第67話「四人の修行」
夕方。
黒影衆の修行場に、蒼真たち四人が集まっていた。
蒼真は風影刀を腰に戻す。
「久しぶりに全員揃ったな」
「修行場所が別々だったからな」
蓮司は木刀を肩に担いでいる。
以前よりも構えが安定していた。
凛は両手を前に出す。
「私も水遁、少し使えるようになったよ」
「どれくらい?」
「見てて」
凛の足元に水が集まる。
水は細長く伸び、槍のような形へ変化した。
「水遁・水槍!」
バシュッ!
水の槍が木の標的を貫いた。
「おお……!」
蒼真が目を丸くする。
凛は少し照れたように笑った。
「前よりは強くなったでしょ?」
「かなりな」
その横で、レイが二本の短刀を抜いた。
「俺も見せる」
レイは標的へ向かって走り出した。
一瞬で距離を詰める。
右の短刀。
左の短刀。
さらに身体を回転させ、死角から斬り込む。
ザッ!
木の標的に三本の傷が走った。
蓮司が口笛を吹く。
「相変わらず速いな」
「速さだけじゃない」
レイが短刀を構え直す。
「相手の動きを読む」
その言葉に、蒼真が反応した。
「それ……俺の修行と似てるな」
「風を読むのか?」
「そうだ」
蒼真が目を閉じる。
周囲の風を感じ取る。
葉の揺れ。
木々の隙間を抜ける空気。
四人の動きによって生まれる小さな風。
以前よりもはっきりと感じられる。
「風が……前より分かる」
蓮司が木刀を構えた。
「なら、俺たちも実際に戦ってみるか?」
「模擬戦?」
「ああ」
四人は修行場の中央へ移動した。
影宗は少し離れた場所から見ている。
「本気でやれ。ただし、殺傷は禁止だ」
「分かった」
蒼真と蓮司。
凛とレイ。
二組に分かれる。
「いくぞ!」
蓮司が一気に踏み込む。
蒼真も風を纏わせる。
ガンッ!
刀と木刀がぶつかる。
「前より重いな!」
「そっちもな!」
蓮司が連続で斬り込む。
蒼真は風を使って身体を横へ流す。
一撃。
二撃。
三撃。
すべて紙一重でかわしていく。
その瞬間――
「水遁・水弾!」
横から水弾が飛んできた。
「うわっ!」
蒼真が跳び上がる。
そこへレイが迫る。
「隙あり」
二本の短刀。
蒼真は風を爆発させるように足元へ放った。
「風遁!」
身体が後方へ飛ぶ。
レイの刃が空を切った。
着地した蒼真は笑う。
「危なかった……!」
凛も構えを解いた。
「やっぱり四人で戦うと全然違うね」
影宗が静かに歩いてくる。
「それが今日の修行だ」
四人が影宗を見る。
「一人で強くなるだけでは意味がない」
影宗は四人を順番に見た。
「それぞれの力を理解し、互いの弱点を補え」
蒼真は頷いた。
「四人で戦えば、もっと強くなれる」
「ああ」
蓮司も笑う。
「次は本当の敵相手に試したいな」
その時だった。
森の奥。
木の枝が揺れた。
四人が一斉に振り向く。
風が止まる。
誰もいない。
だが、木の幹には黒い文字が刻まれていた。
『修行が終わる時、狩りを始める』
蒼真の表情が険しくなる。
「……迅牙」
影宗は文字を見つめる。
「奴は本当に待っているようだな」
蒼真は風影刀に手を添えた。
「だったら、俺も待つ」
「何を?」
「次に会った時、今度こそ負けないために」
四人の視線が森の奥へ向く。
まだ修行は終わっていない。
だが、夜叉衆との次の戦いは、確実に近づいていた。
第67話 完




