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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第3章「風遁修行編」
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第76話「二刀対雷遁」

レイと迅牙。


二人は互いに構えたまま、動かなかった。


森には、葉が擦れる音だけが響いている。


迅牙の足元で、雷が小さく弾けた。


「来い」


レイが短刀を低く構える。


「望み通りにしてやる」


バチッ!


迅牙が踏み込んだ。


「雷遁・瞬雷歩!」


一瞬で距離が消える。


「……!」


レイは反応した。


右の短刀で斬撃を受ける。


ガキィン!


だが――


迅牙の姿が消えた。


「後ろ!」


蒼真が叫ぶ。


レイが振り向く。


迅牙の刀が迫っていた。


キィン!


レイは左の短刀で受け止める。


しかし、迅牙は止まらない。


「まだだ!」


雷を纏った脚が地面を蹴る。


一気に横へ回り込む。


レイも身体を回転させ、二本の短刀を連続して振る。


ガキン!


ガキン!


迅牙が一歩下がった。


「……速さだけなら、俺の方が上だ」


「そうかもしれない」


レイは冷静だった。


「でも、お前には弱点がある」


迅牙の眉が動く。


「何?」


「速く動くほど、動き始める瞬間に癖が出る」


「……」


「右足から踏み込む」


レイが言った。


「そして、二度目の加速では必ず身体を少し左へ傾ける」


迅牙の目が細くなる。


「よく見ている」


「見ているだけじゃない」


レイが構えを変える。


「利用する」


次の瞬間。


迅牙が踏み込んだ。


「雷遁・瞬雷歩!」


バチィッ!


レイは動かなかった。


迅牙が右から迫る。


レイは一歩だけ後ろへ下がった。


刀が目の前を通過する。


迅牙が左へ回り込む。


レイは左の短刀を突き出した。


ギンッ!


迅牙が刀で弾く。


そこへ右の短刀。


迅牙が身体を反らす。


刃が胸元を掠めた。


「チッ!」


迅牙が距離を取る。


レイの頬に笑みが浮かぶ。


「当たった」


「……一度読まれた程度で勝ったつもりになるな」


迅牙の周囲で雷が激しくなる。


バチバチバチッ!


「なら、読めない速度にする」


「……!」


迅牙の姿が消えた。


「レイ!」


凛が叫ぶ。


だがレイは目を閉じた。


「……」


耳を澄ます。


足音はない。


風を切る音も、ほとんど聞こえない。


それでも――


「そこだ!」


レイが身体を捻った。


ガキィン!


迅牙の刀を受け止めた。


「なに……?」


迅牙が驚く。


レイはそのまま二本の短刀を交差させる。


迅牙の刀を挟み込んだ。


「捕まえた」


「甘い!」


迅牙が雷を放つ。


バチィッ!


レイの身体が痺れる。


「ぐっ……!」


一瞬、腕の力が抜ける。


迅牙が刀を引き抜こうとする。


しかし――


レイは離さなかった。


「この程度……!」


二本の短刀で刀を押さえ続ける。


迅牙の顔から余裕が消える。


「まだ動けるのか」


「二本使ってるんだ」


レイが力を込める。


「一本より、できることは多い」


レイが左足を踏み込む。


身体を捻り、迅牙の刀を横へ流した。


その瞬間――


右の短刀が迅牙の肩へ迫る。


迅牙が身を引く。


ザシュッ!


肩口が浅く斬れる。


「……!」


血が落ちる。


迅牙は傷口を押さえた。


「やるな」


レイも息を荒くしている。


雷による痺れが残っている。


それでも二本の短刀を構えた。


その様子を見ていた蓮司が口を開く。


「レイ、かなり食らってるぞ」


「分かってる」


蒼真も迅牙を見つめる。


「でも、迅牙も無傷じゃない」


迅牙の肩から血が流れている。


蒼真は風を読む。


「……雷遁には限界がある」


「何?」


凛が聞く。


「さっきから雷の強さが少しずつ変わってる」


蒼真は迅牙の足を見る。


「ずっと最大速度を維持できるわけじゃないんだ」


迅牙が笑った。


「よく見ているな、風遁使い」


刀を構え直す。


「だが――」


バチッ!


雷が再び足元を包む。


「その程度の分析で、俺を止められると思うな」


迅牙が地面を蹴る。


今度はレイではない。


蒼真へ向かって一直線に突っ込んだ。


「蒼真!」


凛が水遁を構える。


蓮司も木刀を握る。


レイは二本の短刀を構え直した。


「全員で来い」


迅牙が叫ぶ。


「今度は四人まとめて相手をする!」


蒼真が風影刀を抜いた。


「望むところだ」


風が巻き起こる。


四人と迅牙。


再び、五人の戦いが始まった。


第76話 完

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