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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第3章「風遁修行編」
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第69話「蓮司の剣」

昼。


黒影衆の第二修行場。


蓮司は一本の木刀を握り、巨大な丸太を前に立っていた。


「これを斬れって?」


向かいに立つ影宗が頷く。


「そうだ」


蓮司は木刀を構える。


「任せろ!」


踏み込む。


「せやっ!」


ドンッ!


木刀が丸太に叩き込まれる。


丸太は揺れた。


だが、傷は浅い。


蓮司は木刀を見つめた。


「……硬いな」


「お前の剣は力に頼りすぎている」


「力がなきゃ斬れないだろ」


「力だけでは、強い相手には読まれる」


蓮司は黙った。


以前の戦いを思い出す。


自分より大きな相手。


何度斬り込んでも止められた。


速さではレイに及ばない。


特殊な術では凛に及ばない。


そして蒼真には風遁がある。


「俺には……剣しかない」


影宗が蓮司を見る。


「だからこそ、その剣を磨け」


蓮司は木刀を握り直した。


「どうすればいい?」


「相手の力を利用しろ」


影宗が木刀を構える。


「攻撃してこい」


「分かった!」


蓮司が踏み込む。


影宗の木刀とぶつかる。


ガンッ!


力では蓮司が押している。


しかし影宗は真正面から受けない。


木刀を僅かに傾ける。


蓮司の力が横へ流された。


「なっ――」


身体が前へ崩れる。


影宗の木刀が肩に触れた。


「今のが、力を流すということだ」


蓮司は悔しそうに立ち上がる。


「もう一回!」


再び踏み込む。


今度は力を抑える。


影宗の木刀とぶつかった瞬間、手首を返す。


ガッ!


相手の木刀を横へ流した。


「……!」


蓮司の目が見開かれる。


「今の……」


「悪くない」


「もう一回!」


何度も繰り返す。


打ち合う。


流す。


踏み込む。


かわす。


少しずつ蓮司の動きが変わっていく。


夕方。


丸太の前に戻った蓮司は、静かに構えた。


大きく振りかぶらない。


腰を落とす。


一歩。


そして――


「はっ!」


斜めに振り抜く。


ザンッ!


丸太に深い切れ込みが入った。


蓮司は驚いた。


「……斬れた」


「力を抜いたからだ」


「力を抜いた方が強い……」


蓮司は自分の木刀を見る。


「なるほどな」


そこへ蒼真たちがやって来る。


「蓮司、終わったのか?」


「ああ」


蓮司が振り返る。


「ちょっと新しい剣を覚えた」


蒼真が丸太を見る。


「これ……お前が?」


「そうだ」


凛が笑う。


「すごいじゃん」


レイは丸太の切れ込みを確認する。


「前より鋭い」


蓮司は笑った。


「まだまだだけどな」


蒼真が拳を握る。


「俺たちも負けられないな」


「当然だ」


四人の間に、以前とは違う空気が生まれていた。


それぞれが、自分自身の弱点と向き合っている。


そして森の外。


木の枝に黒い札が一枚結ばれていた。


そこには一文字だけ刻まれている。


「三」


誰かが、修行場を監視していた。


第69話 完

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