第72話「四人の連携」
午後。
黒影衆の修行場。
蒼真、蓮司、凛、レイの四人が向かい合っていた。
影宗が四人の中央に木製の標的を置く。
「今日は個人の修行ではない」
蒼真が風影刀に手を添える。
「連携か」
「ああ。次に夜叉衆と戦うなら、一人の力だけでは足りない」
蓮司が木刀を構える。
「じゃあ、どうする?」
「まずは、それぞれの役割を決めろ」
四人は顔を見合わせる。
蒼真が先に口を開いた。
「俺は風遁で敵の動きを崩す」
「私は水遁で攻撃と防御」
凛が続ける。
「俺は近距離で敵を止める」
蓮司が木刀を握る。
レイは二本の短刀を構えた。
「俺は隙を狙う」
影宗が頷く。
「なら、それを実際にやってみろ」
影宗が手を上げる。
「開始」
四人が動く。
蒼真が先頭へ出た。
「風遁・風弾!」
風の塊が標的へ飛ぶ。
その瞬間、凛が続く。
「水遁・水槍!」
水の槍が風に乗り、標的へ向かう。
ドンッ!
標的が大きく揺れた。
「今だ!」
蓮司が踏み込む。
木刀を振り下ろす。
しかし――
ガッ!
標的の横に置かれた別の木盾に阻まれた。
「くそっ!」
レイが反対側から飛び込む。
二本の短刀を交差させる。
ザッ!
木盾を斬り裂いた。
「今のは悪くない」
蒼真が振り返る。
「でも、全員が同時に動くと邪魔になるな」
凛も頷く。
「私の水槍も、蓮司が近づく前に撃ったら危ない」
「俺も、レイの位置を見てなかった」
蓮司が頭を掻く。
影宗が言う。
「連携とは、同時に攻撃することではない」
四人が影宗を見る。
「仲間が次に何をするかを考えて動くことだ」
蒼真が考え込む。
「じゃあ、順番を決めるんじゃなくて……」
「そうだ」
影宗が標的を指す。
「互いの動きを見ろ」
もう一度、四人が構える。
今度は蒼真が前へ出る。
「風遁・風刃!」
風の刃が標的の足元を削る。
標的が僅かに傾く。
「今!」
凛が水を放つ。
「水遁・水流!」
水流が標的をさらに押し込む。
そこへ蓮司が走る。
「ここだ!」
木刀を振り抜く。
標的が大きく傾いた。
だが、倒れる寸前。
レイが反対側へ回り込む。
「終わりだ」
二本の短刀を同時に振る。
ザンッ!
標的が倒れた。
四人が動きを止める。
「……成功した」
凛が嬉しそうに笑う。
蓮司も笑った。
「今のは綺麗だったな」
レイが短刀を収める。
「それぞれが次の動きを作ったからだ」
蒼真は頷く。
「俺が崩して、凛が動きを止める。蓮司が押し込んで、レイが仕留める」
「その形を覚えておけ」
影宗が告げる。
「だが、実戦では敵も動く。決めた通りにはいかない」
その言葉に四人の表情が引き締まる。
蒼真が風影刀を握る。
「なら、相手が変わっても合わせられるようにする」
蓮司が頷く。
「そうだな」
凛も構える。
「もう一回やろう」
レイが二本の短刀を抜く。
「今度はもっと速く」
四人は再び標的へ向かって走り出した。
その様子を、森の外から誰かが見ていた。
黒い衣。
木の枝に立つ影。
だが、今回は夜叉衆の印を身につけていない。
影は四人の動きをしばらく見つめると、静かに森の奥へ消えていった。
第72話 完




