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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第3章「風遁修行編」
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第68話「風を纏う」

朝。


修行場に蒼真が一人立っていた。


影宗は少し離れた場所から様子を見ている。


「今日は何をする?」


「風を身体に纏わせる」


「風を?」


「ああ。昨日のお前は、風で相手の攻撃を避けた」


影宗が地面に小石を置く。


「だが、風を身体そのものに纏わせれば、さらに速く動ける」


蒼真は両手を握った。


「やってみる」


目を閉じる。


風を感じる。


そして、自分の身体の周囲へ少しずつ風を集めていく。


髪が揺れる。


衣服が風になびく。


「これで……」


蒼真が一歩踏み込む。


シュッ!


身体が一気に前へ出た。


「速い!」


だが、勢いを止められない。


「うわっ!」


蒼真は地面を転がった。


影宗は表情を変えない。


「制御ができていない」


「分かってる……」


蒼真は立ち上がる。


「もう一度」


再び風を纏う。


今度は少し弱く。


一歩。


二歩。


三歩。


先ほどより安定している。


影宗が小石を拾った。


「なら、これを避けろ」


「え?」


影宗が小石を投げる。


蒼真の顔へ飛んでくる。


シュッ!


身体を横へ流す。


小石が頬をかすめて飛んでいく。


「今のだ」


「なるほど……」


蒼真は笑う。


風を強くするのではない。


必要な瞬間だけ風を使う。


それを意識しながら走り出す。


シュッ!


右。


シュッ!


左。


さらに前へ。


蒼真の動きが少しずつ速くなっていく。


影宗が次々と小石を投げる。


蒼真は身体を捻り、しゃがみ、跳び上がりながら避けていく。


最後の一個。


蒼真は避けるのではなく、風を正面へ放った。


小石が弾き飛ばされる。


「できた!」


「今の感覚を覚えておけ」


蒼真は息を整える。


「風を纏うと、身体が軽くなる」


「違う」


影宗が答える。


「身体が軽くなったのではない。風がお前の動きを助けている」


蒼真は自分の手を見る。


「風と一緒に動く……」


その時。


修行場の入り口から声が聞こえた。


「ずいぶん楽しそうだな」


蒼真が振り返る。


蓮司、凛、レイが立っていた。


「三人とも?」


「休憩中だ」


蓮司が笑う。


「お前の修行を見てた」


凛が蒼真を見る。


「前より動きが速くなったね」


レイも頷く。


「次に戦う時は、かなり厄介そうだ」


蒼真は少し笑った。


「お互い様だろ」


四人が並ぶ。


それぞれの修行によって、少しずつ力が増している。


だが――


森の奥。


一本の木の陰から、その様子を見つめる人影があった。


黒い衣。


腰には刀。


黒刃の迅牙だった。


「風を纏う……か」


迅牙は口元を僅かに上げる。


「面白い」


風が吹き抜ける。


次の瞬間には、迅牙の姿は消えていた。


蒼真はそれに気づかない。


ただ、風だけが妙に冷たく感じられた。


「……今、何かいたような」


「気のせいではない」


影宗の声が低くなる。


「だが、追う必要はない」


蒼真は頷いた。


「今は修行だな」


「ああ」


蒼真は再び風を纏う。


今度は先ほどより静かに。


そして、一気に駆け出した。


第68話 完

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