第75話「雷遁・瞬雷歩」
迅牙が低く身を沈めた。
次の瞬間――
バチッ!
迅牙の身体から青白い電流が走る。
「雷遁……?」
蒼真が目を見開く。
迅牙の足元に雷が集まっていく。
「雷遁・瞬雷歩」
ドンッ!
地面を蹴った瞬間、迅牙の姿が消えた。
「速い!」
蒼真が風を読む。
右。
いや――
「上!」
蒼真が叫んだ。
迅牙が木の枝を蹴って空中から急降下する。
「雷刃!」
刀に雷を纏わせ、蒼真へ斬り込む。
ガキィン!
蒼真が風影刀で受け止めた。
「ぐっ……!」
雷が刀を伝わり、腕へ走る。
「くっ!」
蒼真が後ろへ飛ぶ。
「蒼真!」
凛が水遁を構える。
「水遁・水壁!」
水の壁が二人の間に立ち上がる。
迅牙が刀を振る。
バチィン!
雷を纏った斬撃が水壁へ叩き込まれる。
「凛、下がれ!」
蒼真が叫ぶ。
だが凛は退かなかった。
「まだ!」
水壁を厚くする。
雷が水へ広がる。
凛の身体にも電流が伝わる。
「……っ!」
膝が震える。
「凛!」
蓮司が飛び込んだ。
木刀を振り抜く。
ガンッ!
迅牙の刀を弾く。
「仲間に触るな!」
迅牙が後ろへ跳ぶ。
その瞬間、レイが背後へ回った。
「今度は俺だ」
二本の短刀が迅牙へ迫る。
迅牙は身体を捻る。
一本をかわす。
二本目が頬を掠める。
「……!」
赤い線が頬に浮かんだ。
レイは距離を取る。
「当たった」
迅牙が頬を指でなぞる。
「なるほど」
刀を構え直す。
「お前も速くなったな」
「お前には負けない」
レイが低く構える。
迅牙の足元から、再び雷が弾ける。
「なら――」
バチッ!
迅牙が消える。
レイも同時に動いた。
ガキン!
二人の刃がぶつかる。
一度。
二度。
三度。
互いの姿が木々の間を駆け抜ける。
「見えない……」
蓮司が呟く。
蒼真は目を閉じた。
「音じゃない」
風を感じる。
木々を抜ける空気。
二人が走ることで生まれる風。
「右!」
蒼真が叫ぶ。
レイが振り向く。
迅牙の刀が迫る。
ギリッ!
レイは二本の短刀を交差させて受け止めた。
「……読まれたか」
「蒼真の風は厄介だな」
迅牙が刀を押し込む。
レイの足が地面を削る。
「でも――」
レイの左手が動く。
短刀が迅牙の刀を滑らせる。
右手の短刀が迅牙の胴へ迫る。
迅牙が身体を反らす。
ギリギリでかわした。
レイは追撃する。
「逃がさない!」
二本の短刀が連続して振られる。
迅牙は雷遁で加速しながらかわしていく。
ガキン!
ガキン!
ザッ!
木々に刃の跡が刻まれていく。
その戦いを見ながら、蓮司が木刀を握り直した。
「俺も行く!」
「待て!」
蒼真が止める。
「今はレイの戦いだ」
蓮司が止まる。
レイは一人で迅牙と渡り合っている。
だが――
迅牙の身体から雷がさらに強くなる。
「ここからだ」
レイの表情が険しくなる。
「……!」
迅牙の姿が再び消えた。
今度は、さっきより速い。
レイの目が追いつかない。
「レイ!」
蒼真が叫ぶ。
しかし――
ドンッ!
レイの身体が吹き飛んだ。
「ぐっ!」
地面を転がる。
二本の短刀が手から離れた。
迅牙が刀を構える。
「まだ終わりではない」
レイはゆっくり立ち上がった。
口元から血が流れる。
それでも短刀を拾う。
「……そうだな」
二本の短刀を握り直す。
「俺も、まだ終わってない」
迅牙との距離が縮まる。
雷と二刀。
二人の忍が、再び同時に地面を蹴った。
第75話 完




