り直す。
「ここからだ」
四人も再び構えた。
戦いは、まだ続いている。
第78話 完




